銀行融資

銀行返済と納税、どちらを優先すべき?資金不足でも納税を優先すべき理由

手元資金に余裕がなく、納税と銀行返済のどちらかを選ばなければならないとしたら、あなたはどちらを選ぶでしょうか?
おそらく、銀行返済を優先する人が多いことでしょう。しかし、納税の後回しは重大なリスクをもたらす危険があります。
本稿では、納税を優先すべき理由について解説します。

税金は後回しになりやすい

資金繰りが苦しい経営者に共通する特徴のひとつに、税金や社会保険料を滞納している、あるいは後回しにする傾向があります。
特に、手元資金に余裕がないため、税金の納付と銀行への返済のどちらか一方しかできない場合、税金を後回しにするケースが多いです。

税金や社会保険料を後回しにする理由

なぜ税金や社会保険料が後回しになるのか、理由は簡単です。
銀行はビジネスとして融資しています。利息収入を得るためには、返済計画に沿って滞りなく回収することが重要です。また、貸付金が貸し倒れになれば多額の損失を被ります。
このため、返済をシビアに考えており、返済期日に1日でも遅れると非常に厄介なことになります。会社や経営者本人に必ず電話がかかってきます。連絡から逃げていると、更に追求が厳しくなります。とにかく追求・請求が厳しく、返済に緊張感を伴うのが銀行返済です。
税務署や日本年金機構も、税金や社会保険料を納付しなければ請求書を送ってきます。しかし、銀行のようにビジネスでやっているわけではなく、回収状況が業績に与える影響なども考慮する必要がないため、それほどうるさくありません。滞納、後回しにしても、それほど緊張感はないのです。

経営上の重大な問題になるかどうかという違いにより、大きな差が生じます。誰しも、うるさくない相手は後回しにしておき、うるさい相手を優先して対応するものです。
このような、ごく当たり前の心理によって、税金や社会保険料の納付は後回しになりやすいです。また、一度でも後回しにすることを経験し、後回しにすることが二度、三度と重なっていくにつれて、滞納することへの抵抗が薄れていきます。やがて、「税金より銀行返済を優先」から「税金より〇〇の支払いを優先」というように、支払いの優先順位がどんどん低くなっていき、後回しの傾向が深刻化していきます。

後回しの問題点

しかし、税金や社会保険料の後回しは、連鎖的に問題を引き起こします。問題の連鎖は、典型的なパターンで考えるとよく分かります。すなわち、

  1. 後回しにより延滞金が発生する(後回しが長引くにつれて延滞金が大きくなる)
  2. 銀行融資が受けられなくなる
  3. 資産が差し押さえられる
  4. 破産する

という流れです。

1、延滞金が発生する

税金を延滞すると延滞金がかかります。延滞金率は、

  • 納付期限の翌日から2ヶ月を経過するまでの期間:年7.3%
  • 納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日の翌日以降:年14.6%

となっています。ただし、時期によっては延滞税特例基準が設けられているため、2021年時点での延滞金率は、

  • 納付期限の翌日から2ヶ月を経過するまでの期間:年2.5%
  • 納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日の翌日以降:年8.8%

となっています。
年間の所得が2,000万円の会社では、年間所得が800万円以下の部分に対して15%、800万円超の部分に対して23.4%が課税され、法人税額は401万円となります。この納付を後回しにした場合に課せられる延滞金は、以下の通りです(延滞税特例基準を考慮しない場合)。

納税額 延滞税率 延滞金 納付額
1ヶ月目 4,010,000 7.3% 24,060 4,034,060
2ヶ月目 4,010,000 7.3% 48,120 4,058,120
3ヶ月目 4,010,000 14.6% 96,240 4,106,240
4ヶ月目 4,010,000 14.6% 144,360 4,154,360
5ヶ月目 4,010,000 14.6% 192,480 4,202,480
6ヶ月目 4,010,000 14.6% 240,600 4,250,600
7ヶ月目 4,010,000 14.6% 288,720 4,298,720
8ヶ月目 4,010,000 14.6% 336,840 4,346,840
9ヶ月目 4,010,000 14.6% 384,960 4,394,960
10ヶ月目 4,010,000 14.6% 433,080 4,443,080
11ヶ月目 4,010,000 14.6% 481,200 4,491,200
12ヶ月目 4,010,000 14.6% 529,320 4,539,320

12ヶ月間延滞すると、累積での延滞金は50万円を超えます。延滞金が大きくなるほど納付が難しくなり、支払いがどんどん先延ばしになっていきます。
また、12ヶ月も延滞していると、そのころには更に直近年度の法人税が発生しています。1年分を納付できない会社が、2年分をまとめて納付できるはずはなく、後回しが後回しを呼ぶ悪循環に陥ります。

2、銀行融資が受けられなくなる

税金や社会保険料を滞納する大きな問題は、銀行融資を受けられなくなることです。
ほとんどの会社にとって、資金繰りを安定させるために銀行融資が必要です。しかし、納税義務を怠る会社には融資しません。なぜならば、

「納税もまともにできない、資金繰りに余裕がない会社への融資は貸し倒れリスクが高すぎる」

と考えるためです。
まともに納税していれば、銀行と普通に付き合うことができます。納税資金が不足しても、納税資金を借り入れることによって税金をしっかり支払い、銀行との関係も維持できます。
しかし、一旦納税を怠ってしまうと、銀行との関係が即座に壊れ、資金繰りに窮することになるのです。
たとえ延滞しても、短期間で支払って未納を解消すれば、銀行融資への影響はさほど深刻ではありません。しかし、延滞することでずるずると後回しを続けていると、未納の解消が不可能になり、銀行融資も受けられず、どうしようもない状況に陥ります。

3、資産が差し押さえられる

どうしようもない状況に陥った後、ファクタリングや資産の売却など、銀行融資以外の資金調達で資金繰りをつなげることも可能です。
しかし、滞納が解消されたわけではありません。そうしているうちにも、延滞金は毎日着実に膨らんでいきます。
税務署や日本年金機構は、あまりうるさく請求してきません。その代わり、ある日突然差し押さえに動くことがあります。

「最悪の場合、不動産を売却して納税資金に充てよう」と考えているかもしれません。差し押さえられる前であればそれも可能ですが、差し押さえられると売却は不可能です。差し押さえの登記がある物件を買う人などいないからです。
「納税のために売却したい。差し押さえを解除してください」と交渉することで、差し押さえを解除してもらえる可能性もあります。しかし近年、税務署の対応は厳しくなっており、未納を解消するまで差し押さえを解除してくれないケースが増えています。

4、破産する

納税を怠ったために、融資が受けられなくなり、多額の延滞金も加算されて支払うことができず、資産も差し押さえられてしまった…
ここまで負の連鎖が続くと、経営破綻は時間の問題でしょう。

納付を優先しよう

以上のように、税金や社会保険料の滞納、後回しは負の連鎖を引き起こします。早めに対処すれば問題なく経営を続けられた会社が、軽い気持ちで納税を後回ししたことで、負の連鎖を招いて破綻に至るケースがあるのです。
そうならないためにも、税金や社会保険料の納付を甘く考えてはいけません。資金繰りが厳しく、「納税か、銀行返済か、取引先への支払いか」といった選択を迫られた場合には、納税を最優先すべきです。
納税を最優先しても、資金繰り計画がしっかりしていれば何ら問題ありません。

×月に納税しなければならない。手元資金から納付すると、他の支払いができない⇒納税資金を借入れて納付し、手元資金を支払いに回そう

このように計画を立てておくと、税金や社会保険料の滞納を防ぎつつ、資金繰りを回していくことができます。納付を優先し、先手をうって銀行交渉を行うことで、資金繰りの破綻を未然に防ぐことを心がけてください。

まとめ

税務署や日本年金機構の請求は銀行に比べて緩いため、資金繰りが苦しい時、ついつい納税を後回しにしがちです。ごく短期間ならば問題ありませんが、後回しが当たり前になり、長期にわたって滞納するようになると、経営に大きなリスクをもたらします。
そうならないためにも、計画性のある資金繰りを心がけてください。資金繰り計画の立案に不安があれば、コンサルタントの協力を仰ぐのも良いと思います。
自社に最適な方法を模索し、確実に納税できる資金繰りを作っていきましょう。

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