個人事業主向け

個人事業主の資金調達方法について基礎から徹底解説 

個人事業主の資金調達方法

「個人事業主は銀行からお金を借りられる?」
「銀行融資以外に資金調達する方法はある?」

個人事業主として開業して仕事を始めたいけれど、資金調達できるかが不安と感じる方もいらっしゃるでしょう。実際に資金繰りで困ったらどこに頼れば良いのでしょうか?

この記事では、個人事業主が開業時や運転資金として利用できる資金調達方法についてご説明します。

個人事業主の資金調達についての基本的な考え方

個人事業主の資金調達が必要になるのは、大きく分けて下記の2つです。

①開業時の資金調達

②運転資金としての資金調達

まず、開業時の資金調達です。個人事業主は法人とは異なり、登記をしたり資本金を準備したりする必要はありません。基本的には開業届を税務署に届けるだけで開業できるので、手軽に起業できるのが個人事業主のメリットです。仕事で必要な道具にかかる費用分の資金は準備しておきましょう。

もう一つは、実際に経営を始めた後に必要になる資金調達です。日本の商慣習は掛け商売がほとんどです。例えば、1月に数回に分けてサービス提供したものは都度請求するのではなく、1か月分をまとめて翌月に回収します。つまり、サービスを提供してから実際に資金を回収するまでには、少なくとも1か月~2か月の立替期間が発生することになるのです。このように、売上はあるのに資金繰りが厳しい場合に資金調達が必要になります。

開業時にかかる費用とは

ここでは、個人事業主が開業時にかかる費用について具体的にご説明します。

賃借物件の敷金・礼金や保証料、前払い家賃

個人事業主として、飲食店や美容院・エステサロンなど、店舗を持つ業種で開業する場合には賃貸物件の敷金や礼金、前払い家賃などが必要です。駅近などの好立地にすると、店舗を構える費用だけで数百万円になることもあるでしょう。また、リフォームやリノベーションを行なう場合には、その分の費用もプラスされます。

パソコンなどの機器の購入・リース費用

パソコンや複合機などのオフィス機器を購入・リースする費用としても数十万円かかります。従業員を雇う場合には、数人分のパソコンが必要になるのでさらに費用がかさむでしょう。

通信回線などの工事費用

インターネットの回線工事をする場合には、工事費用もかかります。無料工事のものもありますが、相場としては1万円~2万円程度です。

備品購入の費用

業種によって必要になる備品は異なります。オフィスの仕事であれば、デスクや棚などの備品の購入が必要です。飲食店であれば、調理器具・皿・グラス・机・椅子・インテリアなどが必要になります。

チラシ・広告・ホームページの制作費用

起業初期は事業の認知を広める必要があります。そのため、チラシや広告・ホームページの制作をする方も多いでしょう。例えば、ホームページの製作には数十万円~100万円程度必要です。

用意しておくべき運転資金の目安

運転資金は、一般的に月商の3か月~6か月程度用意できていると安心といわれています。ただし、業種や従業員を雇っているかなどで必要になる運転資金は異なります。急な取引停止や取引先の倒産などもあり得るので、収入が減ることや売掛金が回収できなくなる、万が一の状況を想定して運転資金の用意をしておくと良いでしょう。

個人事業主の資金調達方法10選

ここでは、個人事業主の資金調達方法についてご紹介します。

1.自己資金

個人事業主は、法人での開業に比べて必要になる資金が少ないです。

例えば、自宅をオフィスにして自分で保有しているパソコンでWeb関連の仕事を始める場合、ほとんど開業に必要な資金はありません。このようなケースでは、自己資金100万円程度で十分なので、自己資金だけでまかなうことも十分可能でしょう。

一方、個人事業主として飲食店や美容関係のサロンを開く場合には、テナント代や備品の購入が必要になるので300万円~500万円程度必要になります。これらを自己資金だけでは準備できない場合には、その他の資金調達方法で資金の準備が必要です。

自己資金のメリットは、返済の必要がなく、自分の好きな用途にお金が使えることです。一方、個人事業主の場合、生活費などのお金と仕事のお金が混ざりやすいのはデメリットです。事業のお金がかかることで、生活費としての家賃や食費などが支払えなくなっては意味がありません。生活費についても配慮しながら、事業に使えるお金を用意しておきましょう。

2.クラウドファンディング

クラウドファンディングにはさまざまな種類がありますが、個人事業主でも購入型クラウドファンディングを利用して資金調達することが可能です。

購入型クラウドファンディングは、クラウドファンディングサイトで事業主の目標や資金調達が必要な理由などを掲げ、その気持ちに賛同してくれる不特定多数の人に購入してもらう方法です。購入は一口1万円からできて、融資のように返済の必要はありません。例えば、クラウドファンディングで支援してくれた人向けのサービスを作るなどして、金銭以外の価値提供をすることで支援者にリターンを与えます。

クラウドファンディングは、クラウドファンディングサイトに掲載されることで、全国にファンを作れるのがメリットです。また、財務状況に不安があり、銀行などの金融機関からの資金調達が難しい場合でも、事業主のキャラクターやアピールの上手さで資金調達が可能になる可能性もあります。

しかし、アピールが上手くないと資金を集めることができません。共感を呼ぶストーリーを発信できるスキルがないと難易度が高いといえるでしょう。

3.日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫とは、政府が100%出資する銀行です。民間の銀行が融資しにくい、信用力が低い法人や個人事業主にも融資をしてくれます。

日本政策金融公庫は、国民生活事業・中小企業事業・農林水産事業の3つに分かれています。個人事業主や小規模事業者は国民生活事業です。日本政策金融公庫には、個人事業主が利用できるさまざまな融資制度がありますが、今回は一般貸付と開業時に利用できる新創業融資制度についてご説明します。

一般貸付

一般貸付は、ほとんどの業種で利用できる融資です。担保を不要とする融資は税務申告を2期以上行っている方が対象となります。金利は令和4年2月1日の水準で0.66%~2.55%です。金利は事業内容などを勘案して決まります。融資上限は4,800万円で、返済期限は運転資金が7年以内(据置期間1年以内)、設備資金は10年以内(据置期間2年以内)です。特定設備資金の場合は融資限度額7,200万円で、返済期限 20年以内(据置期間2年以内)です。

出典:日本政策金融公庫「一般貸付

新創業融資制度

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、新たに事業を始める方または事業開始後7年以内の方が利用できる融資制度で、法人だけではなく個人事業主も利用できます。融資上限と返済期間は、一般貸付と同じです。金利は条件をクリアすることで特別金利が適用されます。

例えば「Uターンなどにより地方で新たに事業を始める方」「技術・ノウハウなどに新規性がみられる方」などです。起業初期で、条件に当てはまるものがある場合には一般貸付を利用するよりお得に借入ができ、おすすめです。

出典:日本政策金融公庫「新規開業資金

日本政策金融公庫を利用するメリットは、民間の金融機関より融資を受けやすい点です。しかも、条件に当てはまれば無担保・無保証で借入ができます。

ただし、利用にあたり開業時であれば創業計画書など、必要に応じた資料を用意しなくてはいけません。資料の作成や準備が手間に感じる方もいらっしゃるでしょう。

4.制度融資

制度融資とは、地方自治体・民間の金融機関・信用保証協会の3社が債務者をサポートする制度です。信用保証協会に保証料を支払うことで、民間金融機関の融資に保証を付けることができ、通常より融資を受けやすくなります。また、地方自治体は利子補給や保証料の補助をすることで利用者の負担を減らします。

制度融資のメリットは、民間の金融機関との接点を作れることです。信用力が低いとされる個人事業主が、民間の金融機関からプロパー融資(民間の金融機関単独での融資)を受けるのは難しいです。しかし信用保証協会の保証を付ければ、民間の金融機関の窓口で融資を受けられるようになります。取引先銀行をホームページなどに載せると対外的な信用力にもつながりますので、民間の金融機関との取引ができるのは制度融資を利用するメリットです。また、最初は信用保証付きの取引でも、借入と返済の実績が作れるとプロパー融資でも借りられるようになる可能性もあります。

しかし、信用保証協会を利用することは、金利だけではなく保証料もかかるのがデメリットです。保証料が減免されるような制度もありますので、なるべくコストを下げて利用できるものを探しましょう。

5.民間金融機関のプロパー融資

民間金融機関から、プロパー融資を受ける資金調達方法もあります。先述した信用保証協会の保証付き融資から始めて、実績ができてきたらプロパー融資も利用できるようになる流れが多いです。また信用力が低い場合、不動産や定期預金などの担保を差し入れなければ、融資はできないことが多いため、個人事業主がプロパー融資を受けるのは難しい傾向にあります。

民間金融機関のプロパー融資を利用するメリットは、融通がききやすい点です。例えば、融資には手形貸付・証書貸付・当座貸越などがありますが、自分にとって利用しやすいものを担当者と相談しながら利用できます。また、金融機関独自の融資商品などを利用できるのもメリットです。

民間金融機関からプロパー融資を受けるデメリットは、審査に対して厳しい点です。金融機関は、顧客の財務状況などを勘案して格付を行います。格付が低いと、融資額を少なくされたり、金利を高く設定されたりする場合があるでしょう。

6.信用金庫の融資

信用金庫は、地域に根差した金融機関です。民間の銀行との違いは、原則地域の組合員しか預金・融資共に利用できない点にあります。信用金庫の顧客は、規模の小さい企業や個人事業主に限定しているので、個人事業主も利用しやすいといえるでしょう。

信用金庫を利用するメリットは、地域に寄り添った金融機関なので親近感のある対応をしてくれることです。地域の情報も民間の金融機関より詳しいこともあり、融資以外でも情報収集という意味で得する可能性があります。また、信用金庫や商工会議所などが連携した商品を利用できる場合があります。

信用金庫を利用するデメリットは、民間の金融機関に比べて金利が高めな傾向にあることです。信用金庫は民間の銀行に比べて小口での融資が多いです。

例えば1億円を1社に融資するのと、500万円を20社に融資した場合で考えてみます。総額は同じ1億円ですが、1社あたりにかける事務作業量は変わらないので、小口の融資をするほど人件費がかかってしまうのです。その結果、金利が高くなります。

7.家族や友人からの借入

家族や友人から借入をするという方法もあります。家族や友人から借入する場合、金融機関のような審査が必要ないので、信用と何のためにお金を借りたいのかをきちんと説明することが出来れば、比較的簡単に資金調達が可能でしょう。融資額の上限などもないので、双方が納得していれば大きな金額の借入も可能です。

ただし、きちんと返済できなければ大切な家族や友人との信頼関係が無くなります。そのようなことがないように、親しき仲でもきちんと借用書を作成し、期日に返済するように運用することをおすすめします。

8.ビジネスローン

個人事業主は、ビジネスローンで資金調達が可能です。ビジネスローンとは、事業性資金を借入できる資金調達方法です。銀行や消費者金融などから借入可能で、資金使途はビジネスに限られます。

ビジネスローンのメリットは、無担保・無保証で利用できる点です。審査は銀行融資に比べると早く通りやすいです。特に、消費者金融のビジネスローンは即日審査結果が分かるものもあるので、とにかく早く資金調達が必要という場合に向いている資金調達方法といえます。また、カードローンは極度額の設定なので、極度額内であれば何回でも繰り返して利用できる点もメリットです。

ビジネスローンのデメリットは、日本政策金融公庫や民間の銀行融資などと比べると金利が高いことです。特に少額の限度額の場合、金利が高くなる傾向にあり、15%前後になることもあります。また、ビジネスローンを利用する際には、過去の確定申告などが必要になるので、開業してすぐには利用できないことが多いです。

9.ファクタリング

ファクタリングとは、ファクタリング会社に手数料を支払うことにより売掛債権を購入してもらい、売掛債権の期日より前に資金調達が可能になる資金調達方法です。ファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあります。

まず、2社間ファクタリングはファクタリング利用者とファクタリング会社で契約を結ぶ方法です。売掛先企業に承諾を得る必要なく利用できるのが大きなポイントです。手数料は売掛債権金額の10%~30%が相場です。ただし、最近では全てオンライン上で完結するファクタリングも増えており、オンラインファクタリングの手数料は数%に収まることもあります。

3社間ファクタリングは、売掛先の承諾が必要になる方法です。ファクタリング会社としては、売掛先から直接決済額を支払ってもらえるのでリスクが少ないのがポイントです。そのため、2社間ファクタリングに比べると手数料が低く、売掛債権金額の1%~10%が相場です。

ファクタリングのメリットは、利用者の財務状況が悪くても売掛先の信用が高ければ利用しやすいことです。また、即日審査で翌日資金調達可能な会社もあるので、とにかく早く資金調達したい場合に向いています。

ただし、手数料が高いのがデメリットです。ファクタリングは貸金業ではないので、利息上限のような手数料に関する規制がありません。そのため、常識の範囲を超えた手数料を請求してくる会社も混在するのは注意が必要な点です。このような会社を避けるためには、大手のファクタリング会社を使ったり、コンサルタントに相談したり、口コミを確認したりするようにしましょう。

10.補助金・助成金

最後に、個人事業主が利用できる補助金・助成金について説明します。補助金・助成金も融資とは異なり、返済の必要なく資金調達ができるという点が特徴です。ただし、補助金は支給できる予算や採択数が限られており、助成金は条件をクリアしていれば支給対象になるという点が異なります。一般的には補助金の方が支給されるハードルが高いといわれています。

創業助成金

創業に関する助成金は各地域で支給されています。東京都の創業助成金は、個人事業主でも申請可能な助成金です。個人事業主の場合、都内で創業予定または開業届を提出してから5年以内の方で、創業支援事業を利用している方が申請できます。助成額の上限は300万円、 下限は100万円で、助成対象になる経費の2/3以内の助成になります。助成対象となる経費としては、賃借料、広告費、器具備品購入費などです。

出典:東京都産業労働局 東京都創業NET「創業助成金(東京都中小企業振興公社)

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、常時雇用する従業員の人数が20人以下の法人または個人事業主向けの補助金です。販路拡大のために利用されることを目的としており、チラシ作成、Webサイト作成、店舗改装などの経費のために上限50万円、経費に対する2/3以内の補助率で支給されます。

出典:中小企業庁「ミラサポplus

補助金や助成金で資金調達をするメリットは、経営に必要になる資金を返済の必要なく調達できることです。ただし、補助金や助成金が支給されたら定期的に経営状況を報告するなどの手間がかかるケースもあります。また、補助金や助成金の採択率は低いので、手間をかけて資料作成したのに努力が報われないケースもあるでしょう。期待しすぎずに、その他の資金調達方法と併用して応募するのがおすすめです。

まとめ

個人事業主は、創業資金として法人のように登記費用や資本金を用意する必要はありません。そのため、法人で開業するよりも費用を抑えられます。

また、開業後は法人と同じように金融機関からの融資を受けられます。ただし、信用力が低いとされる個人事業主が、民間の金融機関からプロパー融資を受けるのは難しいです。そのため、日本政策公庫や信用金庫の融資、ビジネスローン・ファクタリング・クラウドファンディング、補助金・助成金などでの資金調達を考えるのも良いでしょう。

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