銀行融資のためには、資料作りが欠かせません。しかしどこから手をつければよいのか、どこに力を入れればよいのかを知らなければ、内容がちぐはぐになってしまいます。
融資の資料作りでまず考えるべきことは資金使途です。資金使途をしっかり考え、借入れ区分を明確にすることで、資料づくりの方向性もはっきりします。
本稿では、融資における資金使途の重要性や、資料作りの考え方を解説します。
借入れ前に考えるべきこと
資金繰り表を作成する第一のメリットは、資金不足が発生する時期や、どれくらい不足するかを把握できることです。
しかし、資金不足の時期と金額を特定するだけでは不十分です。資金不足を把握したときには、収支が合わない原因はどこにあるのかを考えることが欠かせません。
この視点が、健全な借り入れにつながります。収支が合わない原因が赤字にある場合、返済原資が確保できないため、銀行から融資を受けられない可能性が高く、融資を受けられたとしても返済負担は苦しくなります。黒字化の見通しを立ててから借り入れるのが賢明です。
このほかにも、
- 不要不急の支出を特定し、削減する
- 回収漏れの売掛金を洗い出し、早急に回収を図る
- 資産内容を見直し、不要なものは換金する
など、資金不足解消のためにできることはたくさんあるはずです。これらを徹底した後、なお資金不足が解消されない場合に資金調達を行います。返済負担の生じない手形割引やファクタリングの活用を優先しますが、まとまった資金調達のためには銀行融資も必要です。
ファクタリングの活用は難しいものではありません。難しいのは銀行融資です。銀行融資は、銀行の審査に通らなければ資金を調達できないからです。
最初に作るべき資料は?
銀行融資を受けるためには、事前の準備が重要です。資金が必要だからといって、駆け込みで融資をお願いしても断られてしまいます。また、融資の審査には1ヶ月程度を要するため、緊急の資金需要には対応できません。
このため、銀行融資では余裕を持って申し込むのが基本です。資金繰り表で数ヶ月後の資金不足を把握しておくと、時間的余裕がたっぷりあるため、十分な準備も可能です。
銀行融資を受けるために最低限必要となるのは「借入れの説明資料」です。この資料には、
- なぜ借入れが必要なのか
- 借入金を何に使うのか
- 資金が必要になる時期はいつか
- 必要な金額はいくらか
- 返済はどのように進めるのか
- 利息はいくら支払うのか
などを記載します。この資料を提示することで、銀行員が最初に把握したい情報を的確に伝えることができます。
銀行は貸付金を回収することで利息収入を得ています。低い金利で確実に収益をあげるには、貸し倒れを起こさないことが何より重要です。したがって、回収の見込みがあることが前提です。
このため、銀行融資を受けるには、会社の経営がうまくいっていることを理解してもらう必要があります。業績が黒字で安定推移している会社が、収支のズレによって生じる運転資金を借り入れる場合などには、比較的容易に借り入れ可能です。
一時的に業績・財務が悪化している、赤字に転落したなど、マイナス要因を抱えている会社では、あくまでも一時的な悪化であることを理解してもらわなければなりません。
資金使途の重要性
そこで重要となるのが「借入金を何に使うのか」、つまり資金使途です。ここに力点を置くことで、資料にメリハリをつけることもできます。主な資金使途には、
- 賞与を支払うための資金
- 納税のための資金
- 売上増加による増加運転資金
- 売掛先の倒産による救済資金
- 設備投資のための投資資金
などがあります。
1~4は、短期間の資金需要になるのが普通ですから、短期借入として申し込むのが基本です。
しかし、5の資金使途は製造設備の購入、新規の工場設立などであり、多額の借入れを伴います。設備が長期にわたって稼働し、生み出された利益が返済原資になるため、長期借入で申し込む必要があります。
ごく当たり前に思えるかもしれませんが、資金使途をしっかりと考え、借入れの区分を区別したうえで融資を申し込むことは非常に重要です。
短期で借り入れるべきものを長期で借り入れようとすれば、銀行から「資金繰りがかなり苦しいのではないか?」「本当の資金使途は別のところにあるのでは?」と疑われる可能性があります。
また、長期で借り入れるべきものを短期で借り入れようとすれば、返済に無理が生じるはずです。これも、銀行に「無理な返済計画で借り入れようとしている。この会社に貸すのは危ない」と危機感を抱かせ、融資に不利な影響をもたらします。
正しい考えに基づいて資料を作成すれば、通常は短期借入に区分される運転資金も、金額によっては長期借入として申し入れるべき場合もあるでしょう。
このように、資金使途をしっかりと考え、借入れ区分の区別も正確にできる会社であれば、銀行も安心して検討できます。検討以前に悪印象を与えることは、何としても避けるべきです。
これを意識しておけば、銀行にとって好ましい資料を作成できるはずです。
まとめ
「銀行融資では資金使途が重要」ということを、皆さんも聞いたことがあると思います。しかし、資金使途の重要性を借入れ区分と合わせて考え、銀行に与える印象まで考慮している経営者は少ないものです。
資金使途が曖昧な状態では、銀行融資を受けることは不可能です。まずは資金使途をしっかり考えることを出発点にしてください。
もちろん、資金使途さえしっかりしていれば借りられるというものでもありません。そこで、銀行融資を引き出すためには、専門家のトータルサポートが役立ちます。
ぜひ、コンサルタントなどの支援を受けながら、銀行融資を進めていくことをおすすめします。
資金調達のプロがお客様の状況をヒアリングした上で適切なアドバイスを致します。
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