資金調達

利用できる信用保証協会がひとつとは限らない。有利なところを使おう

銀行融資の際、多くの中小企業では信用保証協会の保証を受けています。この時、保証を受ける信用保証協会を、銀行に言われるまま選んでいる会社が非常に多いです。
 利用できる信用保証協会は会社の所在地によって決められ、所在地が複数ある会社では複数の信用保証協会から選ぶことができます。自社にメリットの大きい信用保証協会を選ぶことも可能です。

信用保証協会をどう選ぶ?

銀行で融資を受ける際に利用できる信用保証協会は、全国51カ所の協会に分かれて運営されています。それぞれの協会が、全国信用保証協会連合会に加盟し、保証業務を行っているのです。
会社所在地の信用保証協会を使えるため、本店や支店、工場、出張所などが複数地域にある会社では、複数の中から信用保証協会を選べるケースが生じます。
多くの経営者は、「同じ保証協会だし、どこを利用しても変わらないだろう」と考えるのですが、そんなことはありません。実際には、信用保証協会によって保証審査の内容や、使える保証制度が違うのです。

よくある信用保証協会の選び方

信用保証協会の選び方として最も多いのが、銀行に言われるままに信用保証協会を利用するケースです。融資を申し入れた時、利用できる信用保証協会が複数あるにもかかわらず、銀行の担当者から
「信用保証協会の保証をつければ、融資を出せると思います。東京信用保証協会を使いましょう」
といった提案を受け、そのまま受け入れてしまうのです。

 貸してくれる銀行がそのように言うのだから・・・と思うかもしれませんが、そのような消極的な考え方は考えものです。自社の資金繰りに本当に役立つ保証制度がほかにあるならば、それを利用するのが最良の選択です。
 また、銀行員が最良の保証制度を勧めてくれるという過信も禁物です。むしろ、そうではない可能性が高いです。
 銀行員は融資のプロですが、保証のプロではありません。保証制度に精通しており、融資先に最良の保証制度を選んで提案することはできないのです。
 銀行員の提案を安易に受け入れてしまう理由は、

  • 信用保証協会によって保証制度が異なること
  • 保証制度によって、自社の資金繰りへの影響が異なること
  • 利用する保証制度は借り入れる会社が選べること

などを知らないからです。したがって、信用保証協会を活用するには「利用できる信用保証協会はひとつとは限らない」と考えることが第一歩となります。

協会ごとの違いと使い方

では、信用保証協会ごとにどのような違いがあるのでしょうか。また、その違いがあることによって、利用にはどのような差が出てくるのでしょうか。

違いが出やすいのは審査

信用保証協会ごとの違いのうち、最も違いが分かりやすいのは保証審査です。
全国信用保証協会連合会に所属していることから、ほとんどの経営者は「審査の方法は同じだから、審査スピードも大差ないだろう」と考えます。しかし実際には、信用保証協会ごとに審査にかかる時間や保証の受けやすさが異なり、顕著な差が生じる場合も少なくありません。
例えば、「保証審査が厳しいA県信用保証協会」と「保証審査が緩いB県信用保証協会」があったとします。
A県・B県に事業所を構えている会社では、このいずれかを選ぶことが可能です。
各信用保証協会の特徴を以下と仮定した場合、

A県信用保証協会は保証審査が厳しいです。審査を念入りに行うため、審査期間も長くなる傾向があります。保証を受けられない可能性も高め。

B県信用保証協会はこの逆で、保証審査が厳しくありません。短期間で審査が終わることも多く、保証を受けらない可能性は低め。

その結果、保証が決定して融資が実行されるまでに要する期間が、A県信用保証協会では1ヶ月、B県信用保証協会では2週間といったように、非常に大きな差が出ることもあるのです。
資金調達はスピードが命です。信用保証協会ごとの違いを軽く考えてはいけません。

制度ごとの違い

信用保証協会ごとの審査の違いに加えて、制度の違いも大きいです。
そもそも、信用保証協会の保証制度には、全国統一の制度と、地方自治体が用意する制度とがあります。
保証制度のうち、最も一般的なのは「一般保証制度」です。これは、全国統一の制度であり、全国51の信用保証協会が全て提供しています。
これに対し、都道府県単位や市区町村などで提供されている制度は、信用保証協会によって大きく内容が異なります。
全国統一の一般保証制度とは異なり、借入金利が低く設定されるもの、保証料や利息の補助が受けられるものなど、制度ごとに色々なメリットがあります。
複数の信用保証協会を利用できる会社は、各地方自治体の保証制度を比較し、よりメリットの大きい制度を探してみてください。

有利な信用保証協会を使おう

利用できる信用保証協会は、会社の所在地によって決まります。ただし、本社所在地である必要はなく、支店や工場、営業所などの所在地も対象となります。支店登記していない場合にも納税証明書があればよいため、対象は広いといえるでしょう。
自社の所在地が複数地域にある場合には、信用保証協会の情報を銀行員に聞いてみるか、あるいは知り合いの経営者と信用保証協会の情報を交換するのがおすすめです。このような情報収集の結果、
「これまでA県信用保証協会を使ってきたが、B県信用保証協会の方がよさそうだ」
といったことが分かれば、信用保証協会の活用がはかどります。銀行のすすめるままに利用してきた信用保証協会よりも有利であることが分かれば、別の信用保証協会を利用すればいいのです。
 有利な信用保証協会から保証を受けることは、資金繰りと財務健全化にメリットがあり、銀行にとっても悪いことではありません。次回の銀行融資の際、自社から銀行に「かくかくしかじかで、B県信用保証協会を利用したいんだけど」と話してみると、銀行員も前向きに検討してくれるはずです。

有利な保証制度を探すには?

自社に有利な保証制度を探す方法として、銀行員や知り合いの経営者に尋ねる方法を紹介しました。しかし、最新の情報を細部まで確実に把握し、有利な保証制度を探すには、聞き込みだけでは不十分です。
 そこで、おすすめの方法をさらに2つ紹介します。

『中小企業金融のしおり』

最新情報を正確かつスピーディに入手するならば、『中小企業金融のしおり』がおすすめです。これは、各自治体が毎年5月に発行されている資料であり、中小企業の資金調達に活用できる保証制度が網羅されています。
 しおりの形態と内容は様々です。例えば、

  • 山梨県では、産業労働部産業振興課が作成している。モノクロで、文字だけによって解説する。事務的な印象が強い。令和3年度の融資制度は計15種。新型コロナウイルス感染症関連の支援制度はない。
  • 神奈川県では、産業労働局中小企部金融課が作成している。フルカラーで写真やイラストも使われ、非常に見やすい。事務的な印象をあまり受けない。令和3年度の融資制度は計22種。うち新型コロナウイルス感染症関連の支援制度は6種あり、対策に力を入れていることが分かる。
  • 佐賀県では、産業労働部産業政策課が作成している。モノクロではなく図の挿入もあるが、縦書きと横書きが混在していて見にくい。令和3年度の融資制度は計13種。新型コロナウイルス感染症関連の支援制度はない。

といったように、色々な違いがあります。それぞれ見比べてみると、自治体ごとに方針が異なる様子がわかるでしょう。特に、令和3年度の保証制度では、新型コロナウイルス感染症の拡大が深刻な自治体と、そうでない自治体によって力を入れる部分が大きく異なる傾向が見られます。
このような違いは、『中小企業金融のしおり』から比較すればよく分かります。『中小企業金融のしおり』は、基本的にインターネットでダウンロード可能です。インターネット上に見つからない場合には、商工会議所や信用保証協会の本支店でもらえます。

コンサルタントへの相談

ただし、『中小企業金融のしおり』によって制度の違いを把握しても、結局のところ、自社に最も有利な保証制度を選べない経営者も多いです。有利に思える保証制度がいくつもあり、絞り込めないケースもよくみられます。
 そのような場合に役立つのが、資金繰りに強い税理士や、資金繰り専門のコンサルタントなど、専門家に相談することです。どちらかといえば、コンサルタントへの相談がおすすめです。
 なぜならば、税理士は本来税務の専門家であり、資金繰りに精通している税理士は少ないためです。さらに、保証制度まで網羅している税理士となると、そもそも見つからない、見つかっても依頼にコストがかかりすぎるといった問題が生じます。
 これに対し、もとより資金繰りを専門にしているコンサルタントに依頼するならば、保証制度にも詳しい場合が多く、安心して相談できます。また、単に保証制度についてアドバイスするだけではなく、保証付融資によって資金調達することで資金繰りにどのような影響があるか、中長期的な目線でトータルサポートを受けることも可能です。
 税務は税理士へ、労務は社労士へ、資金繰りはコンサルタントへ、というように、各分野の専門家にそれぞれ依頼することを心がけ、信用保証協会の活用についてはコンサルタントに相談することをおすすめします。

まとめ

本稿を読んで、「会社所在地が複数ある場合には、利用できる信用保証協会も複数ある」ということを初めて知った人も多いと思います。また、信用保証協会ごとに比較してみると、制度内容に色々な違いがあり、資金繰りへの影響が異なることもわかることでしょう。
銀行や信用保証協会を利用するのは、資金を調達し、資金繰りを回し、経営を続けていくためです。その際、保証制度が複数あり、資金繰りへの影響も異なるのですから、自社の資金繰りに有利な信用保証協会を利用するべきです。
信用保証協会の活用で分からないことがあれば、資金繰り専門のコンサルタントに依頼するなどして、信用保証協会を最大限に活用することを心がけましょう。

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