資金調達

メインバンク候補は年商から考えよう。上手な付き合い方も解説

メインバンク選びの重要性

スムーズに資金を調達していくうえで、メインバンクの存在は非常に重要です。メインバンクは、あらゆる局面で融資を受けやすく、経営が順調なときでも苦しい時でも頼れる存在です。

ところが、メインバンク選びの重要性をあまり認識しておらず、成り行きによってメインバンクが決まってしまうケースも少なくありません。まずは、その危険性を認識しておく必要があります。

選び方を誤ると・・・

金融機関の種類は様々です。資金繰りの強力な味方として活用していくには、メインバンクを正しく選ぶことが不可欠です。

むしろ、メインバンク選びを誤ると、資金繰り上の重大な欠陥にもなりかねません。

簡単に言えば、メインバンクとは取引している金融機関のうち最も融資シェアが大きい金融機関のことです。メインバンク選びを誤ると、メインバンクとしての機能をあまり期待できない金融機関の融資シェアが最大となり、本当に必要な時に支援を受けられなくなる可能性があります。

このような事態は、実際に起こり得ることです。例えば、以下のようなケースが考えられます。

具体的な失敗例

債権保全のためには、担保を取るのが最も確実です。担保さえあれば、自社の支援に消極的な金融機関でも積極的に融資してくれることが多いです。

このため、担保付で多額の融資を受けた結果、自社の支援に消極的な金融機関の融資シェアが最大になる(=メインバンクになる)ことがあります。

これは、非常に危険な状態といえます。なぜならば、経営が苦しくなって融資を頼み込んでも、新たな担保がないことを理由に融資を断られてしまう可能性が高いからです。

メインバンクに融資を断られてしまうと、他の金融機関も「メインバンクが融資できないほど危険な会社」とみなし、融資に消極的になります。

選び方を誤ってしまうと、メインバンクを頼れないだけではなく、資金調達の大きな障害になる可能性さえあるのです。

メインバンクは年商から考える

メインバンク選びに失敗しないためには、自社の年商にふさわしい金融機関を選ぶのがポイントです。基本的には、

・年商が小さい会社ほど、規模の小さい金融機関をメインバンクにする

・年商が大きい会社ほど、規模の大きい金融機関をメインバンクにする

と考えます。

年商別にメガバンク・地方銀行・信用金庫との相性をまとめると、以下のようになります。

メガバンク 地方銀行 信用金庫
年商1億円未満 ×
年商1億円以上10億円未満
年商10億円以上

×・・・メインバンクにしてはいけない

△・・・場合によってはメインバンクにして良い

〇・・・メインバンクとしておすすめ

◎・・・メインバンクとして特におすすめ

この表について、もう少し詳しく見ていきましょう。

年商1億円未満

年商1億円未満の会社であれば、まずメガバンクをメインバンク候補から除外してください。

メガバンクは、年商の大きい会社に多額の融資を出すことで利ザヤを稼いでいます。年商1億円未満の会社が小規模な融資を依頼しても、あまり良い反応は得られないのが普通です。

業績が非常に良く、将来性が見込まれる会社であれば、年商1億円未満でもメガバンクから融資を受けられることがあります。これは、会社が成長するにつれて融資規模が大きくなっていき、メガバンクにとって良い融資先になる可能性があるからです。

しかし、これは「長期的な成長と資金需要の増大」を前提に融資しているのですから、業績が悪化するにつれて融資を渋るようになります。したがって、資金調達の軸に据えるのは危険です。

これに対し、地方銀行や信用金庫であれば、メインバンクとしての役割も期待しやすいです。

地方銀行や信用金庫は、地域金融の担い手です。主な融資先は地域の中小企業であり、業容が小さい会社でも融資を受けやすく、経営悪化時にも支えてくれることが多いです。

特に、年商1億円未満の会社には信用金庫がおすすめです。信用金庫は、地方銀行よりも地域への密着性が高く、小規模企業への融資も大切なビジネスですから、融資シェアを伸ばしてメインバンクに据えることも比較的容易です。

年商1億円未満であり、頼れるメインバンクがない会社は信用金庫との関係を深めていくのが良いでしょう。

年商1億円以上10億円未満

年商1億円以上10億円未満の会社に最もおすすめなのは、地方銀行です。

このくらいの年商になれば、会社が成長軌道に乗っていることも考えられます。今後、業容拡大に伴って新規事業を展開していくなど、多額の融資が必要になることもあるでしょう。

地方銀行は、信用金庫よりも大きな融資を受けやすいため、今後の展開に備えて地方銀行をメインバンクに据えるのがおすすめです。

ただし、業績が年商1億円以上10億円未満で安定しており、成長軌道にない会社であれば、経営戦略に応じて多額の融資を引き出せるかどうかよりも、長期的・安定的に融資を引き出せるかどうかが重要となります。

したがって、地方銀行と信用金庫のいずれかにこだわることなく、より信頼できる金融機関をメインバンクに選ぶのが良いでしょう。

メガバンクは、場合によってはメインバンク候補となります。例えば、年商10億円に近い規模であり、業績が好調で今後多額の融資を必要とする可能性が高く、メガバンクも融資に積極的(無担保のプロパー融資を勧めてくるなど)といった場合には、将来を見据えてメガバンクをメインバンクに選ぶことも考えられます。

年商10億円以上

年商10億円以上の会社になれば、メガバンクと良い付き合いができることも多く、メガバンクをメインバンクにすることも考えられます。メガバンクであれば多額の融資を引き出しやすく、成長軌道に乗っている会社にとって好都合です。

一方、信用金庫はあまりおすすめできません。年商10億円以上の会社は資金需要が大きく、信用金庫では対応できない可能性があるからです。

もっとも、年商10億円前後で業績が安定しており、資金需要が突発的に膨らむこともなく、地域に密着して経営している企業であれば信用金庫もメインバンクになり得ます。

地方銀行もおすすめです。メガバンクほどではなくとも、地方銀行は大きな資金需要に応えてくれるため、メインバンクとしての機能を果たしてくれます。資金需要が急拡大しているわけではなく、地域に根差した経営を続けていく会社であれば、メガバンクよりも地方銀行のほうがおすすめです。

メインバンクを作る上手な付き合い方

さて、上記のような考え方に基づいて、実際にメインバンクを作っていくにはどうすればよいのでしょうか。

信頼できる金融機関はどこ?

すでに書いた通り、メインバンクとは「融資シェアが最も大きい金融機関」であり、言い換えれば「取引頻度が最も高い金融機関」のことです。したがって、自社の年商にふさわしい金融機関をメインバンクにするには、その金融機関との取引頻度を増やし、融資シェアを高めていくことが必要となります。

複数の金融機関から融資を受け、色々な取引を続けていくうちに、金融機関ごとに反応の違いが出てきます。自社の相談に応じて融資を検討してくれる金融機関もあれば、自社の相談を待たず積極的に融資を提案してくれる金融機関もあるでしょう。担保や信用保証協会の紐づけを求めるかどうか、金利をどれくらいに設定するかといった違いも参考になります。

これらの違いから、どの金融機関が最も信頼できるか、どの金融機関をメインバンクにしたいかが見えてくると思います。このとき、信頼できる・メインバンクにしたいと思った金融機関に対して、

「現在、いくつかの銀行と取引させてもらっていますが、その中心になって支援してくれますか」

と打診してみるのです。メインバンクとして任せられそうな反応が得られれば、その金融機関をメインバンク候補の筆頭となります。

関係を強化しよう

その後、関係を強化していくことで、メインバンクとしての位置づけを確実なものとしていきます。そのためには、他の金融機関よりも融資シェアを高めていくだけではなく、売上の入金や手形の決済、口座振替など、様々な取引をメインバンクに集中させるのがポイントです。取引を集中させることにより、メインバンクは自社の資金繰りを把握しやすくなります。

良い関係を築くためには、自社がメインバンクを一方的に信頼するだけではなく、メインバンクにも自社を信頼してもらうことが欠かせません。資金繰りを把握していれば、多額の融資を出しているメインバンクとしても安心感があり、追加融資も実行しやすくなります。

まとめ

本稿では、メインバンクの正しい選び方を解説しました。年商に応じてメインバンクを選び、正しい流れで関係を強化していくならば、メインバンクは資金繰りの強い味方になってくれることでしょう。

資金調達の方法には、手形割引やファクタリングなど色々な方法があり、うまく使い分けていくことが大切です。中でも、銀行融資は資金繰りの軸になる調達方法ですから、メインバンクを正しく選び、上手に付き合うことを心がけましょう。

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