資金調達

銀行融資のキーマンは誰だ?支店長・融資係とのコミュニケーションで融資を引き出す

銀行融資のキーマンは誰だ?

全ての会社にとって、銀行は身近な存在です。資金調達に欠かせないだけではなく、預金や振り込みなど様々な取引があることと思います。

しかし、そのような身近な存在でありながら、銀行の内部はどのような構造になっているのか、付き合いのある支店はどのように機能しているのか、といったことは意外に知らないものです。

銀行の組織構造

銀行には「本部」と「支店」があります。通常、会社が直接的に付き合うのは支店です。

さらに、銀行の支店には3つの係があります。預金係、融資係、得意先係の3つです。これらの係は、銀行によって呼称が変わることはありますが、

・預金や振り込みなどを行う係(預金係)
・融資審査を行う係(融資係)
・外回りをして営業を行う係(得意先係)

の3つの役割を担う部門によって支店が機能していることは、どの銀行でも変わりません。

支店のトップは支店長です。支店長の下には次長、その下にはそれぞれの係の係長(預金係長、融資係長、得意先係長)がいます。これが、銀行支店の基本的な組織構造です。

これらのうち、融資のカギを握る人が2人います。それは、支店長と融資係長です。

キーマン①支店長

銀行融資のカギを握る最大の人物は支店長です。支店長は支店のトップであり、支店長の意思によって融資が左右されるほどの力を持っています。

銀行融資は稟議制によって行われます。稟議制とは、支店内で審査書類を回覧し、複数の行員が融資の可否を判断した後、最終的に支店長もしくは本部で決裁される制度です。

稟議制と聞けば民主主義的な雰囲気がありますが、実際には多数決とは言い切れない側面があります。融資の現場では、稟議に携わった行員の多くが融資可能と判断しても、支店長が融資不可と判断すれば融資は通りません。逆に、行員の多くが融資に否定的であっても、支店長がGOサインを出せば融資は通ります。

融資額が大きい場合や、何らかの事情によって支店だけでの判断が難しい場合には、支店内で決裁されずに本部に回されます。組織構造的には支店長より上のポジションにある本部も、それほど大きな影響はなく、支店長の判断が本部で覆ることは珍しいです。

本部は、基本的に支店長の判断を尊重します。なぜならば、本部は融資の現場からは遠いところにあるからです。現場に近い支店長の判断の方が、本部の判断より優れていると考えるのが自然であって、支店長の判断に明らかな問題がなければ、本部は支店長の意見に合わせます。

キーマン②融資係長

支店長の次に重要といえる人物は、融資係長です。

支店長の重要性は上記の通りですが、支店長が現場をどの程度知っているかといえば、あまり知らないというのが実情です。支店長には支店長の業務があり、融資の最終決定だけをやっているわけではありません。むしろ、それ以外の業務が大部分を占めています。

支店長の職務は、支店の経営にあります。支店を円滑に機能させるだけではなく、業績を伸ばしていくことも支店長の任務です。したがって、本部への対応、重要な融資先への訪問、様々な会合への出席、その他の付き合い(例えば顧客とのゴルフ)などで多忙を極めます。

このような多忙の中で融資の最終決定を行うため、全ての案件に対して現場をよく理解した上で判断を下すのは困難です。普段から気にかけている重要な融資先を除いて、ほとんどの案件はよく知らない状態で最終決定を下しているのです。

そこで重要になるのが、融資係長の存在です。融資の現場に最も近いのは、審査の第一線にいる融資係の行員です。当然、その行員の直接の上司にあたる融資係長も現場に精通しています。

このため、支店長が最終決定を下す際には、融資係長の意見が尊重することが多いです。稟議書に目を通して特に問題がなければ、融資係長の判断が支店長の判断になるのです。

融資係とのコミュニケーション

ここからは、融資審査をスムーズに進めていくために、支店のキーマンたちとどのようにコミュニケーションを取っていくべきかを見ていきましょう。

まず、融資係とのコミュニケーションです。上記では、融資係”長”をキーマンとしましたが、実際に銀行と付き合っていくうえでは融資係長だけではなく、融資係の行員と広く付き合っていくことになります。

したがって、融資係をひとくくりにして、基本的なコミュニケーションを知っておくと役に立ちます。

融資係は厄介な存在

融資係は、会社の資金調達にマイナスの影響をもたらすことが少なくありません。これは、

・融資係の判断基準が稟議書や資料であること
・貸し倒れリスクに敏感であること

などが原因です。

融資係の仕事は、融資案件を審査することです。得意先係のように外回りをして、会社の実態を直接確認することはありません。このため、得意先係が収集した企業の情報や、稟議書をもとに融資審査を進めるのが普通です。

これらの資料だけを判断材料にするならば、資料に現れない好材料を汲み取ることはできません。資料の内容によっては、融資係が会社に悪いイメージを抱くことも考えられます。

さらに、融資係は稟議書に否定的な意見を述べる傾向があります。融資係が求められる役割は「審査を通して融資を実行し、金利収入を稼ぐこと」ではなく、「危ない案件は審査を通さず、貸し倒れを防ぐこと」にあります。融資の実行と収益の獲得は、営業担当である得意先係の役割です。

貸し倒れの防止を求められる融資係は、基本的に疑いの目線で審査しています。悪材料が見つかれば、稟議で否定的な意見を述べるでしょう。リスクの低い案件に絞って審査を通していけば、貸し倒れを防いで評価につながります。

融資係は、資料の定量的な情報をもとに融資を出さない理由を探しているのです。融資係が資金調達にマイナスに作用することが分かると思います。

融資係とコミュニケーションを取るメリット

そこで、融資係とのコミュニケーションが重要となります。

融資係が資金調達にマイナスに作用する大きな理由は、外回りをする立場になく、会社の実態を知る機会がないからです。

融資係とコミュニケーションを取る工夫をしなければ、自社が融資を申し入れたとき、融資係は「よくある融資案件のひとつ」としか考えません。平たくいえば「その他大勢」と見られ、機械的に処理される可能性が高いです。悪材料があれば簡単に弾かれてしまうでしょう。

しかし、もし経営者と融資係が顔なじみであればどうでしょうか。融資係は「よくある融資案件のひとつ」ではなく「よく知っている会社の融資案件」と見なし、資料だけで審査されるよりも有利になる可能性が高いです。

コミュニケーションの際には簡単な会話をするだけではなく、近況や短期的な見通し、中長期の展望なども話しておけば、良い印象に繋がることも期待できます。

自社から訪問すべき

融資係とのコミュニケーションを図る際には、まずは「知らない会社」から「知っている会社」になることを目指しましょう。意識されるようになれば、好印象を与えていくことも容易になります。

上記でも触れた通り、融資係は外回りをする立場にありません。会社が待っていても融資係とコミュニケーションを取ることはできないため、会社側から銀行を訪問し、積極的にコミュニケーションを図る必要があります。

銀行に訪問することに戸惑いを覚える人もいるはずです。銀行に訪問する機会といえば融資の相談をするときくらいのもので、それ以外のタイミングに訪問した経験がない人も多いものです。

しかし、あまり深刻に考える必要はありません。融資係を訪問する名目も色々考えられます。例えば、資金繰り表や試算表を提出するという名目であれば、融資係の与信管理に役立つ資料を提供するため、気分的にも訪問しやすいです。

適切な訪問頻度は3ヶ月に1回です。四半期ごとに1回の頻度であり、銀行としてもちょうど情報がほしいタイミングで資料の提出を受けられるため歓迎されます。

提供された資料を受け取る際には、いくらかの時間を取ってくれるのが普通です。ただ資料を受け取るだけではなく、経営者から試算表や資金繰り表を説明してもらったり、気になる点は質問したいと考えているのです。

おそらく、毎回30分程度は面談できるでしょう。定期的に訪問を繰り返すうちに、融資係と顔なじみの関係になれるはずです。

提出資料に悪材料があれば経営者自ら説明してカバーしておきます。顔なじみであり、悪材料が深刻ではないことを知っていれば、融資係も否定的な判断を控え、審査に通る可能性が高まります。

なお、融資係にも色々な行員がいます。訪問の際、いつも同じ行員が対応するとは限りません。できれば融資係長と面談するのが望ましいですが、融資係長との面談の機会は限られると思います。融資係長とは時々接触できれば良いと考えておきましょう。

支店長とのコミュニケーション

融資係は、定期的に訪問することでコミュニケーションを図ることができますが、支店長はどうでしょうか。

融資の最終決定を行う支店長と関係を持ち、気になる会社・応援したい会社と見なされるようになれば、銀行融資は非常に有利になります。

しかし、支店長への接触は融資係ほど簡単ではありません。試算表や資金繰り表などは融資係に提出するものであるため支店長に面会する名目にはならず、支店長が多忙であることも会いにくさの理由です。

ベストタイミングは決算説明

支店長と接点を持つには、適切なタイミングを選ぶことが欠かせません。おすすめは、毎年1回の決算のタイミングです。

決算書を作成すると、融資を受けている銀行から提出を求められることがあります。この場合、あくまでも提出するだけで決算説明を求められることはありません。決算説明は、会社が自主的に行うものです。

決算説明を申し込めば、銀行は必ず場を設けてくれます。決算説明を支店長とのコミュニケーションの場にするには、支店長も参加してほしいと申し入れる必要があります。

一般の銀行員は、支店長に手間をかけさせることを嫌います。特に大きな理由がなければ、支店長が動かなくて済むように処理するのが普通です。その点、決算説明は年に1回だけですから、支店長自身も良い機会と捉え、できるだけ対応しようと考えるものです。

できるだけ多くのアピールを

支店長と接触するチャンスは年に1回しかないため、この1回でできるだけ多くのアピールを心がけましょう。当然ながら、決算説明の準備は念入りにすべきです。もし準備が不十分であれば、却ってマイナスイメージを抱かせることにもなりかねません。

決算書の数値を理解しておく、問題のある箇所と原因を把握しておく、問題について改善策を考えておく、といった準備によって決算説明を卒なくこなせるようになります。

ただし、それだけではごく当たり前の決算説明になってしまい、アピールにはなりません。決算内容の説明に加えて、

・会社説明資料や商品パンフレットなどを提供し、自社の商品(サービス)の特徴、強み、競合他社との違いや競争の状況などを説明する

・経営計画書を提供し、中長期的な展望、そのための現在の取り組みなどを説明する

といったアピールが効果的です。

たった1回だけでも、とりあえず支店長に接触してみることが大切です。効果が実感できるはずです。

支店では何百・何千という会社に融資していますが、支店長は大多数の会社をよく知りません。経営者と1回も会ったことのない会社がほとんどです。支店長の認識が「1回も会ったことがない」から「1回でも会ったことがある」に変われば、非常に大きな前進といえます。

まとめ

本稿では、銀行とのコミュニケーションについて解説しました。融資審査の第一線で働いている融資係、融資係をまとめる融資係長、最終的な判断を下す支店長に焦点を当ててコミュニケーションを図ることで、銀行融資がスムーズに受けられるようになります。

普段から、銀行とコミュニケーションを取っていない会社では、銀行を訪問することに抵抗があるかもしれませんが、定期的に訪問して習慣を作ってしまえば抵抗はなくなります。まずは融資係への訪問から始めてみてはいかがでしょうか。

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