資金繰り改善

中小企業の資金繰り改善に役立つ借換保証とは?よくある疑問も徹底解説

中小企業が利用できる保証制度には、運転資金や設備資金などを調達するのではなく、借換資金を調達できる制度があります。この制度は、一般に「借換保証」と呼ばれます。
保証付融資の返済負担が重く、資金繰りが苦しいと感じているならば、借換保証によって資金繰りが大幅に改善する可能性があります。

借換保証とは?

信用保証協会の保証制度のうち、最も身近なものは「一般保証」です。このほかにも色々な保証制度がありますが、大抵は運転資金や設備資金を調達するために利用されます。
しかし、保証制度のなかには特殊なものもあります。例えば「借換保証」は、運転資金や設備資金を調達するための保証制度ではなく、借り換えによって借入金を一本化し、返済負担を減らすための保証制度です。
借換保証は、複数の保証付融資を、一般保証の無担保の場合と同じ保証上限額(8,000万円)の範囲内でひとまとめにするものです。これに加え、

  • ひとまとめにした上で返済期間を最大10年まで延長できること
  • 保証枠に余裕があれば追加保証の交渉が可能であること

によって、「返済負担の圧縮(出ていくお金を減らす)」と「保証付融資による資金調達(入ってくるお金を増やす)」の両面から資金繰り改善が可能です。

なぜ負担が軽くなる?

借り換えによって複数の借入金を一本化することで、資金繰りの負担が大幅に軽減されます。トータルでの借入額は変わらずとも、借入れを分散するか、まとめるかによって返済負担が全く異なるためです。
このことは、すでに理解している経営者も多いと思います。しかし、資金繰りに慎重に取り組んでおり、借入れに消極的な経営者の中には、知らず知らずのうちに間違いを犯してしまうケースも多いです。
資金繰りがとても苦しいというわけではなく、「たくさん借りなくても大丈夫」「借り入れはできるだけ少なくしたい」という意識があるため、少額の資金を複数に分けて借り入れるのです。トータルではそれほど大きな借入れにならず、資金繰り負担も小さいと考えているのですが、実際には資金繰りが苦しくなっていきます。

具体例で考える

具体例で考えてみましょう。
ある会社では、資金不足のたびに少額の融資を受けた結果、

  • 残債500万円/返済期間1年(月々の返済額は40万円)
  • 残債1,000万円/返済期間2年(月々の返済額は40万円)
  • 残債1,500万円/返済期間2年(月々の返済額は60万円)

となっています。3本の融資を合わせると、月々の返済額は140万円です。
3本に分散するのではなく、3,000万円/返済期間3年の借入れを一本にするとどうでしょうか。その場合、月々の返済は約80万円となります。借入総額は全く変わりませんが、複数に分散するか、一本の融資にまとめるかによって、毎月の返済負担が60万円(4割超の圧縮)も軽くなるのです。
また、数百万円の借入れであれば短期融資となり、返済期間は1年以内になることが多いです。融資額が大きくなれば長期融資として借り入れることも可能となり、返済期間が長期化するほど毎月の返済負担は軽くなります。

借換保証で資金繰りがラクに

借換保証で一本化できるのは保証付融資だけですが、8,000万円の保証枠の中で細々とした借入れを一本化できるならば、返済負担は大幅に圧縮できます。返済期間を10年まで延長できるため、使い方次第で資金繰りがかなりラクになるでしょう。
例えば、上記の残債3,000万円を借換保証によって一本化し、追加で2,000万円の保証付融資を受け、返済期間を10年まで引き延ばした場合、

  • 借入総額5,000万円/月々の返済額は約40万円

となります。借入総額が増えても、月々の返済負担は確実に軽くなっていることがわかります。

借換保証の注意点

ただし、借換保証の利用にはいくつかの注意点があります。

追加融資のハードルが高い

まず、一般的な傾向として、借換保証に伴う追加融資はハードルが高いです。少なくとも、一般保証で保証付融資を受ける場合に比べると、信用保証協会は慎重になります。
これは、ごく当然のことです。そもそも借換保証を利用する目的は資金繰りをラクにすることであり、裏を返せば資金繰りが苦しいからこそ利用しているともいえます。信用保証協会にとっては、代位弁済のリスクがやや高い状態にあるわけです。
そこで追加の保証を求められるのですから、信用保証協会がさらなるリスク負担を避けたい、追加保証を慎重に検討したいと考えるのも当然です。
このため、追加融資を希望するならば、一般保証ほど簡単にはいかないと考えてください。

制度によっては利用できない

借換保証は、複数の保証付融資を一本化するものです。すべて一般保証で受けた保証付融資であれば問題ありませんが、色々な保証制度を利用している会社は利用できない可能性があります。
というのも、保証制度によっては借換保証による一本化を認めていないものがあるのです。特に、地方自治体の制度融資など、保証料や利子の補助を受けられる保証制度ほど、借換保証の対象外になる傾向があります。
自社で把握できない場合には、事前に保証協会に問い合わせる、コンサルタントに相談するなどして確かめておくことが大切です。

よくある疑問

借換保証について、信用保証協会や中小企業庁ではごく簡単に説明している資料が多いため、分かりにくい部分もあります。
そこで、特に疑問を抱きやすい問題を二つ取り上げ、解説します。

保証料はどうなる?

まず、保証料に関する疑問です。
保証付融資を受ける際には、信用保証協会に対して保証料を支払います。
保証料は、返済不能に陥った場合に保証を受けるためのものです。例えば、1,000万円を返済期間1年の条件で借り入れた場合、「保証期限:1年間」の保証を受けるために、保証料を支払うわけです。
借換保証は、複数に分散されている保証付融資を一旦すべて完済し、残債相当額を一本の保証付融資として新たに借り入れます。このため、一本化の対象となる複数の保証付融資は、保証期限が到来する前に完済することとなります。
既に支払った保証料は、実際には保証を受けない期間についても支払っているため、払いすぎている状態です。
この部分は返戻金として戻ってくるので、安心してください。

金融機関や信用保証協会が複数にまたがる場合は?

特に混乱しやすいのが、借入先の金融機関や保証を受けている信用保証協会が複数にまたがっている場合です。
例えば、

  • A銀行、B銀行、C信金の合計三行から保証付融資を受けている
  • A銀行、B銀行の保証付融資は神奈川県信用保証協会から、C信金の保証付融資は横浜市信用保証協会から保証を受けている

といったケースです。
複雑に感じられるかもしれませんが、シンプルに考えて問題ありません。金融機関や信用保証協会が複数にまたがっていても、借換保証は問題なく利用できます。例えば、

  • 借入:A銀行、B銀行、C信金
  • 保証:神奈川県信用保証協会、横浜市信用保証協会

⇒神奈川県信用保証協会の保証を受け、A銀行の保証付融資に一本化する
といったように、借り換え可能です。
ただし、実際の手続きでは、

  • 金融機関との契約内容によって、借り換えに別途費用が生じ、返済事務に時間がかかる
  • 信用保証協会ごとに保証制度が微妙に異なり、一本化のために調整が必要となる

といったことが考えられ、必ずしもスムーズに借り換えが完了するとは限りません。
したがって、金融機関や信用保証協会、あるいは資金調達専門のコンサルタントなどに相談しながら進めることが大切です。

まとめ

本稿では、信用保証協会の借換保証について解説しました。少額の保証付融資が複数あり、返済負担が重いと感じている会社では、借換保証の利用によって資金繰りを大幅に改善できる可能性があります。
ただし、借換保証を利用した場合には、金融機関から財務悪化を疑われ、警戒されてしまう可能性もあります。借換保証を利用することで資金繰りが健全化され、経営が安定するならば問題ありませんが、銀行が警戒を解くまでに1年程度を要することもあるため、この点には注意したいところです。
借換保証を利用すべきかどうか、利用した上でどのように資金繰りを改善していくか、といったことについては、資金繰り専門のコンサルタントにも相談しながら、慎重に進めることを心がけてください。

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