資金繰り改善

資金繰りとは?予測が難しい理由と改善方法について解説

資金繰りとは

資金繰り改善に取り組みたいと思っている経営者の中には、具体的にどのように進めていけばよいか分からずに困っている人も多いはずです。業種ごとにお金の流れは違うため、全ての会社が同じ方法で資金繰りを改善できるとは限りません。

しかし、資金繰りの基本的な考え方は共通しています。資金繰りとは、

  1. 今、手元にどれくらいのお金があって、
  2. これから、どれくらいのお金が入ってきて、
  3. これから、どれくらいのお金が出ていって、
  4. 一定期間後にどれくらいのお金が残って、
  5. その後どれくらいのお金が入ってきて、出ていって、残って…

を繰り返すものです。

業種ごとに異なるのは、

  • 売上は現金回収か、掛け売りならば回収にどれくらいの期間を要するか
  • 粗利率はどれくらいか
  • 仕入れはどれくらい必要か、在庫回転期間はどれくらいか
  • 設備にかかるコストはどれくらいか
  • 資金需要はどれくらいであり、返済負担はどれくらいか

などです。しかし、資金繰りの基本のうち、これらの違いによって変わるのは2の「お金がどのように入ってくるか」、3の「お金がどのように出ていくか」です。

まず資金繰りの基本を押さえ、自社の業種・業態をあてはめていけば、資金繰り改善の道がみえてきます。

具体的な考え方の事例を示すために、本稿では小売業を例として、資金繰りをどのように考え、改善していくかを解説します。

最大の特徴は現金回収

小売業の資金繰りで最も注目すべきは、売上の回収方法です。
小売業は消費者に直接販売し、現金で回収します。クレジットカード払いなどを除いて、ほとんどの売上が現金回収です。
このため、掛け売りする業種のように販売後の一定期間、売上回収を待つ必要がありません。

販売には回収サイトがないのに対し、仕入れでは掛け買いが可能です。仕入れる商品の支払いを先送りできます。

資金繰り改善の大きなポイントは、「入ってくるお金を大きく・出ていくお金を小さく」「入ってくるお金を早く・出ていくお金を遅く」ということです。回収サイト・支払いサイトの調整は取引先との交渉次第ですから、ここで苦労することも多いです。

しかし、小売業は現金回収・掛け買いです。掛け売り・掛け買いの会社に比べて、かなり良い条件で資金繰り改善に着手できます。

運転資金の借入れも不要

さらに、小売業の資金繰りでは、基本的に金融機関から運転資金の借入れも不要です。

出ていくお金を入ってくるお金が上回る場合や、入ってくるお金よりも出ていくお金の方が早い場合には、一時的に発生する不足分をカバーするために借入れが必要です。小売業では、現金回収できるために運転資金の借入れが不要なのです。

銀行融資を受けるとすれば、多くは新規出店や改装工事など、設備資金が必要になった場合です。他の業種より借入れの必要性が低いため、返済負担も小さく、資金繰りが回りやすいといえます。

小売業の弱点は販売予測の難しさ

では、小売業の弱点はどこでしょうか。それは、販売予測の難しさにあります。

小売業は、企業対企業ではなく、企業対一般消費者で取引をします。
企業相手であれば、特定の取引先から多額の売上・利益を上げることができます。それぞれの取引先から、毎月決まった数量の注文を受けることで、売上・利益が安定することも多いです。

しかし、一般消費者相手ではそうはいきません。不特定多数の消費者に販売していく必要があり、定期・定量の注文は期待できません。

資金繰りの予定を立てにくい

定期・定量の注文は期待できないため、資金繰りの難しさにも繋がります。

毎月の注文がある程度決まっていれば、将来的な資金需要を予測できます。予測を織り込みながら資金繰り表を作成し、資金不足が発生するならば銀行融資を受けることも可能です。

しかし、小売業では売上が安定しません。世間の流行は移ろいやすく、情報化社会の発展と共にそのスピードは増す一方です。消費者の嗜好に合わせて商品を仕入れ、今月は大いに売り上げたとしても、翌月にはぱったりと売れなくなる、といったこともよくあります。

売ったものがすぐに回収できる小売業では、売る分だけを仕入れればよく、ある意味で資金繰りは簡単です。しかし、肝心な「どれだけ売れるか?」がわからなければ「どれだけ仕入れるか?」もわかりません。

このため、在庫管理が難しくなります。予測を誤って多く仕入れてしまうと、資金繰りを圧迫します。少なめに仕入れると、収益機会を逃す恐れがあります。

流行の商品を大量に仕入れたものの、すぐに流行が変わって売れ残りが発生すれば、売れない在庫を抱えている状態=過剰在庫に陥ります。商品の陳腐化も早く、在庫価値は急速に目減りしていくでしょう。

多店舗経営はもっと難しい

売上予測と在庫管理の難しさは、多店舗展開の小売業者では一掃深刻になります。

多店舗経営では、エリアによって客層が変わり、店舗ごとに取り扱う商品も異なります。このため、原価率や経常利益なども異なり、儲かっている店舗と儲かっていない店舗が出てきます。

全ての店舗の平均値で経営を把握しようとすれば、店舗ごとの実態が見えなくなります。店舗ごとに分析し、儲かっている店舗はもっと儲かるように、儲かっていない店舗は課題の解決によって儲かるようにする、あるいは課題が深刻であれば撤退を検討するなど、様々な工夫が求められます。

これは、全て店舗ごとの実態がみえ、分析できることが前提となります。
これから資金繰り改善を進めていく会社が多店舗展開している場合には、各店舗の実態を把握することを意識してください。

小売業者の資金繰り改善のポイント

上記の通り、小売業は資金繰りを回しやすく、利益が安定しないという欠点があります。

資金繰りをうまく回せば、倒産の危険は遠のきます。特に、黒字倒産の危険を避けられます。しかし、資金繰りを回すことが会社の目的ではありません。会社の真の目的は利益を得ることにあります。

小売業の資金繰り改善では、この強み・弱みをしっかり踏まえることがカギとなります。

資金繰りはシビアに

売上予測が難しく、資金繰り予定も立てにくいことに加えて、現金回収も時に悪影響をもたらします。

現金回収ができるだけに、常にある程度の現金が確保できていることが多いです。このため、売上が落ちているときや赤字に転落したとき、経営者の危機感が欠けることにつながります。

この対策としては、手元に現金があるかどうかは別として、最悪のケースを想定して資金繰り予定を立てることです。

見通しが立てにくいとはいえ、シビアな資金繰り予定を立てておけば、経営悪化が比較的軽微なうちに危機感を抱き、早い段階で資金繰りの改善に着手することができます。

多店舗経営では店舗ごとにシビアに

多店舗経営の会社では、一層シビアに考える必要があります。
上記の通り、多店舗経営では全店舗の平均ではなく、各店舗の実態を正確に把握しておくことが、健全な資金繰りの条件となります。

そのためにも、店舗ごとに資金繰り表を作成するのが基本です。この時も、店舗ごとに最悪のケースを想定して資金繰り予定を立てましょう。

棚卸を頻繁に行う

在庫の管理を徹底するには、棚卸を頻繁に実施することが大切です。

食品などを取り扱っている会社では、毎日・毎週といった短いスパンで棚卸を実施していると思います。しかし、それ以外の商品を取り扱っている会社では、数カ月に一回、あるいは決算期だけしか棚卸をしていないことも多いです。

食品などを取り扱っていない会社でも、毎月棚卸することをおすすめします。物理的に劣化する商品でなくとも、小売業で取り扱う商品には鮮度があります。

頻繁に棚卸することで在庫の鮮度をしっかりと把握し、在庫をコントロールしていけば資金繰り改善に役立ちます。

設備投資の際の注意点

最後に、銀行融資のポイントです。
小売業では、基本的に運転資金の借入れが不要です。借り入れるとすれば、新規の出店や店舗の改装などに伴う設備資金です。

設備資金を借り入れる際の重要なポイントは、「返済年数=減価償却期間」になるように返済計画を立てることです。
返済年数と減価償却期間の関係をよく考えずに設備資金を借り入れると、資金繰りが回りやすい小売業といえども、破綻する可能性が高いです。

このことは、具体的な数字で考えると分かりやすいです。
ある会社では、法定耐用年数(=減価償却期間)10年・1億円の設備を購入するために、A銀行とB銀行に融資を相談しました。この資産の年間の減価償却費は1,000万円です。

A銀行が提示する条件は返済期間5年、B銀行が提示する条件は返済期間10年でした。
それぞれの条件を比較すると、以下のようになります。

返済期間 減価償却費 返済 手元資金の増減
A銀行 5年 1,000万円 2,000万円 -1,000万円
B銀行 10年 1,000万円 1,000万円 0円

 

A銀行では、年間の返済額が減価償却費を1,000万円上回っています。この条件で融資を受けると、不足分の1,000万円を手元資金から捻出する必要があり、資金繰りが非常に苦しくなります。

B銀行では、年間の返済額と減価償却費が一致しています。この条件であれば、減価償却費を計上した分を返済に回すことができ、特に影響をうけることなく資金繰りを回せます。

収支がトントンの状態でも返済を続けられるため、安心して融資を受けられます。

ところが、A銀行のような条件(減価償却期間>返済期間)で融資を受ける経営者が少なくありません。新規出店などの希望に燃えており、融資を受けることを優先するあまり、このような条件を安易に受け入れてしまうのです。

融資を受ける際に減価償却期間=返済期間の条件でなければ、資金繰り計画を提示して資金繰りが苦しくなることを伝え、条件を改善してもらうことが大切です。

まとめ

本稿では、小売業を例として資金繰りの考え方を解説しました。

回収方法や売上予測が資金繰りに与える影響の捉え方は、他の業種でも参考になる点が多いと思います。このほか、整備資金の借入れの考え方は、小売業だけではなく他の業種にも共通するものです。

資金繰りの基本に自社の業態を当てはめることができれば、資金繰りは確実にうまくなります。加えて、資金繰りのプロからコンサルティングを受けたり、資金調達のアドバイスを受けたりすることによって、さらなる改善が期待できるでしょう。

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