資金調達

銀行が保証付融資のセールスをかけてきた!新商品の検討にはご注意を

「保証付融資の新商品が出ました」
銀行から、このようなセールスを受けたことがある経営者も多いと思います。融資に苦労している経営者は、銀行からセールスを受けると簡単に乗ってしまうことも多いのですが、本当に借りるべきかどうか、しっかり考える必要があります。
本稿では、保証付融資のセールスの裏側と、検討のコツについて解説します。

保証制度は変わる

信用保証協会の保証制度といえば、ごく普通の「一般保証」をイメージする人が多いと思います。しかし、保証制度には様々なものがあり、銀行と信用保証協会が共同で作った商品もあります。
新しい商品が開発された際、銀行は「保証付融資にこのような新しい商品ができたのですが、よかったら・・・」と売り込みを仕掛けることも多いです。
このようなタイアップ商品にはどのようなものがあるのでしょうか。現在提供されているものをいくつか調べてみると、

  • スーパーグランド:中国銀行と広島県信用保証協会が手掛ける商品。融資上限額は1億円、融資期間は10年以内
  • CSファンドF1:大阪シティ銀行と大阪信用保証協会が手掛ける商品。融資上限額は8,000万円、融資期間は7年以内

 
上記の2つが見つかりました。

なぜ融資を勧めてくる?

普段は融資に厳しい銀行が、なぜ融資を勧めてくるのでしょうか。それは、基本的に銀行が保証付融資を好むこと、新商品は売れやすいことなどが理由です。

銀行が保証付融資を好む理由

まず、なんといっても、銀行は保証付融資を大変に好みます。融資にあたって銀行が最も恐れるのは貸し倒れリスクですが、保証付融資ならば貸し倒れリスクの大部分を回避できるため、銀行に有利な条件で融資できるのです。
しかし、信用保証協会の保証枠には上限があります。これを知っている経営者は、保証枠をできるだけ温存したいと考えるため、銀行が保証付融資を勧めても簡単には受け入れません。
また、保証付融資にそれほど抵抗がない経営者でも、特に資金需要がないタイミングでは借りてくれません。大して必要ないのに、わざわざ保証料を支払って資金を調達したいとは考えないからです。

新商品は売れやすい

このように、保証付融資に乗り気でない経営者を相手にする場合、銀行員はどうやって保証付融資で借りてもらおうかと考えています。そこで新商品が役立ちます。
新商品というからには、従来の保証付融資とは異なる部分があります。保証料が少し安い、無担保で借りられる金額がやや大きい(原則的に無担保の保証枠は8,000万円)といったメリットがあることも多いです。
普段は保証付融資を勧めにくい経営者に対しても、新商品であれば、

「今回、このような商品が出まして、保証料が通常より〇%お安くなるのでお得です。よろしければ・・・」

などと勧めることができます。新商品のセールスには、このような背景があるのです。

保証付融資は本当にお得?

さらに、保証付融資での貸し付けを増やすチャンスですから、銀行そのものに「この商品を売れ」という方針があります。
銀行からおすすめされると、おすすめするだけの理由、メリットがあると錯覚しやすいのですが、そうとは限りません。実際、銀行員自身が新商品の内容をそれほど理解していないこともあります。
例えば、既存の商品Aの亜種のような「新商品B」が発売され、銀行員が新商品Bを売り込んできたとします。しかし、銀行員は商品Aと新商品Bの違いがあまり理解できていないのです。

「どこが違うのか?」
「商品Aと新商品Bでは、メリットにどのような差があるのか?」
「新商品Bを勧めるからには、自社が新商品Bを利用すべき理由があるはずだが、それはなにか?」
「わが社があえて商品Aを選んだ場合、どこで、どのように損するのか?」

といったことを聞いても、正確に答えられる銀行員はそれほど多くないはずです。
正直なところ、銀行員としても「支店の方針で・・・」というのが、おすすめする大きな理由なのです。

保証付融資が必要なければ断るべき

銀行が新商品を開発する理由やおすすめしてくる理由、銀行員の事情などを知ると、このような新商品が必ずしも良いものではないことが分かります。
したがって、新商品のセールスを受けたときの対応は、「資金需要があれば検討する」か「資金需要がなければ断る」のいずれかです。

資金需要があれば検討を

セールスを受けた時、ちょうど資金需要が発生しているタイミングであれば、借入れを検討してみても良いでしょう。
しかし、あくまでも「検討」であって「了承」ではありません。
銀行が提案しているのは保証付融資であり、セールスに乗って借り入れると信用保証協会の保証枠を消費することになります。セールスを受け入れるならば、そこに「プロパー融資で借りられるか」といった交渉の余地は全くないのです。
保証枠に十分な余裕があり、おそらくプロパー融資が難しい状況にあるならば、セールスに乗るのも良いでしょうが、基本的には検討の上で受け入れるようにしてください。

資金需要がなければ断る

逆に、資金需要がないタイミングでセールスを受けた場合には、しっかり断るべきです。
銀行がプロパー融資を提案してくるならば、借りられる時にしっかり借りておくと考え、積極的に提案を受け入れて構いません。しかし、この場合の提案は保証付融資の提案であり、受け入れには保証枠の消費を伴うのです。
保証枠はできるだけ温存しておき、本当に資金が必要になったときに使いたいものです。
「断ることで銀行の心象を悪くしないだろうか」と気にする人もいるでしょうが、うまく断ればよいのです。
銀行員の商品説明にしっかりと耳を傾け、

「これまでの商品とはどこが違うんですか?……なるほど、保証料が少し安いのですね。それはいいですね。今のところは資金繰りに余裕があるので融資は必要ありませんが、必要になったときはぜひ検討させてもらいます」

などといえば、銀行員も悪い気はしません。

新商品への乗り換えは避けるべき

注意したいのが、新商品への乗り換えです。
新商品のセールスを受けたところ、すでに借りている保証付融資よりも条件が良い場合があります。例えば、少し金利が安いといったメリットです。
コスト意識の高い経営者は、「せっかくセールスしてくれているし、既存の保証付融資から新商品に乗り換えたい」と考える人もいると思います。

しかし、このような考え方は銀行員に嫌われます。既に解説した通り、銀行の目的は保証付融資による貸付額を増やすこと、低リスクで金利を稼げる融資を増やすことです。
現在の保証付融資3,000万円を、新商品での保証付融資3,000万円に借り換えても、銀行の融資額は一切変わらず、何もメリットはありません。むしろ、事務手続きや審査に手間がかかるだけ損な取引です。
新規融資を目標にセールスを仕掛けたところ、それに乗っかられて、ただただ面倒くさいだけの結果に終わるのですから、銀行の心象は確実に悪くなります。
銀行の心象を損ない、今後の資金調達に支障を来すことに比べると、金利や保証料が少し安くなる程度のメリットは取るに足りません。

まとめ

銀行と信用保証協会は、タイアップ商品を開発することがあります。そのような新商品は、保証付融資の貸付額を増やすことにつながるため、銀行の方針としてセールスが盛んに行われます。
しかし、タイアップ商品にどれほどのメリットがあるかについては疑問です。特に、信用保証協会の保証枠を消費することを考えると、簡単に受け入れるべきではありません。
信用保証協会をしっかり活用していくためにも、セールスにはうまく対応してください。

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