手形割引

手形取引が多い会社は資金繰り改善の余地あり!その理由と具体的な方法

 資金繰りが苦しいと悩んでいる方は、自社の決済手段を確認してみてください。もし、手形取引の割合が大きい会社では、手形が資金繰りを圧迫している可能性があります。
 この場合、決済手段を改めるだけで、資金繰りの大幅な改善が可能です。
 本稿では、手形取引が資金繰りに与える影響と、具体的な改善の考え方を解説します。

決済手段が資金繰りに与える影響とは

 取引先との売買では様々な条件を設定しますが、資金繰りにとって重要なのは売上代金の決済日、決済手段などの取引条件です。
 自社にとって有利な取引条件とは、

  • 売上代金の支払いが早いこと
  • 手形ではなく現金によって支払われること

などです。これにより、売上を短期間で回収でき、回収までの債権管理の手間を省くことができるため、資金繰りに良い影響をもたらします。
 自社の資金繰りにできるだけ有利な条件を設定すべきですが、そのような条件は取引先にとっては不利な条件となります。また、自社は売り手であり、買い手である取引先よりも立場が弱いことも多く、自社の都合だけで契約を結ぼうとしてもうまくいきません。
 自社に有利な条件を引き出していくには、知識が重要です。様々な条件を考え、取引先もメリットが得られるように工夫することによって、交渉をうまくまとめられる可能性が高まります。

ベストな決済手段とは

 色々な知識の中でも、特に役立つのが取引と決済に関する知識です。
 一般的な取引方法には、現金取引、掛取引、手形取引があります。
 現金取引は、商品の納入と同時に現金を受け取る形態です。小売業など、商品やサービスを消費者に直接販売する業種がこれにあたります。販売から回収までのタイムラグがないため、資金繰りはかなりラクであるといえます。
 掛取引は、掛け売りによって売上を一時的に売掛金の形で留保し、後日現金を受け取るものです。掛取引も、手形ではなく現金で回収(期日現金払い)するため、現金取引に含まれることも多いのですが、混乱を防ぐためにここでは「掛取引」として独立させて解説します。
 手形取引は、取引先が振り出した手形を受け取り、後日取り立てることで代金を回収するものです。
 資金繰りへの優劣を比較すると、「現金取引>掛取引>手形取引」となります。一部の業種を除き、ほとんどの会社は掛取引か手形取引を行います。このため、手形で取引している会社は、できるだけ掛取引に移行することによって資金繰り改善が可能です。

手形より売掛金の方が良い理由

 なぜ、手形よりも売掛金の方が資金繰りに有利なのでしょうか。これは、それぞれの特徴を比較すると明らかになります。

1、回収サイト

 最も差が出るのは、回収サイト(回収までの期間)です。一般的に、売掛金は回収サイトが短く、手形は回収サイトが長いです。下請法における回収サイトの規制では、売掛金は最長60日、手形は最長120日が上限となっており、売掛金の方が有利なことは明らかです。
 これまで120日サイトの手形だけで取引していた会社であれば、全てを売掛金に変えることができれば、回収サイトが半減します。他の取り組みは一切せずとも、手形→売掛金と改めるだけで、資金繰りは見違えるほどラクになるといえます。

2、管理コスト・事務コスト

 次に、管理コストや事務コストの点でも手形は不利です。
 取引先から受け取った手形は、満期日まで自社で管理し、保管しておく必要があります。もし、手形を紛失してしまうと売上の回収はできなくなります。紛失リスクは、手形取引のリスクの中でも特に大きなリスクです。しっかりと管理するためにも、管理コストをかける必要があります。
 手形の管理は、紛失防止のためだけではなく、正確な取り立てのためにも欠かせません。手形の取り立ては、満期日の2日後までに行います。取引銀行に提示し、額面金額を取引先の当座預金から回収できる仕組みです。
 もっとも、呈示期間を過ぎても3年間は回収可能ですが、その場合には銀行ではなく取引先に直接回収するのが普通であり、回収に手間がかかります。このようなコストがかかることも、手形取引のデメリットです。
 売掛金であれば、契約で決めておいた支払い期日に取引先が入金する流れとなります。自社で請求書を発行する必要がありますが、支払い期日に自社が取り立てる必要はなく、事務の手間は大幅に削減されます。 
 もちろん、紛失リスクもなく、管理コストも大幅に削減できます。

3、資金調達への活用

 手形や売掛金は、資金化することで資金繰りに活用できます。手形の場合には手形割引、売掛金の場合にはファクタリングを利用するのが一般的です。
 どちらにもメリット・デメリットがあるのですが、総合的に見れば売掛金をファクタリングするほうが資金繰りに役立ちます。
 手形割引は、銀行に依頼できるため手数料が安いのがメリットです。ファクタリングの場合、売掛先に知らせない二社間ファクタリングでは手数料が割高になり、資金調達の効率は低くなります。
 しかし、手形割引は、取引先の経営が悪化して手形が不渡りになった場合、割り引いた手形を買い戻さなければなりません。上記の通り、手形の回収サイトは最長120日であるため、4ヶ月の期間中に取引先の資金繰りが悪化し、不渡りを起こす危険性も考えられます。
 これに対し、ファクタリングは譲渡した売掛金が回収不能に陥っても買い戻さなくてよいケースがほとんどです。また、三社間ファクタリングや、信用力の高い売掛金の二社間ファクタリングであれば手数料は低くなるため、コスト面でのデメリットも限定的です。
 このほか、銀行での手形割引に比べて、ファクタリングの方がスピーディに資金調達できることもメリットです。

手形取引を減らすアイデア

 一昔前に比べて、手形取引は大幅に減少しています。また、政府は2026年までに手形取引を廃止することを目指しています。このため、今後も手形取引は減少していくと考えて良いでしょう。
 とはいえ、現在でも手形の年間交換高は100兆円を上回っており、手形と全く無縁になるには時間がかかりそうです。
 上記の通り、資金繰り改善のためには手形取引を避け、できるだけ売掛金で回収するのが望ましいです。
 手形取引を減らしていくには、コツがあります。

切り替えは徐々に

 まず、手形から売掛金へ一度に切り替えようとするのではなく、徐々に切り替えるのがポイントです。
 例えば、現在、120日サイトで手形取引をしている取引先があったとして、それをいきなり「今後は全て売掛金で」とお願いするのは無理があるでしょう。
売掛金の回収サイトは最長60日です。急に切り替えた場合、取引先の支払いサイクルが急激に短くなり、資金繰りが悪化してしまいます。このような要求は、とても受け入れられるものではありません。
 そこで、まずは「支払いの50%を売掛金で」といった提案をしてみるのです。この場合、回収サイトは平均で75%の短縮となります。取引先の資金繰りが苦しくなるのは変わりませんが、全てを売掛金にしてほしいと頼むよりも受け入れやすいはずです。

資金繰り改善のメリットを考える

 もちろん、これだけでは取引先にメリットがなく、成り立たない可能性が高いです。そこで、手形から売掛金に切り替える程度に応じて、販売する商品を値引きするなどの条件を加えます。
 双方にメリットのある条件で交渉すれば、交渉が成立しやすくなります。
 値引きには抵抗があるかもしれません。しかし、値引きのデメリットに比べて、資金繰り改善のメリットの方が遥かに大きいと考えるべきです。
 回収サイトを短縮して資金繰りを改善すれば、資金不足が緩和され、資金繰りショートのリスクが下がります。つまり、倒産の危険が遠ざかるのです。販売価格を維持しても、資金繰りが悪いために黒字倒産すれば元も子もありません。
 また、軽微な値下げによって交渉していくのですから、値下げした部分は、業務効率化やコスト削減といった社内の取り組みで十分にカバーできます。回収サイトの短縮は、取引先との交渉次第であり、社内の取り組みだけではどうにもなりません。
 さらに、手形取引が10の状態から、掛取引が1でも2でも含まれた状態にしていくことにも意味があります。0を1にするのは大変ですが、1を2に、2を4に増やしていくのは比較的容易です。今後、手形取引が縮小していく流れを受けて、取引先が切り替えていくきっかけにもなります。
 このように考えると、価格を維持して資金繰りの悪さを放置しておくよりも、値下げをカードに交渉して資金繰りを改善したほうが、遥かにメリットが大きいことが分かるでしょう。

まとめ

 本稿では、決済手段によって資金繰りへの影響が違うこと、決済手段を見直すことで資金繰りを改善できることを解説しました。
 近年では手形取引が少なくなっていますが、業種によってはまだまだ手形取引が多いです。手形取引が多い会社は、資金繰りが苦しいことでしょう。逆に言えば、それを掛取引へと切り替えていくことで、資金繰りは容易に改善するともいえます。
 ただし、手形取引から掛取引に切り替える際には、取引先との交渉が必要です。また、手形から売掛金に切り替えることにより、貸し倒れリスクが高まり、資金繰りが悪化するケースもあります。
 決済手段の見直しによって資金繰り改善を図る場合には、まずは専門家への相談をおすすめします。資金繰り改善に強いコンサルタントに依頼し、着実に改善していきましょう。

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