資金繰り改善

資金繰り悪化の遠因は?慢性的な悪化要因は8つ

 資金繰りが悪化する原因は複数あり、特定の方法によって悪化するというものでもありません。複数の原因が絡み合って、深刻な悪化に至ることも多いです。
 しかし、資金繰りの悪化要因を慢性的なものと突発的なものに分けることはできます。これから資金繰り改善に取り組んでいく会社では、慢性的な悪化要因を取り除いていくことが大切です。
 本稿では、資金繰りショートの遠因となる、慢性的な悪化要因を8つ紹介します。

資金繰り悪化には二通りある

一口に「資金繰りが悪化する」といっても、悪化の程度や深刻度は様々です。このため、資金繰りをコントロールしていくためには、

  • 資金繰りショートの遠因になる、慢性的な悪化要因
  • 資金繰りショートの決め手となる、突発的な悪化要因

を区別して考えることが重要です。
 特に重要なのは、慢性的な悪化要因です。これを日常的に取り除くことにより、資金繰りショートを遠ざけ、資金繰り改善を進めていくことができます。逆に、これを無視していると、資金繰りが徐々に悪化していき、いずれ立て直し困難な状況に陥っていきます。
 慢性的な悪化要因を取り除き、資金繰りを良好に保っておけば、財務基盤の強化も可能です。財務基盤が強固であれば、突発的な悪化要因にも耐えられます。
 したがって、資金繰り悪化の遠因を知り、日々の資金繰り改善に活かしていくことが重要です。

慢性的な悪化要因

 では、慢性的な悪化要因にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的な8つの悪化要因を見ていきましょう。

1.売上の悪化

 会社の儲けが売上に含まれている以上、売上があがらなければ経営は成り立ちません。
 もちろん、売上が拡大すれば資金繰りがラクになるというものではなく、売上の急拡大が資金繰りショートの遠因になることもあります。
 しかし、売上の悪化は、売上の急拡大以上に資金繰りを悪化させます。入ってくるお金が減少すれば、資金繰りは苦しくなっていくのです。

2.利益の減少

 売上を維持している、あるいは売上がほどよく伸びているからといって、安心はできません。重要なのは、売上によって儲けを確保することであって、利益率の低下によって儲けが減少すれば、資金繰りは苦しくなっていきます。
 売上拡大を目指した結果、利益率の低下を招き、資金繰りショートを招く会社も多いです。売上を維持・拡大していくと同時に、コスト削減によって利益率を高めていくことが欠かせません。
 長期的な資金繰りから考えるならば、売上よりも利益のほうが重要といえます。

3.赤字の累積

 一時的な赤字であれば、資金繰りを続けることができます。しかし、赤字は利益の留保や借入金などによって賄う必要があり、手元資金の減少につながります。
 健全な資金繰りに必要なのは、なんといっても手元の現金です。手元資金の減少を招くという意味において、赤字は抜き差しならない悪化要因といえます。
 何らかの事情によって赤字に転落した場合には、赤字の累積を避けることが重要です。赤字が長期化する場合には、赤字額の縮小に努め、できるだけ早く黒字転換しなければ、資金繰りショートの危険性が高まります。 

4.売上回収のトラブル

 売掛先の経営悪化により、売掛金の回収が遅れることがあります。
 そもそも売掛金は、売掛先の支払いを待っている状態であり、言い換えるならば自社が支払いを立て替えている状態です。回収するまでは、利益や原価部分の資金は活用できません。当然、回収が早いほど資金繰りが改善します。
逆に、回収に遅延が発生すると、資金繰りの悪化要因となります。 

5.不良在庫の増加

 不良在庫が増加する、つまり売上にならない商品が増加していくことにより、資金繰りが悪化するケースは非常に多いです。
 不良在庫として保管されている商品には、仕入れコストがかかっています。倉庫に眠ったままの状態では、仕入れコストを売上として回収できません。入ってくるべきお金が入ってこないのですから、売上回収の遅延と同じように資金繰りを悪化させます。
 また、在庫として保管している期間が長期化するほど、劣化や陳腐化の影響を受け、商品価値は目減りしていきます。倉庫料などの管理コストもかかります。
 この意味において、不良在庫の増加は、不良債権の増加以上に資金繰りを悪化させるといえます。

6.設備への過剰投資

 ほとんどの業種では設備投資を行いますが、設備投資の影響度は業種によってかなり異なります。
 例えば製造業では、売上増加のためには設備投資が欠かせません。設備の修繕や更新によって、原材料のロスや不良品の発生を減らせば、利益率の低下を防ぐことにも繋がります。
 しかし、設備投資が過剰になれば、資金繰りは圧迫されます。設備投資によって見込んでいた成果が得られず、思い通りに稼働しない状況になれば、設備に投資した資金の一部を殺してしまったも同然です。
 過剰に投資した部分を資金繰りに回していればよかったのですが、後の祭りです。間違いなく資金繰りの悪化要因となります。
 

7.仕入債務の増加

 仕入れた商品をしっかり販売し、売上につなげ、支払いも確実にできていれば資金繰りはうまく回っていきます。しかし、資金繰りが苦しくなり、支払いが溜まっていくと資金繰りは深刻な状況に陥ります。
 資金繰りが悪化しているからこそ、仕入債務が溜まっていくのです。仕入先は貸し倒れリスクを警戒し、支払サイトの短縮を求める、単価を引き上げる、現金払いを求めるなどの対応に出てきます。
 このような対応を受けると、仕入れによって資金繰りが圧迫され、仕入れが困難になります。しかし、仕入れができなければ売上もあがりません。
 仕入債務について安易に考えていると、資金繰りを急激に悪化させることにもなりかねません。仕入債務の推移は、シビアに見ておく必要があります。

8.借入金の増加

 会社が順調であれば、銀行からの借入れも容易です。経営の多角化、新規店舗の開業、新規の工場設立など、多額の借り入れが必要になった場合にも協力してくれるでしょう。
 しかし、借入金が増加すれば返済負担は大きくなり、資金繰りが厳しくなっていきます。事業拡大がうまく行けば、返済負担の増加を売上・利益の増加によってカバーできるため問題ありませんが、事業拡大がうまくいかなかった場合には深刻な事態に至ります。
 資金繰りに必要な資金の調達は、銀行融資を軸にするべきであり、借入れ自体は悪いことではありません。しかし、資金繰りへの影響をしっかりと考えた上で借り入れなければ、資金繰り悪化は避けられません。

突発的な事態が起きると倒産の可能性もある

 以上のように、資金繰りショートの遠因、慢性的な悪化要因には色々なものがあります。これらの悪化要因を取り除いていくことが、資金繰りの維持・改善には欠かせません。
 慢性的な悪化要因に真剣に取り組まず、行き当たりばったりの資金繰りを続けていくと、突発的な事態によって倒産に追い込まれる危険があります。
 突発的な事態とは、

  • 大口の取引先が倒産し、多額の売掛金が回収不能になる
  • 災害によって多額の損失が発生する
  • 横領など、従業員による多額の使い込みが発覚する
  • 追加の借入れに失敗する
  • 手形の不渡りを起こす
  • 仕入先から取引の縮小や停止を求められる
  • などです。資金繰りが悪く、手元資金がギリギリの会社がこのような事態に見舞われてしまえば、倒産は避けられないでしょう。
     倒産に至れば、裁判所に申し立てて破産宣告をしてもらい、会社の財産を清算し、債権者に支払います。ただし、各債権者が受け取れるのは、本来の債権の数%に過ぎません。各債権者に十分な保証ができるだけの資産があれば、そもそも倒産することもありません。
     もちろん、倒産以外にも道はあります。会社更生法や民事再生法の適用によって、会社の再建を目指すことも可能です。しかし、これらの場合にも債権者は債権を放棄せざるを得ません。
     このように、資金繰りショートを引き起こして倒産や更生に至れば、債権者に損害を与えることとなります。当然、恨みを買うことになるでしょう。
     その後も人生は続くのです。資金繰りに失敗し、不幸な人生に陥らないためにも、普段から資金繰りの維持・改善に取り組んでいくことが重要です。

    まとめ

     本稿では、資金繰りショートの遠因となる慢性的な悪化要因を8つ解説しました。資金繰りが苦しいと感じているならば、これらのシグナルをすぐに見出せるはずです。
     もちろん、慢性的な悪化要因が分かっても改善方法が分からず、やむを得ず放置している会社も多いです。そのような会社は、取り返しのつかない状況に陥る前に、資金繰り改善に取り掛かるべきです。
     改善方法が分からなければ、コンサルタントに協力を依頼するのが良いでしょう。専門家のアドバイスを受けながら、着実に取り組んでいくことをおすすめします。

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