資金繰り改善

資金繰り表はどう作る?中小企業向け・資金繰り表作成の手引き

資金繰り表とは

資金繰りとは、入金と出金がうまくかみあい、お金がスムーズに流れるようにコントロールすることです。そのためには資金繰り表を作成し、お金の流れを具体的に把握することが欠かせません。
したがって、資金繰りの管理に悩んでいる中小企業経営者は、まず資金繰り表を作るところからスタートする必要があります。
資金繰りの構成要素を大別すると、

  • 残高1(現時点で手元に残っているお金)
  • 入金(入ってくるお金)
  • 出金(出ていくお金)
  • 残高2(明日以降に繰り越されるお金)

です。1ヶ月間の資金繰りならば、

  1. 今月(月初時点)、どれくらいのお金があって、
  2. どこでどれくらいのお金が入ってきて、
  3. どこでどれくらいのお金が出ていって、
  4. 来月、どれくらいのお金を繰り越せるのか

という流れで考えます。

この考え方によって資金繰り表を作成すると、以下のようなメリットが得られます。

現在・過去・未来を把握できる

資金繰り表の大きな特徴は、過去・現在・未来の情報が盛り込まれていることです。

会社の財務状況を知るための資料に決算書と試算表がありますが、決算書と試算表は過去の情報をまとめたものです。試算表は現在にかなり近いのですが、実績をまとめた資料である以上、過去の情報といえます。

過去の情報も、将来を予測する手掛かりとなります。「だいたいこれくらいのタイミングで資金調達が必要になるだろう」といった見通しを立てることは可能です。
しかし、過去の情報だけでは具体性に欠けます。過去の一点で考えるのではなく、過去・現在・未来の線で考えることが大切です。
過去から現在、現在から未来の流れを考えて資金繰り表を作れば、

「〇月の経常収支がマイナスになる。月初現預金を上回るマイナスだから、これでは資金繰りがショートしてしまう。早めに銀行融資を進めなければ・・・」

といった具体的な方針を立てることができます。

銀行対策に使える

資金繰り表は、銀行対策にも効果的です。

資金繰りの予定を立てると、資金不足になる時期が分かるだけではなく、どのような理由で資金不足になるのかが分かり、資金使途も明確になります。
借り入れた後の入金・出金の予定も計画しているため、どのように返済していくか、見通しをつけることができます。
また、資金繰り表にはあらゆる資金調達計画が盛り込まれています。複数行から融資を受ける場合には、どこから、どれくらいの融資を受けるかが分かります。

銀行が融資を検討する際には、稟議書を作ります。稟議書とは、融資したお金を何に使い、どのように返済し、自行にはどのようなメリットがあるのかをまとめた銀行内資料です。
銀行員は多忙であり、多くの融資案件を抱えています。稟議のために必要な情報をスムーズにやり取りしたいと考えており、経営者が情報を出し渋ってやり取りが滞ることを嫌います。
このため、資金繰り表を提出し、しっかり説明した上で融資を申し入れておくと、

  • 資金使途に問題ないことがはっきりしている
  • 返済予定にも問題ない
  • 他行の動きが判断材料になる(他行が積極融資していれば安心して融資できる、自行の融資シェアを伸ばすチャンスにしたいなど)

など、銀行員が欲しがっている情報を的確に伝えることができ、稟議がスムーズになります。
資金繰り表をしっかり作っている会社と、作っていない会社とでは資金調達に大きな差が出ることは間違いありません。

資金繰り表作成は難しくない!

多くのメリットがある資金繰り表ですが、ほとんどの経営者は作っていません。主な理由は、会計の知識に自信がなく、資金繰り表の作成に大変な手間がかかるだろうと思い込んでいるためです。

資金繰り表作成を税理士に依頼している会社もありますが、少数派です。そもそも資金繰りが苦しいため、税理士報酬を抑えるために必要最低限の付き合い(記帳代行や決算書・試算表の作成など)しかせず、資金繰り表の作成を依頼しても断られるケースがよく見られます。
資金繰り表の作成は、決して難しいものではありません。しかし、収支を詳細に把握して資金繰り表に当てはめていく必要があり、作成には手間がかかります。このため、税理士は資金繰り表の作成を敬遠する傾向があるのです。

簡単に考えよう

資金繰り表の作成は大変だ、ハードルが高いと感じている人も、見方・考え方を少し変えるだけでハードルがグッと下がります。

企業財務における資金繰り表、という位置づけで考えると難しく見え、高度な会計の知識を求められる気もするでしょう。
しかし、資金繰り表の作成に会計の知識は必要ありません。基本的には、子どものころにつけたお小遣い帳や、主婦がつけている家計簿と何ら変わりません。
子どもや主婦に高度な会計の知識を求めることはできませんが、お小遣い帳や家計簿はしっかりと機能しており、お小遣いや家計の把握に役立っています。

資金繰り表の方がやや難しい点といえば、項目が多いことです。お小遣いや家計に比べて、会社の方が入金・出金の種類が増えてしまうのは致し方ありません。
とはいえ、資金繰り表もお小遣い帳や家計簿と同じように、

残金+入金-出金=残高

を繰り返すだけのことです。この繰り返しによって、お金の流れが正確に記録され、正確な残高を常に把握でき、将来の予定も立てられるのです。

将来の資金繰り予定も難しくない

また、将来の資金繰り予定を立てる考え方も変わりません。
個人の家計で、1年以内に100万円貯める目標を立てた場合には、1年間の生活費+100万円を稼ぐ必要があります。生活費が200万円ならば、1年間で300万円稼ぐという目標を設定します。
この考え方は、資金繰り表にそのまま当てはまります。すなわち、

  • 1年後に、月商3ヶ月分(3,000万円)の手元資金を確保したい
  • 1年間の総経費は1億800万円(経費率90%)である⇒1年間で1億3,800万円稼ぐ必要がある

という流れを設定し、目標に合わせて資金繰り予定を立て、コントロールしていくのです。
イレギュラーな出費がなく、月商1,000万円を順調に稼げた場合、1年後に手元に残る現金は1,200万円です。目標には1,800万円届きません。そこで、

  • コスト削減でカバーする→経費率を75%まで下げる必要があり困難
  • 月商2ヶ月分の確保に目標を下げ、コスト削減に取り組む→経費率を約83%に下げる必要があるが、会社によっては実現可能
  • 利益1,500万円の留保と、1,500万円の銀行融資で月商3ヶ月分を確保する→経費率を87.5%に下げ、銀行融資を受けられれば目標を達成できる

など色々な方法を考え、調整していきます。

このように考えてみると、資金繰り表の作成はそれほど難しくないと思えるのではないでしょうか。

資金繰り表作成の作り方

上記の考え方を踏まえて、ここからは資金繰り表作成のより詳しい手順を見ていきましょう。

1、資金繰り表のひな形を準備する

まずは、資金繰り表のひな形を準備しましょう。これを準備しておくと、資金繰り表の項目を事前に知ることができ、資金繰り表作成に必要な情報を集めやすくなります。

資金繰り表のひな形は、「資金繰り表 テンプレート」などで検索すると、ひな形のエクセルファイルを提供しているホームページがいくつも見つかります。

上位表示されるホームページのものであれば、どれを使っても問題ないでしょう。いくつか見比べてみて、自社に会いそうなものを選べばよいと思います。

2、収支を把握する

お小遣い表・家計簿・資金繰り表のいずれにも共通することですが、これらの資料を作成するためには、収支を把握することが第一歩となります。
資金繰り表は、お金の動きを掴むためのものです。収支の把握が不十分であれば、お金の動きを正確に掴むことができず、経営判断を誤る原因にもなりかねません。

まずは、1ヶ月間の収支を全て洗い出し、整理し、ダウンロードした資金繰り表のひな形に当てはめていきましょう。

収支を把握するために必要な資料は、

  • 取引口座の通帳:売上(入金)と支払い(入金)の日時と金額、現時点での残高を把握する
  • 現金出納帳:通帳に記載されない入出金を把握する
  • その他の明細書:自動引き落としの経費のうち、通帳の情報では細かい内訳を把握することができないもの(クレジットカードやリースの支払いなど)は、明細書によって把握する

などです。

ただし、これらの資料には未払いの支払いが計上されないため注意が必要です。これを見落としていると、どのように資金繰りを改善すれば未払い分を解消できるか、という視点で方針を立てることができません。

3、支出を仕分ける

2で把握した支出は、変動費と固定費に分けることができます。原価支払は変動費、販売管理費は固定費と考えてください。
資金繰りがうまくいかない会社では、変動費と固定費を分けることなく、支出としてまとめて計算していることが多いです。しかし、売上によって変わる変動費と、売上の影響を受けない固定費は全く性質が異なる支出であるため、混同してしまうと正しい原価率が分からなくなるといった問題が生じます。

2で把握した支出を変動費と固定費に仕分けたら、資金繰り表に記入していきます。
固定費は売上の影響を受けず、基本的に一定しているため、半年~1年先まで同じ数値を記入しておきます。変動費は、その時々の状況によって変動するため、予測をもとに記入します。

4、売上区分を作成する

資金繰り表には、入金(売上の回収)も記入していきます。すでに回収期日が決定している売掛金は回収予定の月に記入し、まだ確定していない売上は、売掛金の発生時期と回収サイトから回収時期を予測して記入します。

このとき、売上区分をいくつか作成するのがポイントです。会社の売上は複数のセクターから生じるのが普通であり、セクターごとに取り扱う商品、売上総額、利益率、回収条件などが異なります。全てをひとまとめに計上すれば、事業の実態が見えにくくなってしまいます。

売上区分は、取引先ごとに分ける、店舗ごとに分ける、工場ごとに分ける、事業ごとに分けるなど、色々な方法が考えられます。どのような区分にすれば自社の実態が分かりやすくなるかを基準として、自社に適した売上区分を作りましょう。

これも、分かりやすい資金繰り表を作るための重要なポイントです。

作成した資金繰り表をチェックしよう

収支を把握し、支出を変動費と固定費に分け、売上区分ごとに売上予測を立て、これらを記入していくと資金繰り表のひな形は全て埋まります。
果たしてこれでいいのだろうか、という不安もあると思います。しかし、資金繰り表を作成していない状態を抜け出したのですから、大きな前進に違いありません。

ここからは、作成した資金繰り表をチェックし、資金繰り改善の道筋を模索していきます。

経常収支はプラス?マイナス?

まず、経常収支がプラスになっているか、マイナスになっているかをチェックしましょう。
経常収支とは、本業の事業活動で生じる収入と支出のことです。例えば、事業活動のために仕入れた商品代金の支払いは経常支出、仕入れた商品を売ることで得た売上は経常収入にあたります。

作成した資金繰り表を見ると、経常収支が毎月計算されているはずです。
季節性の支出増加や突発的な売掛金の焦げ付きなどによって、経常収支がマイナスになる月もあると思います。毎月プラスになっているのが理想的ですが、なかなかそうはいきません。
重要なのは、1年間を通じての経常収支です。月次資金繰り表の一番右に「当期累計」「合計」などと表記されている欄です。

月によってマイナスになっていても、当期累計がプラスであれば特に問題ありません。月ごとのマイナスは、月初現預金でカバーできれば資金繰りは回ります。
しかし、当期累計ベースで経常収支がマイナスであれば、1年間の事業活動の結果として入ってくるお金よりも出ていくお金が多い、つまり資金繰りがうまくいっていないことを意味します。

資金繰り改善を模索する

当期累計の経常収支がマイナスになっている場合、資金繰りが危険な状態であるため、早急に改善する必要があります。具体的には、

  • 回収サイトが長く支払いサイトが短い→取引先と交渉し、回収サイトの短縮と支払いサイトの延長を図る
  • 在庫の仕入れが多すぎる→仕入れと売上のバランスをとる
  • 損益が赤字である→原価の引き下げや固定費の見直しなどによりって利益率の向上を図る

などの対策を講じましょう。

借入返済額をチェックする

例外的に、経常収支が当期累計でプラスになっていても、注意すべき場合があります。それは、経常収支の月間のマイナス分を、月初現預金でカバーできない場合です。

これは、その月に資金不足に陥ることを意味します。経常収支のマイナス分が月初現預金を上回る月があれば、銀行から融資を受けて資金繰りショートを防ぐ必要があります。

このとき意識したいのは、借入返済額です。既に借りているお金と、これから借りる予定のお金を合わせたときの銀行返済額は、経常収支の70%以下に抑えるのが理想的です。

銀行返済額が経常収支の70%を上回ると、手元に資金を残すことが難しくなります。
資金繰り改善の目的は、資金繰りをラクにすることです。手元に資金が残るように資金繰りをコントロールし、多くの手元資金を確保し、資金繰りショートの危険を遠ざけることです。
資金繰り改善の結果として、手元資金が潤沢になることを目指していくのですから、銀行返済に圧迫されて手元資金が増えない状況は避けなければなりません。

プロの目でチェックする

資金繰り表を作成し、経営者自らチェックしていくことが大切ですが、中小企業の経営者は基本的に忙しく、なかなか時間が取れない人も多いことでしょう。

また、資金繰り表を初めて作る場合、完成した資金繰り表に間違いはないか、問題点の見落としはないかといった不安もつきものです。

さらに、経常収支が当期累計でマイナスになっており、資金繰りの見直しを迫られているものの、見直しがうまくいかないケースも少なくありません。

そのような場合には、資金繰りのプロであるコンサルタントなどに相談するのがおすすめです。コンサルタントに依頼することにより、

  • 資金繰り表の間違いを指摘してくれる
  • 資金繰り表を見やすく改善してくれる
  • 資金繰り表から把握できる問題を全て洗い出してくれる
  • 問題解決のための具体的な方法を教えてくれる
  • 問題解決期間中、新たな問題が発生しないようアドバイスしてくれる

といった、資金繰りのトータルサポートを受けることができます。

資金繰り表作成を機会に、信頼できるコンサルタントを見つけ、パートナーとして長期的に付き合っていくこともおすすめです。

まとめ

資金繰り表のテンプレートを取得し、本稿の流れにそって資金繰り表を作成していけば、会計の知識がなくとも、全くの未経験であっても、それなりに満足のいく資金繰り表が作れることと思います。

ただし、会社ごとにお金の流れは異なるため、全て一律に(マニュアル的に)解説することはできません。本稿の流れに沿いつつ、自社の状況や業種ごとの習慣に応じて資金繰り表を作成していくべきです。

どうしても作成に行き詰った場合には、そこで投げ出してしまうのではなく、プロのコンサルティングを受けることをおすすめします。
自力で作成するにせよ、プロのサポートを受けるにせよ、最終目標である「資金繰り改善」を見据えて取り組んでいきましょう。

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