資金繰り改善

利益が出ているのに資金繰りが苦しい!発生主義の問題点とは?

利益が出ているのにお金が足りない・・・このような悩みを抱いている経営者は、利益計算と資金繰り計算の違いが曖昧になっている可能性が高いです。

この悩みを解決するには、「発生主義」という会計ルールの特殊性を理解し、問題点を払しょくすることが欠かせません。これにより、資金繰り改善がスムーズになります。

発生主義とは?その問題点とは?資金繰り改善はどうすればいい?この記事で全てお答えします。

業績評価と発生主義

会社の業績を評価するためには、利益を計算する必要があります。このとき、会計ルールでは、実際のお金の動きを考慮しないのが特徴です。例えば、商品を取引先に納入し、売掛金が発生したタイミングで売上を計上するのです。
このような考え方を「発生主義(または実現主義)」といいます。

なぜ発生主義なのか?

お金の動きをわざわざ無視するルールがまかり通ることに、疑問を感じる人も多いことでしょう。しかし、これは業績評価のためには仕方のないことです。

会社あるいは業種によって、決済の方法や時期が異なります。例えば、現金取引の業種と掛取引の業種では、決済方法と時期が全く異なります。現金取引は現金で即時に決済しますが、掛取引は売掛債権として一旦保留され、後日決済します。

また、決済方法が同じ場合にも、時期はそれぞれ異なります。同業種であり、どちらも掛取引を行うA社とB社では、

  • A社の売掛金は1ヶ月後に回収
  • B社の売掛金は2ヶ月後に回収

といった違いがあります。

さらには、自社の中だけでも、売掛先との契約条件によって決済方法・時期が異なります。例えば、

  • C社の売掛金は全額を1ヶ月後に回収
  • D社の売掛金は全額を2ヶ月後に回収
  • E社は一部を現金で即時回収、残りを売掛金として2ヶ月後に回収

といった違いです。

このように、決済の方法や時期は千差万別です。もし、回収を待ってから売上を計上するならば、決済方法・時期を操作することで業績を変えることも可能となり、会社の業績比較ができなくなったり、公平な課税ができなくなったり、様々な問題が生じます。

したがって、業績評価の際には、お金の流れを無視する欠点があるとしても、発生主義によって評価せざるを得ないのです。

現金主義に切り替える

発生主義の問題は、売上の計上と売掛金の回収がずれることです。これにより、帳簿の上では利益が出ていても、実際には未回収であるために、資金不足に陥ることがあります。

この問題を避けるために重要なのが資金繰りです。資金繰りは、実際のお金の流れを基準とし、発生主義に対して「現金主義」と呼ばれます。

資金繰りを改善するためには、まずは発生主義によって資金繰りを考えることを改め、あくまでも現金主義によって考える癖をつけなければなりません。

現金主義で考える場合、発生主義によって計上された未回収の売上を考慮せず、あくまでも手元に残っているお金・入ってきたお金によって資金繰りを考えます。

未回収・不確実・架空のお金を中心とする考え方から、回収済み・確実・現実のお金を中心とする考え方へと切り替えるのです。

設備投資と発生主義

このような思考の切り替えは、発生主義で考えることに慣れている人にとっては、想像以上にややこしく感じられ、混乱してしまうことが少なくありません。

特に混乱しやすいのが、設備投資の考え方です。設備投資における発生主義と現金主義の違いが理解できれば、資金繰りにおける発生主義のまずさ、現金主義の重要性がよくわかり、考え方の切り替えがスムーズになります。

ややこしい減価償却

例えば、製造のための機械を購入したと仮定します。銀行から設備資金の融資を受け、借入金によって機械を一括で購入した場合、実際の資金繰りでは購入額分のお金が一括で動きます。

しかし、会計ルールでは全額が一括で動いたものとはみなしません。設備の耐用年数を通じて、毎年同じ金額を経費として計上していく「減価償却」という仕組みがあるためです。
減価償却の仕組みがイマイチわからないと思っている人のほとんどは、現実的な現金の動きと、発生主義による会計上の動きで混乱しています。
発生主義では、以下のように考えます。

「機械などの設備は、耐用年数にわたって稼働し、売上をもたらす。売上を生み出すにあたり、毎年の減価償却費相当の費用が発生している」

購入時に動いたお金は考慮せず、機械の購入・稼働に伴う費用が毎年定額で発生しているものと仮定して計上するのです。

混乱する経営者が多い

上記の内容をややこしいと感じる人は、

  • 現金主義では、購入時にまとまったお金が実際に出ていく
  • 発生主義では、購入後、耐用年数に応じて一定のお金が分割で出ていくとみなす

という違いに着目してください。

この違いを曖昧に考え、発生主義と現金主義が絡み合ったまま考えていると、

現金は購入時に一括で出ていった

→利益計算では全額をまとめて損失に計上できない

→利益はあがっても資金が不足する

→購入時の借入金を返済するために資金繰りがさらに圧迫される

といった悩みを抱えることになります。

文字に起こすと、現金主義と発生主義の違いや、資金繰りを現金主義で考えるべき理由が、理解しやすいと思います。
しかし、実際の経営においては、発生主義によって混乱してしまう経営者が非常に多いです。

「利益が出ているのにお金が足りない」、そして「資金繰りがいつも厳しい」と感じているならば、多かれ少なかれ発生主義による影響を受けている可能性が高いです。

専門家の協力を

発生主義による混乱を取り除かなければ、資金繰りの改善は困難です。資金繰りに追われる状況から抜け出すことはできません。

とはいえ、理解の上では発生主義から現金主義への切り替えができても、実際の経営・資金繰りで現金主義に切り替えることは難しいものです。

これまで発生主義でやってきた会社では、社内システムや従業員の思考が発生主義を基本としているために、うまくいかないのです。

そこで欠かせないのが、コンサルタントの協力を仰ぐことです。資金繰りの専門家からコンサルティングを受けることで、

  • 経営者や資金繰り担当者が、損益計算書(あるいは試算表)と資金繰り表の違い、現金主義に基づく資金繰り管理などについてコーチングを受ける
  • 現在、発生主義によって生じている問題を洗い出し、具体的な改善策を立てていく

といったことが期待できます。

自社だけで資金繰り改善を進めることに不安があるならば、これを機にコンサルタントとの関係を構築していくことをおすすめします。

まとめ

本稿では、利益が出ていても資金繰りが苦しくなる原因である「発生主義」について、詳しく解説しました。発生主義の仕組み、設備投資と減価償却のややこしさ、資金繰りにおける現金主義の重要性などが理解できたことと思います。

資金繰りの改善を進めるためには、発生主義と現金主義の区別を明らかにする必要があります。スムーズな改善を目指し、必要に応じてコンサルタントなどの専門家にも相談してみると良いでしょう。徐々に資金繰りがラクになっていくはずです。

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