資金繰り改善

現金主義vs売上主義①資金繰りを改善したければ現金主義の徹底を!

なぜ現金主義が重要か?

資金繰りが良い会社と悪い会社を比較してみると、経営者の意識・方針に明らかな違いがみられます。それは、資金繰りが良い会社は経営者が現金主義である、ということです。

現金主義の対極にあるのが売上主義です。現金主義では、手元の資金を常に意識しています。一方、売上主義では売上高を常に意識しています。
この意識の違いが、資金繰りに大きな差をもたらします。

現金主義の経営者は、手元資金を強く意識するため、お金の流れに注意を払っています。「とにかく稼ぐ」という攻めの姿勢ではなく、「とにかく資金繰りを健全に回す」という守りの姿勢です。
このような姿勢で取り組むならば、売上主義の経営者に比べて倒産の危険性がはるかに低いです。お金の流れに注意していることから、現金不足を早期に察知して資金調達し、資金繰りショートを未然に防ぐことができるためです。
黒字倒産に陥る可能性が極めて低く、危なげない経営を続けることができます。

また、「とにかく資金繰りを健全に回す」という守りの姿勢がマイナスに働くことはありません。
資金繰りを健全に回すために、お金の流れをしっかり把握している経営者は、自社のどこをどうすれば儲かるかを知っています。
効率の悪いところにお金が投入されていれば、すぐに改めてお金が不足しているところへ回します。無駄なコストを見つけ出し、積極的にカットしていくことも可能です。
このような調整に取り組んでいけば、会社は儲かる体質になっていきます。売上の伸びは緩やかでも、あるいは横這いでも、無駄が少なく利益率が高いためしっかり稼ぐことができるのです。

現金主義ならば、会社にお金を残すことを重視して資金繰りを改善しつつ、同時に業績アップを目指すこともできます。

現金主義の5つの強み

現金主義の強みは色々ありますが、特に強みといえる要素をいくつか見ていきましょう。

与信管理に厳しい

現金主義の経営者は、与信管理を厳しく考えます。与信管理とは、売掛先に対する売掛金の回収と、買掛先に対する買掛金の支払いを管理することです。
販売先に商品を納入して発生した売掛金を回収するまでの期間を「回収サイト」、仕入先から商品を受け取って発生した買掛金を支払うまでの期間を「支払いサイト」といいます。

回収サイトと支払いサイトは資金繰りを大きく左右します。このため、現金主義の経営者は、回収サイトを短く、支払いサイトを長くすることを強く意識し、資金繰り改善につなげます。
簡単に言えば、「資金繰りが良い」とは「売上高の合計と、売上回収の合計が一致している状態」のことです。例えば、売上高が1,000万円、売上回収の合計額も1,000万円であれば、売上をしっかり回収できており、未回収の売掛金の増加を防ぐことができます。この状態を目指すには、回収サイトの短縮に努める必要があります。
一方、支払いサイトはできるだけ長いほうが有利です。例えば、原価合計額が1,000万円、原価支払合計額が800万円であれば、資金繰りに200万円の余裕が生れます。

つまり、回収サイトが短く、支払いサイトが長ければ経常収支がプラスになり、余裕のある状態で資金繰りができるということです。現在、資金繰りが悪い会社でも、回収サイトの短縮と支払いサイトの延長に努めることで、資金繰りを好転させることができます。
そのためにも、現金主義であることが重要です。現金の流れに注意している現金主義の経営者は、

  • 現金が入ってくるのはできるだけ早いほうが良い(回収サイトは短くあるべきだ)
  • 現金が出ていくのはできるだけ遅いほうが良い(支払いサイトは長くあるべきだ)
  • 入ってくるべきタイミングで、入ってくるべき現金が入ってこない状況を避けたい(支払いの遅延が起こらないようにするべきだ)

と考え、しっかりと与信管理を行います。

取引先との交渉もうまい

現金主義の経営者には、取引先との交渉もできる人が多いです。
例えば、契約の際に支払い期日を決めるとき、90日の手形支払いを求められた場合には60日での支払いを、60日を求められた場合には30日を、といったように短縮を交渉していきます。これにより、回収サイトを短くすることができます。
支払いは逆に考えて、支払いまでの期日ができるだけ長くなるように交渉します。これによって支払いサイトを長くします。
取引先としては、このような交渉を受け入れると資金繰りが悪化してしまうため、簡単には受け入れてもらえません。そこで、

  • 支払いの50%を手形にすることを認める代わりに、50%は現金で支払ってもらう
  • 販売価格を下げる代わりに回収サイトを短縮してもらう
  • 仕入れの数量を増やす代わりに支払いサイトを延長してもらう

といった工夫も必要となります。このような工夫と交渉も、現金主義だからこそできることです。

手形や売掛金の活用が上手

現金主義の経営者は、手形や売掛金の活用が上手な人が多いです。
ほとんどの会社では、売上を手形や売掛金の形で受け取っています。手形や売掛金には現金と同等の価値がありますが、支払い期日までは現金として使えません。
ただ支払い期日を待っているならば、資金繰り的に好ましくありません。そもそも、手形や売掛金を保有しているということは、取引先が支払うまでの期間中、取引先の支払代金を無利息で立て替えていることにほかならないのです。

現金主義の経営者は、手形や売掛金など、売上が現金以外の形になっていることを嫌います。その姿勢があるからこそ、

  • 裏書譲渡
  • 手形割引
  • ファクタリング

などを活用します。
取引先から受け取った裏書手形は、第三者に譲渡することで支払いに利用できます。手形を現金のように扱えるのです。
また、受取手形を銀行などで割り引いてもらったり、売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらったりすることも可能です。裏書譲渡では、手元の現金を増やすことはできませんが、手形割引やファクタリングであれば手元資金を増やせます。
ただし、手形割引やファクタリングの場合には手数料がかかり、手数料分だけ額面が目減りするのがデメリットです。このため、現金主義の経営者は、自社の資金繰り状況に合わせて裏書譲渡・手形割引・ファクタリングをうまく使い分けます。

売掛債権を現金のように活用して資金繰りを回していくためにも、現金主義が欠かせません。

固定費のカットがうまい

現金主義の会社の支出を見てみると、固定費と変動費のバランスがとれており、特に固定費の削減に力を入れていることが多いです。

業績が安定しない時期であれば、多くの会社が固定費カットに努めます。これにより、固定費率が変動費率を下回り、利益が少ない月でも支払える状況を整えることができます。
事業が成長していくと、固定費が徐々に上がってきます。さらなる成長を目指すためには商品の数や店舗数などを増やしていく必要があり、固定費の増加は避けられないからです。その結果、固定費率が変動費率を上回るようになります。
固定費が高くなっても、売上が上がっているうちはなんとかなるかもしれません。しかし、売上が永遠に右肩辺りを続けることはなく、いずれ横這いになり、場合によっては低迷期を迎えます。
すると、成長期に膨張した固定費が資金繰りを圧迫し、黒字倒産の危険性も高まります。

現金主義の経営者は、この状況を放置しておくことはありません。固定費が売上に関係ないことを知っているため、売上の増加に伴う固定費の上昇をできるだけ抑えるように、固定費カットに努めます。
これにより、売上が横這いになったとしても、固定費を下げているため十分な利益を確保でき、資金繰りも比較的ラクな状態に保つことができます。
現金主義だからこそ、支出の内訳をしっかりと把握しています。資金繰りを圧迫している固定費を特定し、優先的にカットすることも容易なのです。

在庫管理に手を抜かない

最後に、現金主義の経営者は在庫管理を徹底しています。
多くの中小企業では、在庫管理をそれほど徹底していないのが普通です。在庫管理に力を入れるとしても、売上が落ちたり、資金繰りが危機的状況に陥ったりしてから、初めて在庫管理に取り組みます。

現金主義の経営者は、お金の流れをしっかり掴むために資金繰り表を作っています。資金繰り表を作成すれば、自社に適切な在庫の量が分かるため、仕入れすぎの状態(過剰在庫)を避けることができます。仕入れる量を減らせば支払いも減り、資金繰りがラクになります。
さらに、最適な在庫量が分かれば、在庫を保管する倉庫の適切なサイズも分かります。必要以上に大きな倉庫を借りていればサイズを小さくしたり、複数の倉庫を借りていれば集約したりすることで、賃借料や光熱費などを大幅に削減することも可能です。

まとめ

本稿では、現金主義の経営者が資金繰りにどのように取り組んでいるかを解説しました。資金繰りが良い状態を目指すには、現金主義で考えることが大切です。
現金主義であれば、無駄を省いて資金繰りを改善できます。浮いたコストで成長を目指すならば、成長の結果として資金繰りが悪化する危険も少ないです。一部をコンサルティング費用に回し、資金繰りのさらなる改善を目指すのも良いでしょう。
現金主義で考えると、資金繰りはどんどんラクになっていきます。売上主義に陥っている経営者は、現金主義で考えることを心がけてみてください。

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