資金調達

法人の資金調達はこれだけある!10種の方法と効果的な使い方を解説

法人の資金調達の基本は融資

これから述べていく通り、資金調達には様々な方法があります。伝統的な方法もあれば、新しく生み出された方法もあります。伝統的な方法が、新しいアイデアによって使いやすくなることもあります。

このうち、法人が利用できる資金調達の王道は融資であると言ってよいでしょう。融資以外の資金調達方法には、

・必要に応じて多額の資金調達が難しい
・安定して資金調達することが難しい

といった問題があり、資金調達の軸にはできないのです。

融資では、多額の資金を持っており、なおかつ貸すことをビジネスとしている銀行などが資金の出し手となります。このため、多額の資金調達が可能であり、自社に信用さえあれば安定して資金を調達できます。

資金を調達する者と、資金を提供する者の根本的な関係を考えるならば、今後様々な資金調達方法が生み出されたとしても、融資こそが資金調達の王道であり続けるでしょう。

最もよい調達方法は銀行融資

融資による資金調達の中でも、最も良い方法は銀行融資です。どのような法人でも、資金調達の際には真っ先に銀行融資を検討すべきです。

銀行の主な収益源は利息です。資金の提供が仕事なのですから、法人と銀行は持ちつ持たれつの関係にあります。

季節性の短期・少額の資金調達から、設備投資や新規事業展開のための長期・多額の資金調達まで、幅広い資金需要に対応しています。

ただし、銀行融資には「借りにくい」という問題があります。銀行は貸し倒れリスクを非常に嫌うため、業績や財務に問題がある法人は融資を受けることが困難です。赤字決算である、繰越損失がある、債務超過であるなどの理由によって、たちまち借りられなくなることも珍しくありません。

保全のために担保や保証を求められるケースも多く、担保がないために借りられない、保証枠が残りわずかであるために必要な額の資金を調達できないといったことも考えられます。

また、全く付き合いのない銀行からの新規融資は基本的に困難です。これは、お互いに未知の取引先であり、信用がないからです。このため、経営内容に問題がない法人でも融資を受けられないケースがしばしばあります。

このほか、審査に時間がかかるため緊急の資金調達に使えないことも問題といえます。

この資金調達がおすすめの法人

銀行融資の借りにくさを踏まえると、あまりよい方法に思えないかもしれません。

しかし、銀行融資は多額の資金調達に利用でき、経営内容が健全であれば安定して資金調達できるのです。経営内容が健全な法人は資金繰りも計画的ですから、銀行融資の審査に時間がかかることも大した問題ではないでしょう。

したがって、銀行融資は

・業績や財務に大きな問題がない法人
・資金繰りに計画性があり、早い段階で銀行融資を進められる法人
・複数の銀行と取引しており、新規の銀行から資金調達する必要がない法人

などにおすすめです。このような法人は銀行融資を受けられるため、基本的には他の資金調達を利用する必要はありません。

銀行融資が無理なら日本政策金融公庫が次善

上記の銀行融資は、民間金融機関からの資金調達を述べたものです。民間金融機関から資金調達できない法人は、日本政策金融公庫から融資を受けるのが次善の策となります。

業績や財務に問題がある法人、銀行との取引が浅い法人などのほか、業歴が浅い法人等に対して、銀行融資はなかなか融資しないものです。これは、銀行から信用を得ていないためです。

特に、業歴が浅い法人は銀行融資に頼ることができません。業歴が浅ければ、継続的に業績・財務が安定していること、あるいは一時期悪かった業績・財務が持ち直していることなどを、まとまった期間の実績によって証明できないからです。

そのような法人に対しては、銀行は貸し倒れリスクを測りかねるため融資を渋ります。

とはいえ、業歴が浅い時期は販路の開拓・顧客の獲得に精一杯というのが普通であり、業績も財務もなかなか安定しません。資金繰りに余裕がなく、資金調達の重要性もかなり大きい時期です。

そこで役立つのが、日本政策金融公庫です。日本政策金融公庫は政府系の金融機関であり、民間金融機関の補完として位置づけられています。このため、民間金融機関で対応できない融資案件でも積極的に対応しています。

もちろん、業歴に関係なく、民間金融機関の融資を受けられずに困っている法人は日本政策金融公庫に相談してみる価値があります。

この資金調達がおすすめの法人

以上の内容から、日本政策金融公庫は、

・業歴が浅い法人
・業歴は長くとも、業績や財務に問題がある法人

など、民間金融機関の融資が受けられずに困っている法人の資金調達におすすめです。

経営再建の切り札・ノンバンク

民間・政府系金融機関のいずれからも資金調達できない法人は、ノンバンクから融資を受けることが考えられます。

ノンバンクとは、銀行のように預金によって調達した資金を融資に回すのではなく、銀行からの借入れや社債発行などによって集めた資金を融資する貸金業者です。

ノンバンクからの資金調達は非常に金利が高いイメージがあるため、利用を渋る法人も多いです。確かに、かつての法律では年利40%程度まで認められており、取り立てにも問題が多かったことから、未だにノンバンクといえば危険なイメージがつきものです。

しかし、法律の改正や過払い利息の返還請求によって、暴利を貪る貸金業者は淘汰されたため、現在ではクリーンになっています。

とはいえ、資金調達額が数百万円程度であること、年利15~20%であることなどから、安易に使うのが危険であることは変わりません。

銀行融資を受けられなかった法人でも比較的容易に融資を受けられる、銀行融資に比べて申し込みから融資実行までの期間がかなり短いといったメリットもあるため、使い方次第といえるでしょう。

この資金調達がおすすめの法人

ノンバンクでの資金調達がおすすめできるのは、

・民間・政府系金融機関のどちらからも融資を断られた法人
・リスケジュール中であり、金融機関からの資金調達が完全に不可能な法人
・ノンバンクから調達すれば経営立て直しが可能である法人
・売掛金の支払い遅延などによって、一時的に資金ショートの危険がある法人

などです。

実際の経営再建でも、まずはリスケジュールによって金融機関への返済を猶予してもらい、ノンバンクで資金調達しながら立て直しを図る流れがよく採られます。「金利が高いノンバンクも使い方次第」とは、主にこのような場合を意味します。

知人から融資を受ける少人数私募債

金融機関やノンバンクからの融資も不可能な場合、知人や親族からの借入れを考える経営者は非常に多いです。実際、資金繰りに行き詰っている法人の約8割では、縁故者からの借入れがあるといわれています。

これは、融資による資金調達の中でも最も危険なものです。

個人から多額の借入れを行うことは難しく、必要資金を十分に調達できないことも考えられます。また、ノンバンクでさえ融資を渋るほど経営が悪化している状況では、知人などから借り入れても焼け石に水ということが多いです。

少額の借入れが全く意味をなさない状況であれば、知人や親族からの借入れは控えたほうがよいでしょう。破産に巻き込むだけになる恐れがあり、そうなればその後の人生に大きなマイナスになってしまいます。

知人や親族からの借入れによって資金調達するならば、今後半年~1年間の資金繰り計画を立て、不足する資金額を正確に把握した上で、必要額をしっかり調達しなければ意味がありません。

ポイントは、知人・親族から経営者が個人的に借りるのではなく、法人が発行する社債によって借りることです。

知人・親族など限られた人から借入れる際には、少人数私募債が役立ちます。貸し手である知人たちは、経営者個人ではなく法人に貸すこと、社債を引き受けるという「投資」の側面を持つ方法によって貸して利息が得られることなどにより、貸すことへの抵抗が和らぎます。

これによって、必要な金額を調達できる可能性が高まります。

この資金調達がおすすめの法人

少人数私募債による資金調達がおすすめなのは、

・金融機関やノンバンクからの融資が受けられない法人
・必要な額を調達できるだけの社債応募者を集められる法人
・社債権者に返済するための計画を立てられる法人

などです。

資産の活用で資金調達

資金調達の方法は融資だけではありません。法人には様々な資産があります。それを活用することによって資金調達が可能です。

資産を使った資金調達を大別すると、

・資産の売却による資金調達
・資産を担保に融資を受ける資金調達

の二種類に分けることができます。それぞれの方法を見ていきましょう。

売掛金を売却するファクタリング

少額の資金を早期に調達したい場合に役立つのがファクタリングです。ファクタリングとは、ファクタリング業者に売掛金を売却する方法です。

売掛金は現金と同じ価値を持っていますが、支払い期日を迎えるまでは売掛金のままであり、現金のように活用することはできません。手元に多額の売掛金があっても、現金がなければ決済できずに黒字倒産に至ります。

手元資金が不足して黒字倒産の危機に陥ったとき、ファクタリングによって売掛金を資金化することで危機を脱することができます。

融資ではないため負債が増加することもありません。流動資産の欄では、ファクタリングした売掛金が現金に置き換わるだけです。銀行などにマイナスイメージを持たれる恐れもありません。

ファクタリングには手数料が必要であり、売却の際には売掛金の額面から手数料分が目減りします。しかし、ファクタリング業者を正しく選べば手数料を抑えることができます。早急に資金を調達して資金ショートを防げるメリットに比べれば、手数料の問題は取るに足らないでしょう。

この資金調達がおすすめの法人

ファクタリングによる資金調達がおすすめなのは、

・急な出費で資金ショートの危険がある法人
・銀行融資を受けられるだけの時間的余裕がない法人
・売掛金がたくさんあるものの回収サイトが長く、資金繰りが厳しい法人

などです。柔軟に利用できるため、法人の資金調達の中でも選択肢になりやすい方法といえます。

受取手形を売却する手形割引

受取手形を所有している法人は、手形割引も検討してみましょう。手形割引は、受取手形を銀行や手形割引事業者に買い取ってもらう方法です。スピーディに資金調達できる方法として知られています。

手形割引事業者によっては、手形割引を「手形信用貸付」と表現したり、「手形を資金化する事業資金融資です」と説明したりすることがあり、「手形割引=手形を担保にした融資」というイメージを持っている人もいます。

しかし、手形割引の定義は「手形の売却」であり、融資ではありません。手形割引によって得た資金が負債に計上されることもなく、売掛債権の手形割引相当額が現金に置き換わります。

売掛金を売却するファクタリングと、受取手形を売却する手形割引の両方を活用すれば、流動資産をうまく使って資金繰りをコントロールすることも可能です。

なお、経産省は2021年2月、2026年を目途に手形を廃止する方針を決めました。したがって近い将来、手形割引による資金調達は使えなくなります。手形割引への依存度が高い法人は、手形割引から他の資金調達へのシフトを徐々に進めておくべきです。

この資金調達がおすすめの法人

手形割引による資金調達がおすすめなのは、

・急な資金調達が必要になった法人
・手元に受取手形がたくさんある法人
・少額の資金をスポットで調達し、資金繰りをコントロールしたい法人

などです。

売ると困る資産はリースバックを

資金繰りが破綻の危険にあるならば、売掛金や手形だけではなく様々な資産の売却を検討してみるべきです。例えば、車両や不動産などを売却すれば、まとまった資金を調達できる可能性があります。

しかし、業務に欠かせない資産を売ってしまうと事業に支障をきたします。売却して資金繰りを一時的にカバーしても、事業が回らなくなり売上に影響が出るならば本末転倒です。

そのような場合には、リースバックの活用がおすすめです。リースバックとは、リース会社などに資産を売却して資金を調達すると同時に、売却した資産をリースする方法です。これにより、売却した資産を手元に残し、事業に使い続けることができます。

リースバックを利用した場合、リース料金の支払いが発生します。したがって、リースバック後に新たに生じる負担も考慮しておくことが大切です。

この資金調達がおすすめの法人

リースバックによる資金調達がおすすめなのは、

・事業に欠かせない資産を売却しなければ資金繰りが破綻する法人

です。

銀行融資を受けられる、有価証券や売掛債権などの資産(売却しても事業に影響がない資産)を売却すれば十分である、といった法人はリースバックを利用する必要はありません。

ABLなら様々な資産を担保に使える

ABLはAsset Based Leadingの略であり、動産・債権担保融資を意味します。その名の通り、不動産や売掛債権だけではなく、在庫や設備などの動産を始めとする様々な資産を担保にして資金調達できるものです。

ABLの基本的なスキームは、

1.資金調達する法人が金融機関にABLをを申し込む
2.外部機関によって担保資産の評価が行う
3.金融機関は評価価格を裏付けとして融資する

というものです。

担保にした資産は手元に残して事業に使うことも可能です。したがって、ABLで担保にした機械を事業で使い続ける、担保にした在庫を販売するといったこともでき、事業に支障をきたさないのが特徴です。

ABLの歴史は古く、19世紀末には存在していたとされます。1990年代以降のアメリカではABLが急速に伸び、今では企業向け融資の20%以上を占めるほどになっています。

これに対し、日本で導入が始まったのは2003年からです。政府主導で進められていますが、未だにABLが市民権を得たという印象はありません。

しかしながら、政府は一貫してABLの普及に取り組んでいるため、今後徐々に普及していく可能性があります。今は縁がなくとも、いずれ利用する機会があるかもしれません。

この資金調達がおすすめの法人

ABLによる資金調達がおすすめなのは、

・在庫などの動産を担保に資金調達したい法人
・資産を売却するのではなく、担保にすることで資金調達したい法人

です。特に、事業の性質上、多くの在庫を長期間保有しなければならない業種では、在庫を担保にしたABLが使いやすいです。

例えば、中古自動車販売業は、多種多様な中古車を在庫として保有していますが、販売までには時間がかかります。中古車は劣化しにくく、適正な担保評価もしやすいためABLに利用しやすいといえます。

その他の資金調達方法

融資や資産の活用による資金調達以外にも、利用できる方法がいくつかあります。

ただし、ここから述べる方法は、

・将来性のある法人や、特定の取り組みを実施している法人しか利用できない
・資金調達に時間や手間がかかる
・安定的な資金調達には不向きである

といった問題があるため、あくまでも補助的なものと考えてください。

資金を「借りる」ではなく「出してもらう」

資金調達といえば融資が真っ先に思い浮かびますが、お金を借りるだけが資金調達ではありません。お金を出してもらう、すなわち「出資」という方法もあります。

出資とは、将来的に企業価値の向上が期待できる法人に資金を提供し、いずれ売却益を得ることを目的とするものです。「出資≒投資」と考えると分かりやすいでしょう。

一般的な出資の場合、出資候補となるのはベンチャーキャピタルやエンジェル投資家です。

最近では、クラウドファンディングもよく知られています。クラウドファンディングとは、インターネットなどを通して不特定多数の人に出資を募るものです。

一般的な出資とは異なり、クラウドファンディングは出資者に対して商品やサービスなどを提供することも多いです。出資者が事業に干渉してくることもないため、活用のハードルは低いといえます。

ただし、出資者は将来性を重視しているため、出資を受けることは容易ではありません。出資を受けられるのは、

・素晴らしいアイデアや商品を持っているものの、なかなか評価されずにくすぶっている。創業してからというもの赤字が続いており、資金繰りが厳しい

・素晴らしいアイデアを商品化したいが、創業資金の調達がうまくいかずに起業に至っていない

といった場合に限られます。

この資金調達がおすすめの法人

出資による資金調達がおすすめなのは、

・事業内容に自信があるものの、創業したばかりで融資を受けられない法人
・優れたアイデアがあるため新規事業を立ち上げたいが、資金の調達に困っている法人

などです。

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家を探すのは難しいですが、クラウドファンディングは利用しやすいので検討してみると良いでしょう。

経営改善しながら資金を獲得できる助成金

助成金とは、日本経済全体にとって役立つ取り組み(特に雇用の維持・改善など)を実施した法人に対し、取り組みに伴う負担の軽減を目的として支給されるものです。報奨金のような性質があり、返済も不要です。

助成金の仕組みは時代と共に変化します。働き方改革が推進されている昨今では、従業員の処遇改善や職場環境改善に取り組んだ場合に、多くの助成金を受給できる傾向があります。

このように、助成金は本来資金調達を目的とするものではありません。しかし、従業員の処遇改善や職場環境の改善など、経営改善につながる取り組みを行い、なおかつ資金も獲得できるため、使い方次第で大きなプラスとなります。

いくつか例を挙げると、以下のような取り組みによって助成金を受給できます。

・有期契約労働者を正規雇用に転換する(→人材不足の改善につながる)
・教育訓練を実施する(→従業員の能力が向上し生産性アップにつながる)
・障害者を雇用する(→障害者の法定雇用率をクリアし、障害者雇用納付金の発生を避けられる)

この資金調達がおすすめの法人

助成金による資金調達がおすすめなのは、

・従業員の処遇改善や職場環境改善に取り組んでいる法人
・これまで助成金の受給を考えたことがなかった法人

です。助成金は多種多様であるため、何らかの取り組みを実施している法人では、受給できる可能性があります。
また、これまで助成金について考えたことがない法人では、助成金を受給できる取り組みを長期にわたって実施していながら、制度を知らなかったために受給できていないことも多いです。
受給できるものはしっかり受給し、資金繰りに役立てていきましょう。

まとめ

本稿では、資金調達の王道である融資だけではなく、資産の活用によって柔軟に資金調達する方法、助成金などのその他の方法について解説しました。

それぞれについて概要を述べ、様々な資金調達方法を俯瞰できる構成としたため、興味のある方法については詳細記事を参考にしてください。

自社に最適な方法が分からない方は、資金調達のプロであるコンサルタントなどに相談するのがおすすめです。法人ごとに最適な資金調達の提案が受けられることでしょう。

お問い合わせ

資金調達のプロがお客様の状況をヒアリングした上で適切なアドバイスを致します。

  • ・初めて資金調達を行いたい
  • ・銀行借入を成功させたい
  • ・国の資金調達制度を使いたい
  • ・助成金、補助金の申請をしたい
  • ・早急に資金が必要
  • ・資金繰りの改善をしたい
無料資金調達のご相談はこちら

資金調達コンサルティングについての詳細、メリットなど選び方の紹介はこちら