資金調達

中小企業の資金調達に役立つ予約保証とは?活用方法と注意点を理解しよう

信用保証協会の保証制度は多種多様です。中には変わった仕組みのものもあり、うまく活用することで資金繰りの助けとなります。

中小企業の資金繰りの円滑化のために、ぜひ利用したい保証制度に「予約保証」があります。

この記事では、事前に保証付融資を予約しておける「予約保証」の仕組み、メリット・デメリット、利用の注意点などを解説します。

予約保証とは?

銀行融資によって資金を調達する場合、ネックになるのは融資実行までに時間がかかることです。プロパー融資でも保証付融資でも、基本的には1ヶ月程度を要します。このため、緊急の資金需要に対応できないのです。

緊急の資金需要に対応できる方法として、最近ではファクタリングなどが人気を集めていますが、このほかに中小企業が活用すべき方法として「予約保証」が挙げられます。

目的

予約保証とは、信用保証協会が提供する保証制度の一種です。予約保証が創設されたのは平成20年であり、すでに10年以上の歴史があります。しかし、知らない経営者も意外と多い制度です。

簡単に説明すると、予約保証とは信用保証協会の保証を事前に取り付けておき、資金需要が発生した場合にすぐに保証付融資を受けられる制度です。

中小企業庁も、予約保証の創設にあたって、

「中小企業の将来の資金需要に応え迅速な資金調達を支援することを目的とし…」

と発表しており、中小企業のスピーディな資金調達を助けるための制度であることが分かります。

概要

予約保証の概要は、以下の通りです。

  • 保証(予約)上限額:2,000万円
  • 保証期間:5年以内
  • 保証料率:通常の保証料率に対して0.15%~0.20%を上乗せ
  • 担保条件:金融機関、信用保証協会との約定による

最も大きな特徴は、保証上限額を2,000万円までとしていることです。一般的には、保証上限額は無担保では8,000万円、有担保では2億8,000万円に設定されているため、予約保証の上限はかなり低く思えるはずです。

とはいえ、予約保証は中小企業に対する保証制度であり、

  • 年商が1億円以下の中小企業
  • 創業から数年しか経っておらず、業容が小さい会社

などであれば、2,000万円の保証枠はかなり使い勝手がいいはずです。

予約保証のメリット

制度概要をみただけでもメリットがわかりますが、具体的にみていくとメリットが一層はっきりします。

迅速な資金調達

なんといっても、予約保証の最大のメリットは迅速に資金調達できることです。
もっとも信用保証協会では、予約保証を利用した場合に、融資実行までにかかる期間について言及していません。このため、スピード感がやや分かりにくい印象です。

とはいえ、予約保証では事前に保証を取り付けておくのです。予約しておいた枠で保証付融資を受ける場合、改めて保証審査を行う必要がないのですから、融資実行までの期間はかなり短縮されます。

後述の通り、予約保証では予約が取り消される場合もあります。このため、実際の保証付融資の際には、予約貸付の中止事由に該当しないことを確認する必要があり、そのくらいの余裕は見積もっておくべきでしょう。

ファクタリングのように「申し込んだら即日で資金調達」といったイメージではなく、「一般の保証付融資よりもかなり早い対応を受けられる」とイメージしてください。

予約は無料

一般的な保証制度では、保証を申し込んで保証付融資を受ける際に保証料がかかります。
一方、予約保証では、申し込みや保証審査の段階では費用が一切かからず、予約を取っておくだけならば完全に無料です。

保証料は、予約しておいた保証枠を利用する際に支払います。予約期間が過ぎて予約保証が流れたとしても、違約金のようなものは一切不要です。

このため、「念のために予約を取っておこう」といった感覚で利用しやすいのもメリットです。

予約保証のデメリット

ただし、予約保証にもいくつかのデメリットがあります。

予約期間は1年

いつでも保証付融資を受けられる状態を作っておき、資金調達に役立てることから、予約保証は「当座貸越」に似ています。

当座貸越とは、当座預金の残高を超える現金の引き出し、手形の振り出しなどがあった場合、当座貸越契約の範囲内で銀行がマイナス分を補填してくれるものです。したがって、

  • 当座貸越:当座貸越契約により、将来的な不足資金の補填を事前に取り付けておく
  • 予約保証:予約保証制度により、将来的な銀行融資の保証を事前に取り付けておく

というように、類似した仕組みといえます。
しかし、当座貸越と予約保証では大きな違いがあります。それは、事前に取り付けておいた対応を受けられる期間です。

当座貸越の契約期間は1年間と設定されることが多いです。しかし、1年ごとの更新にあたり、特に問題がなければ自動更新となります。

一方、予約保証の予約期間は「予約した年度の決算末月まで」であり、自動更新もありません。予約期間内に利用しなければ予約は流れ、再度申請して審査を受ける必要があります。
このように、予約期間が短く、予約の自動更新もないことがデメリットといえます。

審査は厳しめ

通常の保証審査に比べて、予約保証の審査は厳しいです。これは、予約保証はリスクが高いと考えられるためです。

通常の保証では、最新の業績や財務によって審査を実施し、保証の可否を判断できます。しかし予約保証の場合、予約期間内に経営が悪化する可能性も含めて審査しなければなりません。

したがって、経営状況によっては予約保証を利用できないことも考えられます。

保証料が少し高め

制度概要でも述べた通り、予約保証の保証料率はやや高めに設定されています。これは、リスクの高さを反映するためです。

通常の保証料率に対して0.15%~0.20%を上乗せとなるため、借入金額に対して0.45~2.20%の範囲内で保証料率が決定されます。

これにより調達コストが上がるわけですが、それほど深刻に考える必要はないでしょう。
予約保証上限の2,000万円を借り入れるとしても、保証料は3~4万円(0.15%~0.20%)の上乗せに過ぎません。

このくらいの負担増加によって、保証付融資をスムーズに使えると考えるならば、ほとんど気にならないレベルといえます。

保証期間が短め

最後に、保証期間が短く設定されていることもデメリットです。
保証制度の中には、保証期間が最長20年に設定されているものもありますが、予約保証の保証期間は最長5年に設定されています。

保証額は最大でも2,000万円であるため、5年間でも問題ないケースが多いです。とはいえ、他の保証制度よりも短く設定されていることは意識しておくべきです。

予約保証の注意点

最後に、予約保証の注意点を確認していきます。

予約が無効になることも

気を付けておきたいのは、予約が無効になるケースがあることです。中小企業庁の資料では、

■貸付中止事由
なお、契約の際に詳細の説明がありますが、予約後に著しく信用状態が悪化する等の事態が発生した場合、予約どおりの融資が受けられない場合もありますのでご留意下さい。

と記載されており、どのような場合に予約が無効になるかを具体的に示していません。
基本的には、

“突発的な事態によって経営が大幅に悪化し、一般保証の保証審査に通らないレベルになっていれば、予約が無効になる可能性がある”

と考えておけばよいでしょう。
将来的に経営が悪化した場合に備えて、予約保証を利用したい経営者も多いと思います。しかし、将来的な経営悪化の程度によっては、最も必要なタイミングで利用できない可能性があるのです。

気軽に考えすぎない

予約保証は使い勝手がよく、資金繰りの安定のために活用したい保証制度です。
しかし、気軽に考えすぎるのは禁物です。というのも、気軽に考えて利用してしまうと、貴重な保証枠を無駄に使ってしまうおそれがあるためです。

無担保の場合、保証限度額は8,000万円です。予約保証の予約枠もここに含まれます。このため、予約保証で2,000万円の保証付融資を受けると、無担保8,000万円の保証枠が6,000万円に目減りします。

保証を受けられる上限が決まっているだけに、信用保証協会の保証枠は、

  • 与信取引のない銀行から新規融資を受け、取引銀行を増やす
  • 経営が悪化してプロパー融資が受けられなくなった場合に保証付融資を受ける

など、融資を受けるのが難しいタイミングで使いたいものです。
比較的少額の資金需要が発生した場合、

  • 銀行にプロパー融資を交渉する
  • ファクタリングによって資金調達する

といった方法も考えられ、必ずしも保証枠を使う必要はありません。
しかし、予約保証が使える状態にあると、

  • とりあえず保証付融資で対応しておこう
  • もうすぐ予約期間が終わるから、その前にひとつ予約保証で調達しておけ

といった発想になり、保証枠の消耗を招きやすいのです。
これが、予約保証の利用にあたって最も注意すべき点です。計画的な利用を心がけてください。

まとめ

本稿では、中小企業の資金調達に役立つ「予約保証」について解説しました。予約保証で受けられる保証付融資は2,000万円が上限ですが、年商1億円以下の中小企業には使い勝手が良いため、活用したい制度です。

もちろん、会社の状況や資金需要の緊急性などに応じて、活用すべき資金調達方法は異なります。資金繰り改善を考えている会社では、このことをよく考える必要があるでしょう。

資金繰りの改善や信用保証協会の活用などで困っている方は、一度、資金繰り専門のコンサルタントへ相談してみてはいかがでしょうか。

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