資金調達

今さら人に聞けない民間金融機関の種類・特徴・使い分け

民間金融機関の種類と特徴

資金調達の必要が生じたとき、時間的に余裕がなければファクタリングや手形割引といった方法を利用しますが、基本的には金融機関から融資を受けることを考えます。

ただし、一口に金融機関といっても種類は様々です。大きな分類では政府系金融機関・民間金融機関にわけることができますし、民間金融機関にも色々な種類があります。

大まかに分けると、銀行融資に利用する民間金融機関には、

  • メガバンク
  • 地方銀行
  • 信用金庫・信用組合

があります。
民間金融機関の種類・種類別の特徴などは、分かっているようであまり分かっていないことが少なくありません。決して難しいものではなく、むしろ基本的なことなのですが、あまりにも基本的であるために具体的に学ぶ機会が得られにくいのも原因でしょう。

資金調達を考えるにあたっては、民間金融機関の種類や特徴、延いては上手な使い分けを知っておくことが非常に重要です。本稿で、それぞれについてポイントを学んでいきましょう。

メガバンク

メガバンクとは、その名の通り民間金融機関の中でも特に巨大な銀行の総称で、具体的には三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行の三行の指します。

この三行は日本全国で営業していますが、それぞれの営業エリアでの密着性は低く、地方銀行などとは区別して考える必要があります。

メガバンクの特徴

メガバンクは巨額の資金を運用しており、年商10億円以上の企業に対する大口の融資を基本としています。年商10億円未満の中小企業への融資はあまり取り扱いません。

メガバンクの使い方

メガバンクから融資を受けることで会社の信用が高まると考え、メガバンクからの融資にこだわる経営者もいますが、自社の年商と資金需要に見合わなければメガバンクにこだわる必要はありません。

スムーズな資金調達は期待しにくく、またメガバンクと取引していることが大きな信用に繋がるとも言い難いです。
業容の小さい中小企業は、地方銀行・信用金庫・信用組合の利用を優先し、業容拡大後に資金需要が大きくなってからメガバンクを検討しましょう。

地方銀行・信用金庫・信用組合

地方銀行・信用金庫・信用組合は、特定の地域で営業している民間金融機関です。このため、地方銀行・信用金庫・信用組合をまとめて「地域金融機関」と呼ぶこともあります。

地方銀行・信用金庫・信用組合の特徴

地方銀行は各都道府県を地盤として、信用金庫・信用組合は都道府県内の一部特定地域で営業しています。このため、地盤とするエリアの個人や企業が主要顧客となっていることが最大の特徴です。

言い換えれば、地盤エリアの顧客を大切にすることが欠かせず、地元企業との共存共栄を重視します。企業の規模に関係なく、営業エリアに事業所を持っている中小企業への融資には積極的です。

地方銀行・信用金庫・信用組合の使い方

地方銀行・信用金庫・信用組合は、年商10億円未満の中小企業でも融資を受けやすいです。

共存共栄を目指して地域の顧客を大切するため、長期的な付き合いを前提に、地方銀行・信用金庫・信用組合の中からメインバンクを選ぶのもおすすめです。

地方銀行・信用金庫・信用組合をメインバンクにしていれば、経営悪化時にもそれなりに支えてくれることが多いです。
ただし、業容が小さい会社ほど、地方銀行より信用金庫・信用組合の優先度が高まります。というのも、信用金庫・信用組合はより限定された地域で、限定された顧客を対象に営業しているためです。

例えば、信用金庫が融資できるのは従業員300人以下または資本金9億円以下の企業であり、なおかつ信用金庫の所在地域に事業所を構えている企業に限られます。

営業エリアが狭く、融資対象も地方銀行に比べて限定されているため、信用金庫・信用組合は地方銀行よりも地域密着性が強いです。このため、業容の小さい会社ほど信用金庫・信用組合がおすすめといえます。

ただし、会社が成長していくと、やがて信用金庫・信用組合の融資対象外になってしまうことも考えられます。

したがって、会社の成長に合わせて地方銀行との関係を徐々に強化していき、信用金庫・信用組合からの借入を卒業するころには地方銀行の融資シェアがトップになっている(=メインバンクが地方銀行にスライドしている)よう、付き合い方を工夫する必要があります。

他県から進出してきた地方銀行が狙い目

地方銀行・信用金庫・信用組合は、限られた地域で営業している点では同じですが、両者には決定的な違いがあります。それは、

  • 地方銀行→営業エリアの制限がなく、他地域に進出することができる
  • 信用金庫・信用組合→法律によって営業エリアが制限されているため、他地域に進出できない

ということです。
このような違いから、異なる地域を地盤とする地方銀行が同一地域内に存在しているのが普通です。
例えば、2021年3月現在、福岡県には福岡県内に本店を持つ地方銀行が4行・1104店舗を構えているのに対し、他県の地方銀行も17行・96店舗が進出しています。

他地域の地方銀行が進出してきたとき、中小企業の資金調達に役立つ可能性が高いです。 福岡県内の例を見ると分かりますが、他地域から進出してきた地方銀行は全体の1割以下にすぎません。これは、新規出店が非常に難しいためです。なにしろ、進出先地域の顧客のほとんどを地元の地方銀行が取り込んでいるのです。

実際に、他地域に初めて進出する地方銀行では、有能かつ「剛腕」といわれるような人物に支店長を任せ、他地域進出の先鋒とするのが普通です。このことからも、他地域進出の厳しさが分かるでしょう。

ここが狙い目です。自社の経営している地域に、他地域の銀行が新規出店してきた場合には、積極的に付き合いを求めていくのです。

通常、金融機関は取引したことのない企業への新規融資を警戒しますが、進出したばかりの地方銀行は例外です。顧客の獲得が喫緊の課題であり、取引実績のない企業に対する新規融資が、その地域に食い込んでいくチャンスになるためです。

したがって、これまで全く縁がない、業績や財務があまりよくないといった場合にも融資の相談に乗ってくれたり、有利な条件で融資してくれたり、色々なメリットが期待できます。

ただし、他地域から進出してきた地方銀行は、地元の地方銀行に比べて地域との親和性が低いことは否めません。他地域の地方銀行と付き合いながらも、メインバンクは地元の地方銀行・信用金庫・信用組合などにしておくべきでしょう。

まとめ

民間金融機関を、メガバンク・地方銀行・信用金庫・信用組合にわけて解説しました。
多くの中小企業は、メガバンクよりも地方銀行・信用金庫・信用組合と深く付き合ってゆくこととなります。

ただし、地方銀行と信用金庫・信用組合には明らかな違いがあるため、自社に適している金融機関をうまく使い分けることが大切です。

この使い分けがうまくできれば資金調達がスムーズになるため、参考にしてください。

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