ファクタリング

国際ファクタリングの仕組みやメリット・デメリットを解説

一般的に中小企業が利用しているファクタリングは、国内の取引を対象としたものです。国際的な取引には対応していません。しかし、中小企業の中にも海外企業と取引している会社はたくさんあります。

特に、海外に輸出している会社であれば、輸入企業の売掛金をファクタリングしたいと考える会社も多いはずです。そんなときに役立つのが国際ファクタリングです。本稿では、国際ファクタリングの仕組み、メリット・デメリットを解説します。

※ファクタリングについて基礎から知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
『ファクタリングの仕組みとは?メリット・デメリットや利用の流れを解説

国際ファクタリングとは

国際ファクタリングとは、その名の通り、国際間の取引で生じた売掛金を対象とするファクタリングです。日本国内から海外へ輸出する会社に利用されており、とりわけ貿易業では国際ファクタリングが役立ちます。
国際間でファクタリングするため、国内の一般的なファクタリングとは大きく異なります。

海外輸出のリスク

海外企業との取引では、国際間取引ゆえに様々なリスクが生じます。例えば、以下のようなリスクがあります。

  • 輸入業者への信用調査ができず、与信管理が困難である
  • 商習慣や文化、言語の違いによって、売掛金の回収が円滑に進まない
  • 言語の壁があるため、契約のトラブルが発生しやすい

このようなリスクは、国内取引ではまず考えられません。それだけに、これから海外企業との取引を始めようと考えている会社では、ノウハウの未熟さによって様々なリスクに見舞われ、海外展開に支障を来すことも多いです。

国際ファクタリングでリスクをカバー

これらのリスクに対処するために、国際ファクタリングが役立ちます。
詳しいメリットは後述しますが、国際ファクタリングを利用すれば、自社と売掛先の取引を両国のファクタリング会社が仲介します。これにより、商習慣や文化、言語などの違いによるトラブルを回避できます。

さらに、国際ファクタリングは保証ファクタリングと買取ファクタリングの両方の性質を備えています。つまり、売掛金の支払いをファクタリング会社が保証し、なおかつ自社の希望に応じて早期資金化にも対応してくれるのです。

信用状取引との違い

国際ファクタリングと類似する仕組みに「信用状取引」があります。信用状取引は、貿易業では古くから利用されてきた仕組みです。国際間取引によるリスクを回避するための仕組みですから、国際ファクタリングと混同しやすいです。

国際ファクタリングと信用状取引の大きな違いは、仲介者にあります。国際ファクタリングを仲介するのは両国のファクタリング会社であるのに対し、信用状取引を仲介するのは両国の銀行です。輸出先の現地の銀行に信用状を開設する必要があります。

国を問わず、銀行は手続きを慎重に進めるものです。国内取引の手続きでさえ慎重に進めるのですから、国際間取引となれば多くの時間を要します。このため、

  • 手続きが煩雑である
  • 与信が十分でなければ信用状を開設できない
  • 書類の受け渡しに時間がかかる

といった問題が生じます。
国際ファクタリングでは、上記のような問題が生じず、信用状取引の問題点を解消したのが国際ファクタリング、というイメージです。

国際ファクタリングの仕組み

国際ファクタリングの仕組みは、一般的なファクタリングと大きく異なります。

国際ファクタリングは4社間ファクタリング

まず、取引方式が異なります。
一般的なファクタリングで利用できるのは、

  • 2社間ファクタリング:自社、ファクタリング会社の2社間で契約するもの
  • 3社間ファクタリング:自社、売掛先、ファクタリング会社の3社間で契約するもの

であり、このいずれかに限られます。
これに対し、国際ファクタリングでは自社(輸出業者)、売掛先(輸入業者)、国内のファクタリング会社、現地(輸出先)のファクタリング会社の4社間で取引する「4社間ファクタリング」です。

国際ファクタリングの流れ

4社間ファクタリングを行う国際ファクタリングでは、ファクタリングの関係者が多いため、流れはやや複雑になります。
国際ファクタリングの流れは以下の通りです。

  1. 輸出業者である自社は、輸入業者である売掛先と売買契約を結ぶにあたり、事前に国内のファクタリング会社に国際ファクタリング(信用保証の引受け)を依頼します。このとき、自社と国内ファクタリング会社で、与信限度額と与信期間を打ち合わせます。与信期間は180日以内が一般的です。
  2. 国内ファクタリング会社は、輸出先の現地ファクタリング会社に保証引受けを依頼します。
  3. 現地ファクタリング会社は、売掛先となる輸入業者に対して信用調査を行い、審査します。審査の結果、問題がなければ国内ファクタリング会社に受諾を通知します。
  4. 自社から売掛先へ、国際ファクタリングの利用を通知します。売掛先の承諾を受け、売買契約を結びます。
  5. 輸出の際、輸出船積書類は売掛先に直送します。国内ファクタリング会社にも写しを送付します。
  6. 支払い期日になると、売掛先は現地ファクタリング会社に代金を支払います。
  7. 現地ファクタリング会社から国内ファクタリング会社へ代金が送金され、国内ファクタリング会社から自社へ代金が支払われます。

国内と現地のファクタリング会社が関与すること、売掛先への通知を行うことなどに注意してください。

国際ファクタリングのメリット・デメリット

国際ファクタリングには多くのメリットと、いくつかのデメリットがあります。
それらをみていきましょう。

国際ファクタリングのメリット

国際ファクタリングのメリットは以下があげられます。

信用調査が確実

何といっても、現地のファクタリング会社に信用調査を依頼できるのがメリットです。
国内取引ならば、帝国データバンクなどの信用調査会社に依頼できますが、海外の企業の調査は困難です。海外にも信用調査会社はありますが、言語の壁があり、調査費用も高くなる可能性があるため、利用は現実的ではありません。

国際ファクタリングならば、国内ファクタリング会社の仲介で、現地のファクタリング会社に信用調査を依頼できます。ファクタリング会社の調査能力は高く、なおかつ信用調査費も格安です(1万円程度)。

ファクタリング会社が保証を引き受けた場合、売掛先の信用力が高いことが分かり、与信限度額も適切に設定できます。これにより、安心して取引を進めることができます。

ファクタリング手数料が安い

現地ファクタリング会社の審査により信用の高さが明らかであるため、国際ファクタリングのファクタリング手数料は安く設定されています。

手数料は、売掛金額の0.7~2.0%を保証料として、1ヶ月ごとに支払うのが一般的です。個別交渉で保証料が決まることもあります。

早期資金化した場合のファクタリング手数料は、売掛金額や売掛先の信用、支払い期日までの期間によって異なるため、事前の確認が重要です。

売掛金の回収が確実

国際ファクタリングには保証機能があります。万が一、支払い期日に代金が不払いになった場合は、国内のファクタリング会社と現地のファクタリング会社が支払いを保証してくれます。

貸し倒れリスクをファクタリング会社に移転できるため、リスクマネジメントにも効果的です。

早期資金化も可能

保証だけではなく、早期資金化も可能です。国内のファクタリング会社に早期支払いを要請することで、売掛金の買い取りや立替払いに対応してくれます。

2社間ファクタリングのように、即日資金化というわけにはいきません。しかし、国際間取引の回収サイトは長期化することも多いため、早期資金化が役立ちます。

ファクタリング会社の信用が高い

国際ファクタリングに携わっているのは、世界中の大手ファクタリング会社です。なぜなら中小のファクタリング会社では国際業務に携わるだけのノウハウや信用に欠けるためです。日本でも、大手銀行系のファクタリング会社が請け負っています。
したがって、悪質業者を選んでしまうリスクは皆無です。

輸入会社の信用が低下しにくい

一般的なファクタリングでは、3社間ファクタリングがあまり好まれません。ファクタリングの利用を通知することで、売掛先の信用を損なう危険があるためです。

国際ファクタリングの場合、そのような危険が少ないです。世界的には、ファクタリングはスタンダードな仕組みであり、経営効率化の一手段としても認められています。

このため、ファクタリングを利用したからといって、海外の売掛先が悪印象を抱く可能性は低いです。

したがって、国内における3社間ファクタリングのようなリスクを想定する必要はありません。

国際ファクタリングのデメリット

次に、国際ファクタリングのデメリットをみてみましょう。

売掛先の承諾が必要

売掛先の承諾が必要になることは、デメリットのひとつといえます。
上記の通り、国際ファクタリングでは売掛先への通知が問題になることは少ないです。しかし、売掛先が承諾しなければ国際ファクタリングは利用できません。

もっとも、売掛先としても、自社から輸入することで事業が成り立っているため、承諾を拒否することは考えにくいでしょう。

輸出先によってはリスクがある

最大のリスクは、保証されない場合があることです。不払いの原因が、売掛先の資金繰り悪化や倒産などの与信に関するものであれば、支払いは保証されます。しかし、それ以外の場合には基本的に保証されません。
例えば、

  • 現地の政情が悪化して売掛先が事業を停止せざるを得なくなり、支払い不能となった
  • 自社の製品に問題があったために、売掛先が支払いを拒否している

などが原因であれば、保証の対象外となります。
政治リスクなどが高い国へ輸出する会社は、国際ファクタリングではなくフォーフェイティング(カントリーリスクもカバーする国際金融取引)の利用を検討してください。

まとめ

本稿では、国際ファクタリングの仕組み、メリット・デメリットを解説しました。
国際ファクタリングを利用すれば、国際間取引に伴う様々なリスクを避けることができます。売掛金の保証を受けつつ、自社の都合に応じて早期資金化もできるため、資金繰りに大変役立つ仕組みです。

海外への事業展開を考えている会社は、ぜひ国際ファクタリングの利用を検討してみてください。

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