保証付融資を使う時、申し込む銀行はどこでも変わらないと思っていませんか?あまり考えたことがない、あるいはメインバンクで使うことが多いという会社では、保証付融資の活用が不十分と言えます。
保証付融資を使う銀行はよく考えるべきです。本稿では、保証付融資を交渉カードにする考え方を解説します。
保証付融資はメインバンクで使うべき?
資金繰りを安定させるには、複数の銀行から融資を受けることが大切です。そうすることによって、資金の調達先が分散されるため、A銀行で融資を断られてもB銀行で融資を受けられる、といったメリットが期待できるのです。
複数行取引のうち、借入額が最も大きい銀行をメインバンク、その他の銀行をサブバンクといいます。
実際に他行よりもたくさん貸してくれるメインバンクは、自社にとって心強い存在です。メインバンクとの付き合いが壊れてしまうと、サブバンクとの付き合いも難しくなるのが普通ですから、メインバンクとの関係は非常に重要といえます。
メインバンクの論理
信用保証協会の保証がつくことで、銀行は貸し倒れリスクの大部分を回避できます。このため、メインバンクでもサブバンクでも、できるだけ保証付融資で融資したいと思っています。
また、メインバンクは融資額が大きく、プロパー融資にも応じることが多いだけに、保証付融資を強く希望することが多いです。
メインバンクの言い分も、当然といえば当然です。例えば、自社の借入れ状況が、
- A銀行(メインバンク):3,000万円のプロパー融資
- B銀行(サブバンク):1,000万円の保証付融資
- C信金(サブバンク):1,000万円の保証付融資
であったとすれば、A銀行はどう考えるでしょうか。
メインバンクだからこそ、融資額が大きく、プロパー融資を出すことにもある程度納得しているはずです。しかし、他行に比べて貸し倒れリスクが大きいことは明らかであり、
「一番積極的に支援しているのだから、見返りが欲しい。次の資金調達は、ぜひ保証付融資で」
とお願いしたくなるのも無理はありません。
いつもお世話になっているから・・・
また、経営者としても、「いつもお世話になっているA銀行がいうのだから・・・」と受け入れたくなる気持ちもあるでしょう。
このように、メインバンクとサブバンクでは、自社との関係性が明らかに異なります。付き合いの長さを考えても、メインバンクとの付き合いが一番長く、信頼関係も深いのが普通です。
したがって、保証付融資をメインバンクに集中させている中小企業が多いのですが、これは信用保証協会の上手な使い方とはいえません。
担保と保証の使い方は違う
メインバンクにおける保証付融資の正しい在り方を知るには、担保と保証の違いを考えるのが分かりやすいです。
そもそも、信用保証協会の保証は、貸し倒れリスクに備えるためのものです。つまり「保全」であり、この意味において担保と同じ役割を持っています。
しかし、担保と保証の使い方は異なります。この違いを認識しておくと、メインバンクとの交渉がうまくなります。
担保はメインバンクへ
基本的な考え方は、「担保はメインバンクで活用、保証はサブバンクで活用」です。
担保はメインバンクで、といわれてもピンと来ない人が多いと思います。普通、評価のタイミングが同じであれば、担保価格はメインバンクのA銀行でも、サブバンクのB銀行・C信金でもほとんど同じです。だからこそ、担保を差し入れるのはどこでも良いと考えてしまうのです。
確かに、担保価格は同じかもしれません。しかし、これは狭義の保全に過ぎず、銀行ではより広義の保全で考えることも多いです。具体的には、
- 狭義の保全:あくまでも評価時の担保価格だけで考える
- 広義の保全:時価ベースでの保全を考える
といった違いがあります。つまり、柔軟性に大きな差があるのです。これが、メインバンクとサブバンクの対応に大きな違いをもたらします。
例えば、1年前に2,000万円の担保として差し入れた不動産の価値が、現在の時価では3,000万円に上昇していたとします。この場合、1,000万円の増加分が担保に使えるはずですが、サブバンクでは増加分を特に考慮しないことがあります。時価に関係なく、あくまでも担保価格2,000万円の物件として取り扱うのです。
しかし、支援に積極的なメインバンクであれば、時価ベースで考えてくれることが多いです。したがって、時価の上昇分で追加融資を引き出すこともできます。この際、融資の稟議書にも、
“今回の融資30百万円に対して担保価格は20百万円であるが、時価ベースで30百万円が認められる。担保価格では10百万円の保全不足となるが、時価ベースでは充足するものであり、許容したい”
などと書かれます。
積極的に支援してくれるメインバンクだからこそ、サブバンクよりも柔軟に対応してくれます。つまり、担保はメインバンクに提供してこそ、資金繰りにフル活用できるのです。
これが、「担保はメインバンクで活用」すべき理由です。
保証付融資はサブバンクで
同じ保全でも、担保と保証は全く異なります。
上記の通り、担保は時価によって考えることができ、資金調達余力が増すこともあります。このため、メインバンクと相性が良いです。
では、信用保証協会の保証はどうでしょうか。信用保証協会の保証枠は、
- 無担保:最大8,000万円
- 有担保:最大2億8,000万円
と決められています。いくらメインバンクが柔軟に対応しても、保証枠を広げることはできません。
つまり、柔軟性が影響しないため、保証付融資はメインバンク・サブバンクのどちらで使っても、資金繰りへの影響は変わらないのです。
このとき、
「どこで使っても変わらないなら、一番お世話になっているメインバンクで」
と考えるのは間違いであり、
「どこで使っても変わらないなら、必ずしもメインバンクで使う理由はない。保証付融資を交渉カードにして、最も良い条件で資金を調達できる銀行で使おう」
と考えるのが正解です。
信用保証協会の保証は銀行にとって大変魅力的であり、交渉カードとしての使い勝手は抜群です。色々な使い方が考えられますが、おすすめはプロパー融資を引き出すために使うことです。
サブバンクの中には、付き合いが短い、あるいは融資以外の取引が少ない、といった銀行もあると思います。この場合、自社は銀行にとってあまり取引メリットがない融資先ですから、貸し倒れリスクの高いプロパー融資にも消極的です。
プロパー融資を受けるには、相応のメリットを提供することが欠かせません。そこで、保証を交渉カードにして、
「今回、2,000万円の資金を調達したいのですが、保証付融資1,000万円、プロパー融資1,000万円の抱き合わせで融資してくれませんか」
といった交渉をもちかけるのです。
プロパー融資の場合、銀行は2,000万円の貸し倒れリスクを負います。しかし、プロパー融資と保証付融資を50%ずつの抱き合わせならば、半分のリスクで2,000万円を貸し付けることができるのです。金利が同じであれば、半分のリスクで変わらない収益が期待でき、魅力的な融資案件です。
プロパー融資を増やしていくには、まずは融資額に関係なく、プロパー融資の実績を作っていくことが大切です。このような交渉によってプロパー融資に受けるうちに、やがて「プロパー融資でもしっかり付き合える会社」という評価になればしめたものです。
まとめ
本稿では、メインバンクとサブバンクの違いから、保証付融資の活用方法を解説しました。「担保はメインバンクで、保証はサブバンクで」と考えることで、保証付融資をサブバンクとの交渉カードに利用でき、プロパー融資の開拓に役立ちます。
保証付融資は便利なものですが、保証枠に限りがあり、調達コストも割高です。プロパー融資で調達するに越したことはありません。プロパー融資によって資金繰りを安定させるためにも、保証付融資を使う銀行はしっかりと選びましょう。
資金調達のプロがお客様の状況をヒアリングした上で適切なアドバイスを致します。
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