資金調達

保証付融資の調達コストとは?保証料の仕組みを徹底解説

信用保証協会の保証をつけて銀行融資を受ける際には、保証料が発生します。正確な資金繰りのためには、保証料の仕組みを理解しておくことが欠かせません。
この記事では、保証料の仕組みを徹底解説します。

信用保証協会・銀行・中小企業の関係

信用保証協会の保証付融資は、信用保証協会・銀行・中小企業の3社間で行われます。
もっとも、申し込みの流れはプロパー融資とほとんど変わりません。資金需要が発生した際、会社は銀行に対して融資を申し入れ、信用保証協会の保証をつける場合には、保証依頼の申請書を書きます。

銀行と信用保証協会は業務委託契約を結んでおり、銀行が信用保証協会と会社を仲介します。融資に際して、会社があらかじめ信用保証協会に申し込んだり、信用保証協会と交渉したりすることはありません。

ただし、申請書の提出に加えて、金銭のやり取りがあることを忘れてはなりません。信用保証協会から保証を受けるためには、保証料を支払う必要があります。もちろん、保証料も信用保証協会に直接納付するのではなく、銀行が窓口となりますが、保証料が生じることによってプロパー融資よりも調達コストが高まることを知っておくことが大切です。

保証料はいくら?

資金繰りのために融資を受けるのですから、調達コストは常に意識しておくべきです。では、信用保証協会の保証料はいくらなのでしょうか。

保証料は一律ではない

保証料は、融資額に保証料率を掛け合わせて算出します。ただし、保証料率は一定ではなく、以下などによって変動します。

  • 料率区分(会社の財務状況によって決まる9つの区分)
  • 利用する制度
  • 保証額の累計
  • 担保の有無
  • 責任共有制度の有無

 
保証料率が安いケースでは1%以下ですが、高いケースでは2%以上になることもあります。
東京信用保証協会の設定では、最も低いケースで0.2%、最も高いケースで2.2%です。借入金額が3,000万円であったと仮定すると、それぞれの場合の保証料は、以下のように非常に大きな差が生じます。

  • 保証料率0.2%のケース:6万円
  • 保証料率2.2%のケース:66万円

 
当然ながら、資金繰りへの影響も変わってくるため、保証料率はしっかりと把握しておくことが大切です。

保証料に信用が表れる

保証料率を左右する要素のうち、最も大きいのは料率区分です。例えば、東京信用保証協会の設定では、料率区分が最も良い「9」の場合には0.45%、最も悪い「1」の場合には1.9%の保証料率が適用されます(一般保証・1,000万円超・無担保の場合)。

自社に適用される保証料率によって、自社の料率区分がわかり、信用がどの程度であるかを把握することも可能です。
一般的には、保証料率1.55%を基準として、これよりも高ければ平均よりも財務内容が悪いと見られている、これよりも低ければ平均よりも財務内容が良いと見られている、といえます。

CRDを使ってみよう

この場合、保証を申し込んだ後、保証料率の適用を受けて自社の料率区分が把握できるわけですが、料率区分は保証を申し込む以前に把握することも可能です。
信用保証協会は、財務状態の評価と保証料率の決定に際し、CRDというシステムを使っています。CRDとは「クレジット・リスク・データベース」の略称であり、財務データから倒産の確率を割り出すシステムです。

CRDは信用保証協会だけではなく、だれでも利用できます。独立行政法人中小企業基盤整備機構のホームページから利用可能です。
ただし、入力する数値として直近2期分の決算書が求められるため、創業後まもない会社は利用できません。
多くの中小企業は、CRDによる診断が可能と思います。これにより、事前に自社の料率区分を知り、大まかな保証料を把握しておくと、より正確な資金調達・資金繰りができるはずです。

責任共有制度と保証料率の関係

保証料率に影響を与える要素のうち、押さえておきたいのは責任共有制度の有無です。
責任共有制度とは、2007年10月に導入された制度です。これにより、保証付融資の仕組みが大きく変わりました。

責任共有制度の導入前後

責任共有制度が導入される前は、貸し倒れが発生した場合の損失は、100%信用保証協会が代位弁済していました。貸倒損失については、銀行は全くのノーリスクだったのです。

このため、銀行は貸し倒れリスクが高い会社にも簡単に融資できました。貸し倒れになったとしても、困るのは信用保証協会だけだからです。その結果、信用保証協会の代位弁済額は膨大なものとなり、平成20年度には1年間で1兆円を超える代位弁済が行われました。

信用保証協会の目的は「中小企業の資金繰りの円滑化」です。しかし、これは、

「融資を受けることで経営を続けられるものの、銀行の判断によって融資を受けられず、倒産してしまう中小企業の資金繰りを円滑化すること」

が目的であって、

「融資を受けても破綻してしまう、融資を受けるべきでない中小企業の資金繰りを円滑化すること」

が目的ではありません。
保証制度に依存し、銀行が闇雲に融資する流れを断ち切るために導入されたのが、責任共有制度です。これにより、貸倒損失の80%を信用保証協会が代位弁済し、20%は銀行が負担することとなりました。

下がった保証料率

責任共有制度によって、代位弁済に伴う信用保証協会の負担は、貸倒損失の100%から80%に減りました。
例えば、1,000万円の貸し倒れが発生した場合、信用保証協会の負担は代位弁済が100%ならば1,000万円、80%ならば800万円です。責任共有制度により、200万円の負担軽減になっています。

1,000万円を保証するための保証料率と、800万円を保証するための保証料率が全く同じであれば、つり合いがとれません。このため、責任共有制度の導入に伴い、保証料率が引き下げられています。

責任共有制度対象外の制度に注意

注意すべきは、保証制度の中には責任共有制度の対象外のものがあることです。
コロナ禍での企業救済策のひとつとして、セーフティネット保証が実施されました。セーフティネット保証は責任共有制度の対象外です。

セーフティネット保証の目的は企業の救済であり、平常時よりも基準を緩和して保証をつけ、融資を円滑化する必要があります。銀行が、20%の貸倒損失を嫌って融資しない、ということになると困ります。そこで、責任共有制度対象外(貸倒損失は信用保証協会が100%負担)とすることで融資を円滑化するのです。

したがって、セーフティネット保証を利用する場合、保証料率はやや高めとなります。
コロナの影響を受けて、セーフティネット保証を利用した中小企業は多いです。また、今後も経営悪化の際に、類似の保証制度を利用する機会があるかもしれません。
企業救済のための保証は責任共有制度の対象外になっているのが普通です。したがって、保証料率も高くなることを理解しておきましょう。

まとめ

本稿では、信用保証協会の保証料の仕組みを詳しく解説しました。保証付融資によって資金調達する場合、銀行に支払う金利に加えて保証料を負担するため、調達コストが大きくなります。

上手な資金繰りのためには、自社の料率区分を把握し、保証料率と保証料の見通しをつけておくことが大切です。また、中小企業では保証付融資の利用頻度が高いため、料率区分の改善(保証料率の引き下げ)を意識することで、調達コストを削減できます。

料率区分の改善には、財務内容の改善が欠かせません。ぜひ、専門家の支援を受け、財務の改善に努めてください。

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