銀行が貸したい会社の特徴
融資を受けられずに困っている経営者の中には、景気が悪いために貸してもらえない、中小企業だから貸してもらえないと考える人が少なくありません。
しかし、銀行は景気に関係なく、基本的にはいつでも「貸したい」と思っています。中小企業に貸したいと思っている銀行もたくさんあります。
※銀行が貸したいと思っている理由について、詳しくはこちら。
→銀行が融資したい会社とは?貸し渋りを疑う前に考えるべきこと
したがって、
「銀行から貸し渋りを受けている」
「不景気だし、中小企業にはなかなか融資してくれる銀行がない」
と嘆くよりも、
「銀行が貸したいと思える会社になろう」
「銀行が貸したくないと思う要素をひとつずつ取り除いていこう」
と考えたほうがよほど生産的です。
銀行が貸したい会社には、3つの特徴があります。それは、
・債務者区分が一定以上である
・経営者が信頼できる
・経営改善を計画し、実行している
という特徴です。
これらの特徴について、ひとつずつ見ていきましょう。
債務者区分が一定以上である
債務者区分とは、金融庁が作った「金融検査マニュアル」をもとに融資先の経営内容を審査し、格付けしたものです。このため、「銀行格付け」といわれることもあります。
債務者区分は複数のランクに分けられており、これが融資の可否に大きく影響します。一定ランク以上であれば融資する、一定ランクを下回れば融資しないと判断されることが多いのです。
もちろん、債務者区分が全てではありません。融資水準をぎりぎり上回っている会社でも、担保などの保全が不足したために融資を受けられない、といったことは考えられます。
しかし、債務者区分が一定ランクを下回った場合には、ほぼ融資を受けられないと考えて間違いありません。付き合いが長い会社でも、支店長が個人的に経営者に好意を寄せていても、「貸したくても貸せない」という状況に陥ります。
経営が悪化した会社が融資を申し込んだとき、銀行員が「申し訳ありませんが、貸したくても貸せないんです」と断ることがありますが、この言葉は決して上辺だけのものではないのです。
このため、銀行が貸したいと思う3つの特徴の中でも、債務者区分が良好であることが最も重要であるといえます。
格付けは定期的に行われるため、ランクが落ちて融資を受けられなくなることもあれば、ランクが上がって融資を受けられるようになる場合もあります。
したがって、現在融資を受けられずに困っている会社は、債務者区分が悪い可能性が高いため、債務者区分が上がるように経営改善を進め、銀行が貸したい会社になるように努めることが大切です。
経営者が信頼できる
銀行は、経営者が信頼できる会社にも貸したいと思うものです。
もちろん、経営者への信頼は、債務者区分に比べると影響は小さいです。債務者区分が悪い会社に対して、経営者への信頼感だけで融資されることはありません。というよりも、債務者区分が悪い会社の経営者は、銀行の信頼も得られにくいといったほうが適当でしょう。
信頼される経営者とは?
銀行が信頼する経営者とは、例えば「斬新なアイデアで売上をぐんぐん伸ばしていく切れ者」とか、「社員からも、業界関係者からも人気の高いカリスマ」ではありません。もちろん、それは頼もしい経営者には違いありませんが、そのような経営者はごく少数です。
銀行が経営者に寄せる信頼とは、「この経営者なら、きちんと返済してくれるだろう」という信頼にほかなりません。具体的には、
・財務内容を正確に把握できている経営者
・資金繰りを回すのが上手な経営者
・中長期の経営計画を持っている経営者
を兼ね備えている経営者です。
どれか一つだけでは信頼になりません。財務内容が悪いことを正確に把握していても、資金繰りのまずさが原因になっているならば信頼されるはずがありません。
中長期の計画を持っていても、財務の把握がずさんで資金繰りも下手であるならば、計画の実行・達成は不可能です。現実が見えていないのですから、むしろ信頼を損なう可能性さえあります。
貸したい会社への第一歩
融資を受けられない経営者は、債務者区分の改善には時間がかかるため、まずは銀行から信頼を得ることをスタートにしても良いでしょう。この取り組みは、それほど難しいものではありません。
財務の読み方を少し知っておけば、日常的に財務内容を把握しておくことができます。
資金繰りの仕組みも、それほど難しいものではありません。資金繰りの仕組みを理解すれば、売掛・買掛の契約を工夫してキャッシュフローを改善したり、必要に応じてファクタリングを活用して売掛金を資金化したり、様々な工夫が可能となります。
日常的に財務内容の把握に努め、資金繰りを工夫していくならば、自社の現状やお金の流れを踏まえた経営計画も立てることができます。
このような努力をしている経営者は、銀行から信頼されやすいです。
融資にあたって銀行員と面談する際にも、財務や資金繰り、今後のビジョンなどを経営者自ら語ることができ、銀行が「この会社なら支援してもいいかもしれない」と思うきっかけになります。
経営改善を計画・実行している
経営改善を計画・実行していることも、銀行が貸したいと思う特徴です。
経営改善への取り組みが銀行に与える印象は、主に3パターンあります。
順調な会社の経営改善
順調な会社でありながら、さらなる経営改善を目指して業務改善に取り組んでいるならば、銀行は「この会社は今後も順調でありつづけるだろう。業績も伸びていくだろう。ぜひ貸したい」と考えます。
このような会社では、いつでもラクに資金調達できるだけではなく、銀行が付き合いを深めていきたいと考えるため、融資条件も有利になることが多いです。
小さな問題を抱える会社の経営改善
いくつかの問題点があって不安定な状況にある会社が、問題の解決に向けて改善策をしっかりと計画・実行している場合には、銀行は「この会社は少々問題があるが、経営改善を的確に実行している。今後、問題は徐々に解消されていくだろう。融資を検討しても良い」と考えます。
もちろん、担保や保証を求められる可能性が高く、融資条件が有利になることは期待できません。
しかし、もし経営改善に取り組んでいなかったり、的外れな経営改善を実施していれば、銀行は危険視して融資を断る可能性が高いのですから、経営改善によって融資を引き出したといっても過言ではないでしょう。
大きな問題を抱える会社の経営改善
大きな問題がある会社では、そもそも銀行から相手にされないことも多く、経営改善を計画・実行しても好意的にみられることは少ないです。資金調達が困難であるため、資金繰りは非常に危険な状態といえます。
したがって、銀行への印象がどうであるかに関わらず、経営改善に取り組む必要があります。経営改善にしっかり取り組んでいくうちに、徐々に銀行の関心を引き寄せていくことを考えるべきです。
取り組みの結果、少しずつ債務者区分が改善し、経営が安定していくにつれて、銀行の「貸したい気持ち」が徐々に向けられるようになり、やがて融資につながる可能性があります。
この場合、債務者区分が融資できる水準になったことに加えて、経営者に対して「あの状況から会社を立て直した」という強い信頼が寄せられることも期待できます。
まとめ
本稿で解説した通り、銀行が貸したいと思う会社には共通する特徴があります。融資に苦労している会社は、銀行が貸したいと思えない問題を抱えている可能性が高いです。
経営者自身が財務把握や資金繰り改善などに積極的に取り組んだり、業務効率の改善や助成金の活用などに取り組んだり、資金調達のためにできることはたくさんあります。付き合う銀行の選び方や金利交渉の知識なども大切ですが、会社と経営者の自助努力こそ最も重要な要素なのです。
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