様々な資金調達方法が存在する中、スタートアップにとって、会社の知名度を上げつつ資金調達も可能であるピッチを利用する会社が増えてきています。
ピッチとは、スタートアップ企業が投資家などに自社サービスを紹介するためのプレゼンテーションのことで、プレゼンよりも短い時間で、スピード感が重要視されます。
そのため、
「うまく魅力を伝えられるか不安・・・」
「そもそもピッチ資料ってどうやって作ったら良いのだろう」
「そんなに上手く資金調達できるのかな」
と不安に思う人が多いのも事実です。
この記事では、
- ピッチの特徴、メリット・デメリット
- 成功するピッチ資料の作り方
- ピッチの重要ポイント
を解説していきます。
- ピッチとは
- ピッチのメリット
- ピッチのデメリット
- ピッチ資料で重要な12の構成要素
- 1:事業・サービスの概要:「どんな事業・サービスなのか」
- 2:着想の背景:「なぜこの事業に取り組むのか」
- 3:ターゲットと、抱えている課題:「誰のどんな課題を解決するのか」
- 4:誰も気づいていない課題:「解決すべき課題」
- 5:解決策・解決方法:「どうやって解決するか」
- 6:プロダクトやサービスの紹介:「プロダクトやサービスの特徴」
- 7:トラクション:「そのプロダクトが本当に課題を解決しているのか」
- 8:主な競合との比較、自社の優位性:「自社プロダクトが選ばれる理由」
- 9:ビジネスモデル:「どのようにマネタイズするか」
- 10:目標設定、マーケティング戦略:「どう成長させていくのか」
- 11:チーム構成:「チームの強みはなにか」
- 12:資金調達の概要:「資金をなににどう使うのか」
- ピッチの重要ポイント
- まとめ
ピッチとは
ピッチとは、簡単に言うと「資金調達のためのプレゼンテーション」のことです。
投資家に向けて、事業の概要をポイントごとにわかりやすく説明し、資金を獲得することを目的としています。
つまり、発表した事業内容に対して賛同してくれた投資家から、資金を得られるという仕組みです。
ピッチは、通常のプレゼンテーションよりも短く、短時間で発表するという点が最大の特徴と言えるでしょう。
実際に与えられる時間は1分から長くても10分、多くの場合は7~8分程度の場合がほとんどです。
その短い時間で、伝えたいことを明確にして、ピッチ資料を見る人の興味をそそるような発表をしなければなりません。
やや難しいイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。そんなピッチのメリットとデメリットを説明していきましょう。
ピッチのメリット
ピッチのメリットは、以下の4点です。
- 返済不要の資金調達ができる
- 新しい顧客の獲得につながる
- スタートアップの成長につながるパートナーシップを結べる
- 会社や事業の知名度が上がる
1:返済不要の資金調達ができる
ピッチでは、投資家の賛同を得られることができれば、返済義務のない資金調達が可能となります。
融資等でも資金調達は可能ですが、数年~数十年と長い期間をかけて元本と利息の返済をしなければなりません。
また、融資を受ける場合には、厳しい審査を通過する必要があります。
ピッチであれば、ピッチイベントに参加するだけで資金調達ができる可能性があります。
ピッチイベントは多数開催されている上に、ピッチコンテストで入賞することができれば報奨金を得ることも可能です。
このように、返済不要の資金調達ができる可能性があるという点は、メリットと言えるでしょう。
2:新しい顧客の獲得につながる
ピッチイベントには、たくさんの投資家やスタートアップ企業が参加します。
その中に、自社のサービスのターゲットとなる人物が存在する可能性も十分にあります。
ピッチにより自社のサービスを知ったターゲットが、新たな顧客としてサービスを利用してくれることも少なくありません。
そのようなチャンスに巡り合えるのも、メリットの一つです。
3:スタートアップの成長につながるパートナーシップを結べる
ピッチイベントは複数のスタートアップ企業が集まって、自社の強みをアピールします。
その性質上、参加することで投資家だけでなく、他のスタートアップ企業とつながるきっかけも生まれます。
情報交換はもちろん、場合によってはビジネス上の提携を結べる可能性もあるのです。
ビジネスチャンスが広がる可能性があるというのは、メリットと言えるでしょう。
4:会社や事業の知名度が上がる
ピッチのイベントは各メディアも注目し、参加している場合も多いです。
メディアの目に止まることができれば、テレビで取り上げられたり、インタビューの依頼がきたり、会社の知名度を上げるチャンスも得られます。
ピッチのデメリット
ピッチのデメリットは、以下の2点です。
- 資料の準備に時間がかかる
- 必ず資金調達ができるわけではない
1:資料の準備に時間がかかる
ピッチは、なんといっても資料の準備に時間がかかります。
投資家を納得させられるような「魅力的な内容」かつ、一般の人にも伝わるように「わかりやすく端的に」、それを10分以内にまとめなければなりません。
通常のプレゼンテーションであれば、対象者はある程度の有識者であることが多いでしょう。
しかし、ピッチの場合、参加する投資家のジャンルは様々であり、自社のサービスに関する知識がほとんどないことも珍しくありません。
資料の準備に膨大な労力と時間を要することは、デメリットとなるでしょう。
2:必ず資金調達ができるわけではない
ピッチは、自社の事業内容やサービスに対して賛同してくれた人が投資をしてくれます。
そのため、どれだけ素晴らしいサービスだったとしても、賛同者がいなければ資金を調達することはできません。
ピッチをしたからと言って、必ず資金調達ができるというわけではないので、注意が必要です。
ピッチ資料で重要な12の構成要素
ピッチは、短い時間で伝えたいことを明確にして、見る人の興味をそそるような発表をしなければなりません。
そのために、「市場が大きいこと」「競合よりも自社が優れていること」「利益が生まれるビジネスモデルであること」「それを実現できるメンバーであること」を、根拠とともにストーリーを持って説明する能力が求められます。
こう聞くとなんだか難しそうな感じがしますが、ピッチは作成するにあたり、ある程度のポイントを抑えておけばさほど難しいものではありません。
そのポイントとなるのが、以下の12個の構成要素です。
- 事業・サービスの概要
- 着想の背景
- ターゲットと、抱えている課題
- 誰も気づいていない課題
- 解決策・解決方法
- プロダクトやサービスの紹介
- トラクション
- 主な競合との比較、自社の優位性
- ビジネスモデル
- 目標設定、マーケティング戦略</li
- チーム構成
- 資金調達の概要
では次に、12個の構成要素ひとつひとつの解説をしていきます。
1:事業・サービスの概要:「どんな事業・サービスなのか」
1つ目は、タイトルスライドとなります。
ここでは「一言でどんなサービスなのか」を説明しましょう。
ピッチを見る相手は専門家ではありませんので、アピール内容に専門的な要素が含まれていても、聞いた瞬間にイメージが浮かんでくるような一言で、サービスを紹介できる工夫が必要です。
例えば、試着シミュレーションサービスであれば「1タップで試着 着たい洋服をすぐ着られる」などです。
また、事業のブランドアイデンティティを満たすようなロゴや色で構成すると、聞き手にも伝わりやすくなるでしょう。
2:着想の背景:「なぜこの事業に取り組むのか」
2つ目に、なぜこの事業が成長すると考えているのか、その背景を説明します。
市場の変化や海外の急成長企業の誕生など、その事業が成長すると考える根拠の説明が必要です。
3:ターゲットと、抱えている課題:「誰のどんな課題を解決するのか」
ピッチで紹介する事業やサービスの顧客は誰なのかを明確に説明しましょう。
ここで、カギとなるのは「しっかりとしたペルソナ(顧客の詳細な設定)を立てる」ことです。
その顧客が抱える、どんな課題を解決するのかを明らかにする必要があります。
また、ここに「なぜ私が解決するのか」を盛り込むと、熱意が伝わりやすくなるでしょう。
4:誰も気づいていない課題:「解決すべき課題」
課題を深掘りして「他の解決手段が解決できていない課題がなにか」を説明する必要があります。
だいたいの物事は、なにかしらの解決策が先にあるにも関わらず、それでも解決できてないことが多いのです。
既存の解決手段で満たされていない不便や不満を明示することが大事と言えるでしょう。
ここでは、既存手段とその手段で解決できていない点を一覧で示し、比較できるとわかりやすいでしょう。
5:解決策・解決方法:「どうやって解決するか」
既存手段で解決されていない課題をどうやって解決するか、その具体的な方法を説明します。
なぜ今なら解決できるのか、なぜ自社の方法なら解決できるのか、その根拠を合わせて説明できるといいでしょう。
6:プロダクトやサービスの紹介:「プロダクトやサービスの特徴」
ここまでで、どんな課題があって、どのように解決ができそうなのかを説明してきました。
ここでは、実際にその課題を解決することができるプロダクトやサービスの紹介をします。
実際の画像やデモ動画を用いて説明できると、具体性が高まり、投資家もイメージがしやすくなるでしょう。
7:トラクション:「そのプロダクトが本当に課題を解決しているのか」
トラクションは「どれだけ顧客を引き込むことができたか」を意味するものです。
顧客が抱える課題を本当に解決していれば、自社のプロダクトに対して、対価を払い、継続して利用してくれているはずです。
自社プロダクトをリリースしている場合は、下記の数値を示して定量的根拠を示すのが効果的でしょう。
- 実際にどれくらいの人が利用しているか:ユーザー数、導入者数
- どの程度の人が対価を支払っているか:CVR、課金率、受注率
- どの程度の人が利用し続けているか:リテンション・チャーンレート
まだリリースしていないアイディア段階の場合は、インタビューやSNSでのニーズの有無をテストした結果等を示せると良いです。
8:主な競合との比較、自社の優位性:「自社プロダクトが選ばれる理由」
ここでは、改めて競合と比較して、既存手段よりも自社プロダクトが選ばれる理由を説明しましょう。
比較表やポジショニングマップを活用すると、視覚的にも競合との違いがわかりやすくなるので、ぜひ利用してみてください。
また、ユーザーにとっての価値と、ビジネスモデルやテクノロジーなどの内部資源、双方の観点で優位性を語れると、より説得力を増すことができます。
9:ビジネスモデル:「どのようにマネタイズするか」
ここでは、どのようにマネタイズするのかの説明をします。
説明は「サービス」「お金」「商品」「価格」という順で構成することが多いです。
ビジネスモデルの説明が十分にできないと、投資家に自社のビジネスの核が伝わりにくくなってしまいます。
誰になにを提供して、対価としていくらもらうのか、サービスとお金の流れをシンプルに図解できるといいでしょう。
10:目標設定、マーケティング戦略:「どう成長させていくのか」
プロダクトの成長のカギとなるのは、「ユーザー数」「CVR」「リテンション・チャーンレート」の3要素の改善とされています。
まずユーザー属性別、利用目的別、行動パターン別等で、この3要素を分析してみましょう。
分析の結果、「特定のターゲットの利用が多い」「離脱しやすいユーザーの共通点」等を見つけることができるため、それに対する施策を明示することで説得力が増します。
11:チーム構成:「チームの強みはなにか」
プロダクトに関して、誰が経営するのかを紹介することも大切です。
チームメンバーの実績や経験を明示して、掲げたプロダクトを実現できるメンバーが揃っているということをアピールしましょう。
12:資金調達の概要:「資金をなににどう使うのか」
紹介した事業にどの程度の資金が必要となるのか、どのように資金調達するのか、集めた資金をどのように使用するのかを説明します。
出資したお金がなにに使われるのかわからないと、不安を抱く投資家は多いです。
快く出資してもらえるように、資金の使用用途は明確にしておきましょう。
ピッチの重要ポイント
ここでは、実際にピッチする際に気をつけるべきポイントを解説します。
ピッチの重要ポイントは、以下の3点です。
- 最初からプロダクトやサービスの説明に入らない
- なぜ今なのか、なぜ自分たちだからこそできるのかを説明する
- 「短く」「シンプル」「根拠」の3本柱
1:最初からプロジェクトやサービスの説明に入らない
1つ目は、最初からプロダクトやサービスの説明をしないということです。
まずは、解決するべき課題がなにかを明示し、問題を解決することの魅力を伝える必要があります。
ピッチでは、市場や課題に対して、投資家に興味関心を持ってもらうことがなによりも大切なのです。
興味を持ってもらえなければ、自社の紹介するプロダクトやサービスの内容も頭に入ってこないと言っても過言ではありません。
まずは、投資家に興味関心を持ってもらうきっかけ作りから行うようにしましょう。
2:なぜ今なのか、なぜ自分たちだからこそできるのかを説明する
2つ目は、なぜ今なのか、なぜ自分たちだからこそできるのかを説明し、納得させるということです。
過去に同じ事業プランを考えた人はいるのか、競合との差や競合が見落としている点など、独自性も含め説明できるといいでしょう。
3:「短く」「シンプル」「根拠」の3本柱
投資家は、自社プロダクトに関する専門家ではありません。
専門的知識もなければ、最新の知見や市場の流れも分からないのです。
そのため、ピッチでは「中学生でも分かるように」説明することが大切だと言えるでしょう。
難しい表現は誤解を生んだり、論点がずれたりすると、自社が伝えたいことがぼやけてしまいます。
データや事例、解説図、定量的根拠を用いてわかりやすく説明するよう心がけましょう。
そのため、スライドは「1スライド1メッセージ+根拠」に気をつけて作成することをおすすめします。
まとめ
この記事では、ピッチとはなにか、投資家の興味関心を惹きやすいピッチ資料のポイントを解説しました。
ピッチの作成には労力と手間がかかりますが、ビジネスチャンスをつかめる可能性も秘めています。
記事内でお伝えした12個の構成要素を元に、投資家を納得させられるピッチが作成できることを祈っています。
資金調達のプロがお客様の状況をヒアリングした上で適切なアドバイスを致します。
- ・初めて資金調達を行いたい
- ・銀行借入を成功させたい
- ・国の資金調達制度を使いたい
- ・助成金、補助金の申請をしたい
- ・早急に資金が必要
- ・資金繰りの改善をしたい