ビジネスローン

資金ショートとは?ショートした場合どうなる?原因と対策を徹底解説

「資金ショート」という言葉は、多くの人が知っていると思います。資金ショートによって倒産に至ることも多いのですが、その原因や予防策など、具体的なことについては意外なほど知られていません。本稿では、経営者が必ず知っておくべき資金ショートの知識を徹底解説します。

資金ショートとはそもそもどういう状態?

資金繰りは、簡単に言えば「会社のお金のやりくり」のことです。資金繰りが続くうちは、会社は倒産しません。連続赤字、大口債権の貸し倒れ、債務超過、返済不能など、深刻な経営悪化には色々なパターンがあります。ですが、どのような深刻な事態に陥ったとしても、資金繰りが続く以上は会社が倒産することはあり得ないのです。

逆に言えば、業績がどれほど好調な会社でも、資金繰りが続かなければ倒産します。資金繰りが続かないことを「資金ショート(資金繰りショート)」といいます。

資金ショートとは、資金が不足すること(資金ショートの「ショート」は「short(不足)」)です。このように聞くと、「資金が不足すれば調達すれば良い」と考える人も多いでしょう。

ですが、それほど簡単なものではありません。なぜなら、色々な原因が積み重なって資金ショートに陥ることが多く、スムーズな資金調達が困難だからです。

また、突発的な原因によって資金ショートに陥ることもあります。この場合にも、緊急性の高さから、満足な資金調達ができないことが多くあります。

このため、資金ショートと倒産は密接な関係にあります。もちろん、資金ショートを起こしたからといって、即座に倒産するわけではありません。資金ショートを起こしても、資産の売却や大規模なリストラなどによって、事業を継続できることも多いです。しかし、資金ショートの結果、

  • 仕入先への支払いが滞って信用を失い、仕入れができなくなる
  • 支払手形が不渡りとなり、銀行取引停止処分を受ける
  • 銀行から融資を受けられなくなり、資金調達が困難になる

といった事態に高確率で陥ります。資金ショート後も事業を継続できる会社は少なく、資金ショートの末に倒産する会社が非常に多いのが現状です。

資金ショートを起こした会社は実質的な経営破綻状態になる可能性が高く、経営再建が極めて困難な状況に陥るといっても過言ではないでしょう。全ての会社にとって、資金ショートは何としても避けなければなりません。

したがって、資金繰りに問題がある会社は資金繰り改善に務め、資金繰りが良好な会社は資金繰りの維持とさらなる改善に務めることが重要になります。同時に、資金ショートに陥る原因や資金ショートを防ぐ方法を、正しく理解することが重要です。

資金ショートは債務超過や赤字とどう違う?

資金ショートを理解するためには、経営悪化を意味する他の用語と正しく区別することです。先に説明した通り、資金ショートによって実質的な破綻状態に陥ることも多いわけですが、これと混同しやすい用語に「債務超過」や「赤字」があります。債務超過や赤字は、資金ショートと深い関係にあり、内容を混同しやすいため注意が必要です。

資金ショートと債務超過の違い

債務超過とは、資産総額に対して債務総額が超過状態にあることです。貸借対照表の資産の合計金額と負債の合計金額を比較したとき「資産<負債」の関係にあり、資本がマイナスの状態です。

債務超過は、銀行融資では最大のタブーといわれています。債務超過ではない、つまり「資産>負債」の状態であれば、会社の保有資産を換金することで負債を全て返済することも可能です。

逆に言えば、債務超過とは「会社の資産で負債を清算しきれない状態」なのですから、返済力を重視する銀行が債務超過をタブー視するのも当然です。

もちろん、帳簿の上で債務超過状態でないにしても、資産と負債を正確に計算した場合に債務超過になる「実質債務超過」も非常に危険な状態とされます。

債務超過に陥った会社は、資金調達の軸となる「銀行融資」が困難です。債務超過でない会社の債務者区分は、円滑に融資を受けられる「正常先」に区分される可能性が高いのに対し、債務超過の会社はほぼ間違いなく「要注意先」以下に区分され、円滑な融資が困難になります。

出資や資産の売却、リストラなどによって資金繰りを続けられるうちは、経営の継続は可能でしょう。しかし、そのような延命措置がいつまで続くでしょうか。いずれ、資金ショートに陥る可能性が高いです。実際、「債務超過→資金調達の困難→手元資金の枯渇→資金ショート」という流れで経営が悪化していくケースは非常に多いです。

逆に、「資金ショート→債務超過」という流れは基本的に起こりません。債務超過でなければ資金調達できることも多く、すぐに資金ショートすることは考えにくいです。

このように、資金ショートと債務超過の違いは、「債務超過→資金ショート」の流れで考えると分かりやすいでしょう。

資金ショートと赤字の違い

赤字も、資金ショートとは異なります。赤字とは、支出が収入を上回ることです。例えば、売上が急激に減少すると、支出(出ていくお金)が、収入(入ってくるお金)を上回ることがありますが、これが赤字です。

資金ショートと赤字の違いを知るために、もう少し具体的に考えてみましょう。
収入が200、支出が150の会社では、差し引き50の黒字です。売上が急減して収入が100になった場合、支出が150のままであれば差し引き-50の赤字となります。

年間の収支が-50の赤字であれば、この-50は手元資金から補填する、銀行から赤字補填資金を調達する、資産を売却するなどの方法でカバーしなければなりません。赤字分の補填が続く限り資金ショートに陥ることはなく、経営を継続できます。

軽微な赤字や一時的な赤字であれば、なんとか補填して経営を続けることも可能です。しかし、大幅な赤字や連続赤字に陥った場合には危険です。債務超過に比べればマシですが、銀行の評価は厳しくなり、債務者区分も「要注意先」以下に転落するでしょう。赤字解消の具体的な取り組みを実施し、銀行の納得を得られなければ融資は困難です。

このように考えると、赤字は債務超過ほど深刻ではありません。債務超過の解消に比べれば、赤字の解消のほうが取り組みやすいのも事実です。

しかし、赤字も確実に悪材料となるため、銀行融資のハードルが上がります。赤字分だけ社内留保は確実に流出し、資金繰りも徐々に苦しくなるでしょう。

したがって、「連続赤字(または大幅な赤字)→資金調達の困難→手元資金の枯渇→資金ショート」という流れで、資金ショートに至る可能性は十分に考えられます。

このように、赤字と資金ショートは密接な関係にあります。ただし、赤字も債務超過と同様、「資金ショート→赤字」という流れは考えにくく、大抵は赤字の延長として資金ショートに陥ると考えてください。

資金ショートに陥る主な原因とは

資金ショートはなぜ起こるのでしょうか。原因は色々考えられます。ひとつの原因によって資金ショートに至る場合もありますが、実際に資金ショートに至った会社を見ると、複数の原因が複雑に絡み合って資金ショートに陥るケースが少なくありません。

資金ショートの原因をひとつひとつ理解し、備えることが大切です。

1.売上やシェアの急激な減少

資金ショートの原因として、最も分かりやすいのが売上の急減です。資金ショートの原因となる売上の減少には、2パターンあります。

  • 売上が長期的に減少して資金ショートに至る
  • 売上が短期間のうちに急減して資金ショートに至る

これらの2パターンです。
業種そのものが斜陽産業である、放漫経営によって売上改善の取り組みが不十分である、などの理由によって、売上が長期的に減少を続けることがあります。この問題の厄介なところは、減少幅が小さいだけに事態の深刻化に時間がかかることです。そのため改善の取り組みが遅れ、売上減少がズルズルと続いて会社をむしばんでいきます。

売上の減少が長く続けば、稼ぐ力が乏しいと見なされ、銀行融資も徐々に困難になっていきます。やがて赤字に転落したとき、赤字補填資金を調達できずに資金ショートを起こす危険があります。

抜本的な改善策があれば銀行の支援が期待できますが、業界そのものの成長力が乏しい場合や、経営者の能力が乏しい場合には困難となるので、。コンサルタントの協力などが欠かせません。

売上が急減する理由には、経済の急激な悪化や、シェアの急減などが考えられます。経済の急激な悪化であればいずれは収束が期待でき、公的支援も受けやすいため、コンサルタントとの連携によって資金ショートを防げるでしょう。

問題は、シェアの急減です。大手取引先とのトラブル、社会的な悪評、競合他社の急成長などによってシェアが急減した場合では、事態は深刻です。失ったシェアを回復するには時間もコストもかかります。売上減少に見合うだけのコスト削減や、資金繰り改善に取り組まなければ、資金ショートのボーダーラインをいずれ超えてしまうでしょう。

2.利益率の低下

売上の減少と合わせて考えるべき原因は、利益率の低下です。
上記の通り、売上減少は資金ショートの原因となりますが、より深刻なのは利益率が低く(あるいは利益率が低下し)、なおかつ売上が減少するパターンです。逆に、利益率が高い会社であれば、売上減少には耐性があるといえます。

  • A社:売上100に対して利益10(利益率10%)
  • B社:売上100に対して利益30(利益率30%)

上記の条件で比較した場合、A社は10を超える売上減少で赤字に転落しますが、B社は売上減少が30未満であれば黒字を維持できます。

利益率が低下するにつれて、赤字に転落するリスクが高まります。赤字にならないとしても、利益率が低ければ手元に残る現金が少なくなるので、手元資金を厚くして資金ショートに備えることも困難です。

たとえ売上を維持していても、利益率が低下すれば資金ショートのリスクが高まるので注意が必要となります。

3.予測できない大きな出費

売上や利益率に問題がない場合、予測できない出費に注意する必要があります。予測できない出費の代表例には、次の3つが挙げられます。

  • 災害の発生
  • 詐欺や使い込み
  • 取引先とのトラブル

災害には、想定外の出費がつきものです。災害によって資産を失えば、その補填に大きな出費を伴います。工場や店舗が一時的に閉鎖となれば、売上の急減も避けられません。

詐欺や使い込みは、意外に身近なものです。実際に、資金調達の際に詐欺に遭ったり、社員の使い込みが発生したりする会社が後を絶ちません。詐欺は、詐取された金額が膨らんで初めて気づくケースが多く、使い込みも金額が大きくなってから発覚するケースがほとんどです。つまり、事態が深刻化してから対処していくこととなります。

取引先とのトラブルも、大きな出費の原因です。取引先と訴訟問題になり、損害賠償を請求された場合には、予測していなかった出費が発生します。また、納期遅れや契約違反によって取引をキャンセルされ、売上がゼロになり多額の経費だけが残る、といったケースも考えられます。

これらの予測できない出費は、手元資金や資金調達でカバーする必要があります。それができなければ、資金ショートに陥ります。

災害は不可抗力ですから、銀行などから支援を受けられることが可能なケースがあります。しかし、社内管理の不備によって詐欺や使い込みが発生する、自社に起因するトラブルで損失が発生するなどの場合、銀行の悪印象は避けられません。資金調達が難航して、資金ショートに至る可能性もあります。

4.売掛金の入金遅延や取引先の倒産

売掛金の回収トラブルが、資金ショートを招くケースも非常に多いです。基本的に、会社の資金繰りは「手元資金」「収入」「支出」の3つの要素で成り立っています。

収入よりも支出が先行すれば、手元資金から支払います。手元資金が足りなければ資金調達でカバーし、その後の収入が手元資金に加わり、次回の出費に充てられる、といった繰返しです。

資金繰りの基本的な仕組みから考えると、売掛金の回収トラブルの深刻さがよく分かります。売掛金の入金遅延や回収不能は、手元資金・収入・支出の3つのうち、収入の減少を意味します。一方、支出は一定しており、手元資金は支出に応じて減少していきます。

したがって、売掛金の回収トラブルは資金ショートのリスクを高めます。短期間・少額の入金遅延ならばリスクは小さいですが、

  • 大口債権の大幅な遅延
  • 大口取引先の倒産による回収不能

などであれば、資金ショートの危険が非常に高くなります。後者の場合、連鎖倒産の恐れもあります。
さらに、売掛金の回収トラブルは長期的なリスクを含んでいます。支払いに遅れた売掛先は、経営が悪化している可能性が高く、与信限度額を縮小する必要があるでしょう。

売掛先が倒産した場合にも、売上の減少は避けられません。つまり、「売掛金の回収トラブル→売上減少による資金ショート」というリスクもあるのです。

5.コロナウイルスなど外的要因

コロナウイルス(以下、コロナ)などの外的要因も、資金ショートの原因となります。外的要因による資金ショートという意味では、上記の「災害による予測できない出費」にも似ていますが、コロナは例外と考えるべきです。

帝国データバンクが2021年9月29日に発表したデータによれば、コロナによる倒産件数は2,115件に上ります。飲食店、建設・工事業、ホテル・旅館といった業種での倒産が特に多いです。

飲食店やホテル・旅館の倒産を考えると分かりやすいでしょう。これらの業種は、一般消費者を相手に現金取引を行い、資金繰りを回しているケースが一般的です。緊急事態宣言などによって、客足が絶えると日銭が入ってこなくなります。したがって、「売上の急減による資金ショート」を引き起こす可能性が高いです。

現金取引が基本ですから、売掛金のファクタリングなどで資金調達することも難しく、先行きが不透明であるため計画的な資金繰りも困難です。

公的支援によってなんとか資金繰りを維持している会社も多いですが、一方で資金ショートを避けられず、倒産を余儀なくされるケースが後を絶ちません。公的支援を最大限活用するためにも、コンサルタントなどの専門家の協力が必要です。

6.その他の遠因

売上減少、利益率低下、外部要因などに比べると深刻ではないものの、資金ショートの遠因となるものがいくつかあります。資金ショートに陥る会社では、以下の複数の原因を抱えていることが多いため、これを機にしっかり理解しておきましょう。

6-1.過剰在庫・不良在庫の増加

在庫管理が不適切なために、過剰在庫・不良在庫が増加することがあります。これが資金ショートのリスクを高めます。

そもそも「適切な在庫管理」とは、過去の実績や将来の予測から確保すべき在庫をできるだけ正確に把握し、在庫を過不足のない状態に保つことです。このほか、確保する在庫に適した倉庫を選んだり、適切な品質管理に配慮したりすることも必要です。

在庫管理が不適切な場合、在庫が不足するよりも過剰になるケースが多いです。需給の見通しが甘い、流行の変化に鈍い、希望的観測によって仕入れるなど、色々な理由によって、実際に売れるよりも多くの在庫を確保し、過剰な在庫を抱えてしまいます。
過剰な在庫を抱えると、以下のように様々な問題が生じます。

  • 仕入代金が膨らんで資金繰りが苦しくなる
  • より大きな倉庫を確保する必要があり、賃料が高まる
  • 品質管理に労働力やコストが余分にかかる
  • 売れ残った在庫が品質悪化や陳腐化によって不良在庫となり、価値が大幅に低下する
  • 過剰在庫を処分するために大幅なディスカウントが必要となり、売上と利益率の低下を招く

このように、過剰在庫・不良在庫は資金繰りを圧迫し、資金ショートのリスクを高めます。銀行融資の際にも、在庫を問題視されて不利に働くことが多いです。

6-2.仕入債務の増加

仕入債務の増加も、資金ショートを招きます。
過剰在庫に陥る場合、必要以上に仕入れるため仕入債務が増加します。資金繰りの軸となる手元資金・収入・支出のうち、支出が大きくなるのです。当然、資金繰りは苦しくなります。

もっとも、仕入債務増加の原因は過剰在庫だけではありません。例えば、仕入先との取引条件によって仕入債務が増加します。支払サイトを延長する努力をしなければ、仕入先の希望によって支払サイトが短くなる可能性が高いです。支払サイトの短縮は仕入債務の増加を意味します。

また、売上の増加も仕入債務増加をもたらします。売上の増加には仕入れの増加が必須であるため、仕入債務が増加してしまいます。売上減少は資金ショートの原因となりますが、売上増加(に伴う仕入債務の増加)も資金ショートの原因となります。これが資金繰りの難しいところです。

6-3.過剰な設備投資

過剰な設備投資の結果、資金ショートに陥る会社も多いです。設備投資の際には、必ず計画を立てます。大型の設備投資の場合、費用は銀行から調達します。

設備導入後、当初の計画通りに稼働すれば問題ありません。売上や利益率の改善も期待でき、資金ショートのリスク軽減につながります。

しかし、計画通りにいかなければ、資金ショートのリスクが大幅に上昇します。特に、過剰な設備投資によって計画が破綻するケースが多いです。

設備投資のために多額の融資を受けているため、長期間にわたって返済負担を強いられます。過剰に投資しているならば尚更です。稼働率が極端に低い場合、投資設備がもたらす収益では返済負担をカバーできなくなります。この赤字分が大きいほど、資金ショートのリスクが高まります。

導入した以上、定期的なメンテナンスも必要です。故障の際には修理費用もかかります。過剰設備によって多くの出費を迫られるのですから、資金ショートのリスクは明らかです。

6-4.借入金の増加

過剰・不良在庫の増加、仕入債務の増加、過剰な設備投資の全てに共通するのが、借入金の増加です。
過剰な仕入れによって仕入債務が増加すれば、経常運転資金が膨らみます。経常運転資金は銀行から調達するのが基本ですから、必要な借入額も増えることとなります。

もちろん、過剰な設備投資も同様です。設備投資には多くの資金が必要であり、過剰になるほど必要資金が膨らむので、借入金の大幅な増加は避けられません。

借入金が増加すれば、返済負担も大きくなります。また、銀行から調達できる資金には限界があり、債務超過に近づくにつれて資金調達が困難になります。やがて、必要資金を調達できず資金ショートに陥るかも知れません。

資金ショートに陥るとその後どうなる?

資金ショートの原因をみてもわかる通り、資金ショートには次の2種類が存在します。

  • 慢性的な原因による資金ショート
  • 突発的な原因による資金ショート

実際には、慢性的な原因によって資金ショートの危険性が徐々に高まっていき、やがて突発的な原因に見舞われて資金ショートに陥ることが多いです。資金ショートに陥っても、必ず倒産するとは限りません。

  • 銀行に返済できなくなって信用を失い、資金調達が困難になる
  • 手形の不渡りで銀行取引停止処分を受ける
  • 仕入先が与信管理を厳しくし、現金払いしか受け付けてくれなくなる

このような事態を招くため、経営が困難になります。経営を継続できなくなる可能性も高いです。
例えば、

  1. 過剰在庫や借入過多によって資金繰りが悪化し、資金が慢性的に不足する
  2. 大口債権が回収不能になり、資金ショートが決定的になる
  3. 仕入先への支払いができなくなり、在庫の確保が困難になる
  4. 銀行への返済が滞って債務者区分が悪化し、追加融資を受けられなくなる
  5. 経営の継続が困難になり、倒産に至る

といった流れが一般的です。倒産に至った後には、

  • 破産して会社を閉じる
  • 会社更生法もしくは民事再生法の適用によって会社を継続する

という二つの道しか残されていません。
前者の場合、裁判所に申し立てて破産宣告をしてもらい、会社の財産を全て処分して債権者に分配します。破産に至るまでに会社の財産は大部分を消耗しているため、債権者は数%しか回収できないのが普通です。これを以て、債権者は債権を放棄することとなります。

後者の場合、会社更生法も民事再生法も内容はあまり変わりません。管財人もしくは経営者の手によって会社再建を目指します。

いずれを選ぶにせよ、資金ショートによって倒産した会社は、苦しい道をたどるといえます。

資金ショートに陥らないために対策すべきこと

破産(もしくは再建)という悲惨な結末を避けるためには、何としても資金ショートを防ぐ必要があります。
資金ショートの原因は既に解説していますが、それらの原因を防ぐことで、資金ショートを避けることができます。ここからは、その具体的な方法をみていきましょう。

1.自社の経営状況を分析する

資金ショート対策の前提として、自社の経営分析が必須となります。
先に解説した通り、資金ショートの原因は複数あります。ひとつの原因が資金ショートをもたらすこともありますが、基本的には複数の原因が複雑に絡み合っており、資金繰りへの影響度も様々です。詳細な経営分析を出発点としなければ、原因を見落としたり、改善の優先順位を誤ったりする可能性が高いです。

当然ながら、資金ショートの危険がある会社では、資金繰り管理がうまくいっていません。適切な経営分析によって、資金ショートの原因を洗い出すことも困難です。

したがって、自社だけで経営分析に取り組むのではなく専門家の手を借りるべきで、資金繰り専門のコンサルタントなどに依頼するのが良いでしょう。

コンサルタントに依頼すれば、資金繰りの問題点を正確に洗い出すことができます。資金繰り改善を進める過程で、節税対策の誤りや、活用すべき助成金が分かるケースもあります。

その場合には、税理士や社労士などの専門家にも助けを求めましょう。資金繰り改善がスピードアップし、資金ショートの危険を遠ざけることができます。

2.請求漏れ・未入金の確認

経営分析の結果、請求漏れや未入金の放置が発覚する会社が多いことがあります。
資金ショートの大きな原因である「売掛金の入金遅延」を防ぐためには、請求漏れや未入金を放置せず、徹底的に解消することが大切です。これにより、二つの効果が期待できます。
一つ目の効果は、

  • 既に支払い期日を過ぎているものの、請求を忘れていた売掛金
  • 過去に支払い期日の延長交渉を受け、遅延がずるずる続いていた売掛金

などに漏れなく請求をかけることで、未回収だった売上を回収できることです。
単なる請求漏れであれば、予定通り回収できることが多いです。売掛先の経営悪化によって未入金の状態が続いている場合、諦めて放置する会社が少なくありませんが、それでも諦めずに請求し続けてください。

これにより、一部だけでも回収できることがよくあります。また、厳しく請求を続けてこそ、他の債権者より自社を優先して支払ってくれる可能性も出てきます。

二つ目は、支払い遅延の予防効果です。
売掛先の対応に限らず、普段から漏れなく請求書を発行し、支払いの遅れに厳しく対応することで、売掛先に緊張感が生れます。売掛先の資金繰りが悪化して支払いが困難になった場合、「あの会社(自社)はうるさいから、必ず期日通りに払わなければ」と思わせる効果があります。

請求漏れや未入金に厳しく取り組むことで、資金ショートのリスクを着実に下げることができます。

3.営業管理の見直し

利益率や仕入債務、在庫などの推移も、経営分析によって容易に把握できます。もし、利益率の低下や仕入債務・在庫の増加が続いているなら、営業管理の見直しが必要です。

健全な資金繰りのためには、社内の各部門との連携がうまく取れていることが重要です。とりわけ、営業部門の暴走は資金ショートのリスクを高めます。例えば、営業部門が他の部門との連携を省みず、売上アップだけを目指して独走するようなケースです。この場合、

  • 利益率が低下する(売上目標達成のために、採算性を度外視する傾向があるため)
  • 仕入債務が増加する(売上アップのためには仕入れを増やす必要があるため)
  • 過剰在庫に陥る(売上アップに合わせて少しずつ在庫を増やすのではなく、将来的な売上アップも織り込んで在庫を確保する傾向があるため)

といった状況に陥ります。この3つは、全て資金ショートの原因となり、極めて危険な状況であるといえます。売上至上主義の会社が、資金ショートに陥りやすい理由もここにあります。

このような兆候を掴んだら、即座に営業部門にメスを入れてください。営業管理の見直しによってこれらの原因を取り除き、資金ショートを防ぐことができます。

4.過剰な在庫の売却

3の予防策とリンクしますが、過剰在庫が明らかになった場合には、営業管理を見直すと同時に在庫を処分してください。
過剰な在庫を積極的に処分することは、在庫管理の手始めに最適です。処分というからには、仕入れ当初に見込んでいた売値にこだわらず、ディスカウントして売却することも考えましょう。

本来予定していなかったタイミングで、予定以上の数量を捌くのですから、どうしても売値を下げるなどの工夫が必要となります。利益率の低い商売ならば、多少の赤字も覚悟しなければなりません。

赤字を被っても、過剰在庫を放置するよりはマシです。資金ショートを防ぐことが最大の目的であって、時間をかけて在庫を処分するのは間違いです。時間をかけるほど在庫が陳腐化し、商品価値が目減りするリスクもあります。損切りをする気持ちで、拙速に取り組むことがポイントです。

これを機に在庫管理を見直せば、長期にわたって過剰な仕入れを防ぐ体制が整います。また、倉庫サイズの縮小によって賃料が安くなれば、固定費削減にもつながります。

過剰在庫の処分は、長期的に資金繰りへのメリットがあり、資金ショート予防に効果的な方法となります。。

5.遊休資産の処分

見落としがちなのが遊休資産です。特に、業歴の長い会社は、先代以前に取得した資産が全く活用されておらず、現在の経営者は存在さえ知らないといったケースがあります。

経営分析の際には、資産内容も詳しく調査するはずです。この時、遊休資産に目を光らせておきましょう。
遊休資産は、長期にわたって使われていない資産ですから、事業への貢献度はほぼゼロといえます。しかしながら、価値が全くのゼロということは少ないため、売却して資金化しましょう。

遊休資産を売却すれば、帳簿から遊休資産が消えます。これがオフバランス化につながり、「資産を持つことによって生じる(資金ショートその他の)リスク」を軽減できます。

資産の種類にもよりますが、多くの資産には「保有するリスク」があります。例えば、

  • バブル期に取得したゴルフ会員権に毎年会費を支払っている
  • 全く活用していない不動産に固定資産税がかかっている
  • 稼働していない機械が倉庫の一角を占めており、在庫管理コストが余分にかかっている

といった場合、これらの資産を保有しているだけでコストが発生するというリスクがあるのです。速やかに処分して、資金ショートの予防に役立てる方が得策です。

6.取引先への支払いを待ってもらう

5までは、様々な改善によって資金ショートを未然に防ぐ方法です。6以降は、いよいよ資金ショートが迫った場合の対処を解説します。

まず、取引先の支払いが迫っており、どうしても支払いが困難な場合には、取引先に支払いを待ってもらう必要があります。このとき、必ず守るべきポイントは、次の2つです。

  • 自社の状況を正直に伝える
  • 信用できる取引先を頼る

取引先の悪印象を恐れ、自社の状況を正直に伝えない会社が非常に多いのですが、それは間違いです。正直に伝えたほうが、理解が得られる可能性は高いといえます。もちろん、資金ショートの原因にもよりますが、例えば、

「売掛先からの入金予定が遅れていて…」
「××(外部要因)で材料価格が高騰して、資金繰りの調整に少し時間がかかっていて…」

など、正直に伝えることで自社の責任が軽くなり、悪印象を避けられることも多いものです。

このとき、信用できる取引先を選んで交渉することが必要事項となります。信用できる取引先ならば、交渉に応じてくれる可能性が高いです。また、他の取引先などに情報が漏れる可能性も低くなります。

交渉に成功して支払いを先延ばしできれば、その間に資金を調達したり、売掛金を回収したりすることで支払いを間に合わせ、資金ショートを避けることができます。

7.税金や社会保険料の支払いを待ってもらう

税金や社会保険料の支払いを待ってもらうのも効果的です。
税金や社会保険料の支払いと、仕入債務などの支払いのタイミングが重なることがあります。このとき、手元資金が不足していると資金がショートします。

税金や社会保険料が未納状態の会社は、銀行融資などの資金調達が困難となるため、税金や社会保険料はできるだけ優先して支払うべきです。しかし、「税金・社会保険料」「仕入債務」の2択を迫られた場合には、仕入債務を優先して取引先の信用を維持すべきでしょう。

税金と社会保険料は、納付期限から6ヶ月以内であれば猶予を申請できます。特にコロナ禍の現在、国税庁や厚生労働省は猶予申請に寛大な対応をとっており、申請が通る可能性は高いでしょう。

猶予を申請して税金と社会保険料の支払いを先送りすれば、ひとまず資金ショートを避けられます。もちろん、コンサルタントなどを活用しながら、早急な立て直しに取り組むことが必須となります。

8.リスケジュールを行う

消極的な方法に思えるかもしれませんが、リスケジュールも資金ショートを回避するための効果的な手段です。
リスケジュールとは、借入先の金融機関に返済計画の見直しを要求することです。制度としては毎回の返済元金を減額(返済期間の延長)したり、元金返済を一時的にストップしたりと、様々なリスケジュールが考えられます。

基本的には、元金返済を一時的にストップして利息の支払いのみとし、経営改善後に元金返済をリスタートする方向で調整します。

借入金額が多い会社では、リスケジュールによって元金返済を据え置くことで、支出を大きく減らすことができます。ただし、リスケジュール中と、リスケジュール完了後の一定期間(一般的には1年間)は、銀行融資を受けられないため注意が必要です。

コンサルタントと相談しながら、リスケジュールによって資金ショートを避けるべきと、判断した場合に限って利用しましょう。

9.手形割引やファクタリングで現金を確保

資金ショートは、資金が枯渇して支払えなくなることですから、資金調達が続く限り資金ショートを避けられます。資金調達の軸は銀行融資が有効ですが、必ずしも銀行融資にこだわる必要はありません。

銀行融資で調達できず、資金ショートの危険が迫った場合には、すぐに取引先への交渉、税金や社会保険料の猶予申請などを行い、リスケジュールに踏み切るのではなく、他の資金調達を検討してみるべきです。

多くの会社で活用できる方法に、手形割引とファクタリングがあります。手形割引は受取手形を、ファクタリングは売掛金を早期資金化する方法です。

これらの方法は、銀行融資などの外部資金調達ではなく、自社の保有資産から調達する内部資金調達にあたります。売掛債権を保有しているならば利用できる可能性が高く、資金ショート回避に役立ちます。

資金ショートのリスクを抑える経営が大切

ここまで、資金ショートの原因や予防策について解説してきました。これらの知識を十分に身につけ、資金ショートを回避することが大切です。

しかし、それ以上に大切なのは「資金ショートを起こさない経営(資金ショートのリスクを低く抑える経営)」を心がけることです。そのためには、計画的な資金繰りを心がけるようにしましょう。

資金繰りに計画性があれば、資金ショートは起こりにくくなります。逆に言えば、資金ショートを起こす会社の多くが、無計画な資金繰りによって資金ショートに陥っています。

資金繰りは、半年~1年後までの計画を立てておくのが理想的です。資金繰り計画によって、次のことを確認することができます。

  1. 月初の手元資金
  2. 月間の収入のタイミングと金額
  3. 月間の支出のタイミングと金額
  4. 月末の手元資金

もし、計画の上で資金が不足することが分かれば、そのタイミングに合わせて資金調達の計画も織り込みます。この流れを作ることで、資金ショートの可能性を徹底的に排除していくのです。

もちろん、将来的な資金繰り計画は予測に基づくものですから、完璧ではありません。しかし、それが資金繰り計画のメリットでもあります。不完全であることを前提に計画を立てておくと、例えば「最悪、売上がこれだけ急減しても資金ショートは回避できる」といった計画も立案できます。

資金繰り表の作成は難しいものではなく、簡易的なものでも役立ちます。コンサルタントなどに依頼し、詳細な資金繰り計画を立案すればなお良いでしょう。資金繰り計画を立てていない会社、あるいは計画がずさんで機能していない会社は、すぐにでも取り組むことをおすすめします。

まとめ

本稿では、資金ショートの基礎知識、原因と予防策、資金ショートを起こさない経営の在り方などを詳しく解説しました。本稿の内容に沿って経営すれば、資金ショートが起こる可能性を抑えることができるでしょう。

しかし、実際の経営はそれほど簡単なものではありません。資金ショートのリスクを理解していても、原因を取り除いたり、予防策を講じたりするには様々な困難を伴います。

無理なく、効率的に取り組むためには、専門家の協力が必要です。資金ショート回避と資金繰り改善はセットになるのが普通となるので、資金繰りや資金調達を専門とするコンサルタントに依頼するのがおすすめです。
無料相談を受け付けているコンサルタントもあるので、積極的に活用していきましょう。

おすすめ記事
『知っておくべき資金調達の方法を徹底解説』

お問い合わせ

資金調達のプロがお客様の状況をヒアリングした上で適切なアドバイスを致します。

  • ・初めて資金調達を行いたい
  • ・銀行借入を成功させたい
  • ・国の資金調達制度を使いたい
  • ・助成金、補助金の申請をしたい
  • ・早急に資金が必要
  • ・資金繰りの改善をしたい
無料資金調達のご相談はこちら

資金調達コンサルティングについての詳細、メリットなど選び方の紹介はこちら