不動産担保融資

融資に役立つ担保と抵当権の基礎知識

銀行融資を受ける際、経営内容の良い会社は無担保融資を引き出すことができます。しかし、中小企業の多くは無担保融資を受けられず、会社の預金や不動産、経営者自身の持ち家などを担保に入れることが多いです。
なぜ銀行は担保を好むのでしょうか。抵当権とは何なのでしょうか。
本稿で、担保と抵当権の基礎知識を学んでいきましょう。

融資と担保の関係

銀行融資を受ける時、担保の有無を気にする人は多いことでしょう。借りる側としても、貸す側としても、無担保・有担保の違いは大きいです。
無担保融資という言葉があることからも分かりますが、担保が無くても融資を受けることは可能です。しかし、中小企業では銀行から担保を求められることが少なくありません。特に、設備資金など多額の融資である、会社の業績や財務に問題があるといった場合にはなおさらです。

保全策としての担保

なぜ銀行は担保を求めるのでしょうか。これは、銀行が融資を実行する際には、貸し倒れリスクへの対応のために「保全」が重要となるからです。

保全とは、貸し倒れリスクへの備えを意味します。銀行が中小企業に融資する場合、少なくとも数百万円、通常は数千万円単位で貸し付けます。業容が大きい会社の運転資金や設備資金では、億単位での融資になることも多いです。

融資実行時は業績・財務に大きな不安がない会社でも、融資額が大きくなるほど貸し倒れリスクは高まります。1年後や2年後ならばある程度見通しをつけることもできますが、5年後、10年後となると不確定要素が多くなります。融資実行時は経営が安定しているからといって、その会社が10年後も安定している保証はどこにもないのです。

融資額が大きくなれば、返済期間も長期化します。つまり、返済期間中に経営が悪化し、返済不能に陥るリスクも高まるというわけです。

このような万が一のリスクに備えるのが保全です。現時点で経営に問題がある会社ならば、保全を一層強化する必要があります。保全がなければ融資しないという判断も十分にあり得ます。
これが、銀行融資で担保が求められる理由です。

抵当権とは?

担保を理解する上で欠かせないのが、抵当権の知識です。
担保には、抵当権や質権などの物的担保と、保証人や連帯保証人などの人的担保があります。銀行融資において単に「担保」という場合、多くは物的担保を指します。正確には、物的担保とは、

「返済不能に陥った場合に備えて、不動産などの資産に抵当権を設定すること」

という意味です。
ここで、「抵当権」というキーワードが出てきました。簡単に言えば、抵当権とは担保を処分した際に、優先的に弁済を受ける権利のことです。

融資の際に担保を提供すると、自社と銀行の間で抵当権設定契約を結びます。これにより、提供した担保に抵当権が設定されます。その後、債務不履行に陥った場合、銀行は担保を処分して貸付金の回収を図ります。これを「抵当権の実行」といいます。

会社が倒産すると、会社の財産は全て処分・換金され、債権の内容に応じて債権者に分配されます。当然、不動産なども処分されますが、その不動産に抵当権を設定している場合には、他の債権者に先んじて弁済を受けることができるのです。

抵当権実行の具体例

具体例で考えてみましょう。
A銀行は担保価値5,000万円の不動産を担保として、a社5,000万円の融資を実行しました。返済期間中にa社が倒産し、3,000万円の残債が残りました。そこで、A銀行は担保物件を処分します。

物件は、担保価値通り5,000万円で売却できました。A銀行は抵当権の実行により、他の債権者より優先して3,000万円の弁済を受けることができます。

a社は、このほかにB銀行からも3,000万円を借りていました。しかし、B銀行は無担保で融資していたため、抵当権を設定していません。他にも、a社から買掛金を受け取っていない取引先など、複数の債権者がいるはずです。

A銀行が弁済を受けた後に残った2,000万円が、B銀行やその他の債権者に分配されます。

普通抵当と根抵当

さらに、抵当権の基礎知識として、「普通抵当」と「根抵当」の違いを知っておく必要があります。
同じ抵当権でも、それが普通抵当か根抵当かによって、融資の流れや抵当権の扱いがまるで変わってきます。

普通抵当のしくみ

普通抵当とは、債権と抵当権が1対1の関係にある抵当です。
例えば、3,000万円の融資を受ける時、時価3,500万円の土地を担保として提供し、この土地に普通抵当を設定したとします。この場合、担保価値の3,000万円に対して普通抵当が設定され、担保余力500万円には抵当権が設定されません。

担保余力500万円の部分は、余力に応じて追加融資に利用できます。しかし、普通抵当を設定した部分については、返済が進んでも担保余力と見なされません。
1,000万円返済しても、「普通抵当2,000万円、担保余力1,500万円」となるわけではなく、あくまでも「普通抵当3,000万円(うち1,000万円返済済み)、担保余力500万円」と考えます。

普通抵当の抵当権が外れるのは、3,000万円の融資を完済したときです。つまり債権と抵当権の関係が「債権(1)対抵当権(1)」から「債権(0)対抵当権(0)」になったときです。
抵当権が外れた後は、再びこの土地を担保価値3,500万円の資産として活用できるようになります。

根抵当のしくみ

根抵当は、債権と抵当権が「複数対1」の関係にある抵当です。
普通抵当と比べてみましょう。
担保価値3,500万円の土地を担保に入れて根抵当を設定した場合、担保価値の範囲内で融資できるものと考えます。この場合、3,500万円を極度額として、

  1. 1,000万円の融資を受けた⇒あと2,500万円の借入れが可能
  2. 1,000万円の追加融資を受けた⇒あと1,500万円の借入れが可能
  3. 500万円の追加融資を受けた⇒あと1,000万円の借入れが可能
  4. 500万円を返済した⇒あと1,500万円の借入れが可能

というように、極度額の範囲内で繰り返し借入れができるのです。
この例では、抵当権(1)に対して、1.の1,000万円と2.の1,000万円を合わせて債権(2)の状態となります。これが、根抵当の「複数の債権に対してひとつの抵当権」の関係です。

もう一つの特徴は、根抵当では完済しても抵当権が外れないことです。上記の4.の後、追加融資を受けることなく1.2.の計2,000万円を返済すれば残債は0円になります。しかし、これは根抵当によって借入余力3,500万円の状態になるだけで、抵当権は外れないのです。

物的担保にも色々

担保や抵当権といった言葉は、経営者ならば日常的に使っていることでしょう。しかし、基礎知識の範囲で考えても奥が深く、融資と密接な関係にあることが分かります。

融資の際に担保の提供を受け、抵当権を設定しておくことによって、銀行の貸し倒れリスクが大幅に下がります。担保価値の範囲内で融資すれば、経営に不安のある会社にも融資しやすくなるのです。

日本では、バブル期の土地本位制の名残によって、今でも担保といえば不動産担保のイメージが強いです。このほか、担保としてのイメージは強くありませんが、預金も保全と見なされることが多く、定期預金はかなり使い勝手の良い担保と考えられます。

とはいえ、不動産が担保資産の代表であることは間違いありません。不動産に頼った金融構造は、世界的にはかなり遅れている状態といわれています。特に欧米では不動産担保以外にも有価証券、売掛債権、動産などもごく一般的に担保として扱われています。
近年では、日本でも不動産以外の担保利用が広がっており、売掛債権担保融資などは徐々に知られるようになってきました。

日本は人口が減少傾向にあり、長期的には不動産担保が機能しにくくなっていくでしょう。これを見越して、不動産担保に依存した状況を変えようとする流れも徐々に強くなっています。
担保といえば不動産、というイメージを持っている人も多いでしょうが、今後は他の資産の担保利用も広がるはずです。自社の資産を最大限活用して資金を調達するためにも、不動産以外の担保利用も模索していきましょう。

まとめ

銀行は、保全策として担保を求めることがあります。自社としても、無担保融資が難しい状況であれば、担保は積極的に活用していきたいものです。担保を求められた場合には、自社の経営に問題がある可能性が高いため、資金調達に一層の工夫が必要です。

特に、これまで無担保融資が当たり前だった会社で、急に担保を求められた時には要注意です。銀行が急に態度を硬化させているのですから、銀行との関係維持のために経営改善に取り組む必要があります。
コンサルタントなどの支援も受けつつ、的確に、効果的な取り組みを実施していきましょう。

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