皆さんは「つなぎ資金」がどのような資金であるか、正しく理解しているでしょうか。つなぎ資金を正しく理解し、効果的な資金調達方法を知っておくことにより、資金繰りの安定性を高めることができます。
本稿では、つなぎ資金の基礎知識とおすすめの調達方法について、詳しく解説します。
つなぎ資金とは?
事業資金のひとつに「つなぎ資金」があります。つなぎ資金とは、その名の通り資金繰りを一時的につなぐ資金のことです。
あくまでも一時的なつなぎの資金ですから、経常的に発生するものではありません。つなぎ資金が必要になるのは、
- 売掛先の支払いが遅れ、それをあてにしていた支払いができなくなった
- 売掛先が倒産して売掛金が回収不能になり、その後の支払いが困難になった
- 訴訟を起こされて賠償責任が生じ、予定していない出費を迫られた
などです。このように、つなぎ資金は「収入や支出に想定外の変化が起こった場合の必要資金」を意味します。
つなぎ資金の具体例
つなぎ資金の具体例を見てみましょう。
- 1ヶ月後に1,000万円の入金を予定している
- 1.5ヶ月後、1,000万円の支払いがある。1の入金で支払うつもりである
- 売掛先の倒産により、1の入金がゼロになった
- 手元資金は500万円しかなく、2の支払いに500万円足りない
- 銀行から500万円の融資を受け、2の支払いをカバーする
1~5まで色々な性質のお金が出てきますが、5で銀行から借りた資金がつなぎ資金です。つなぎ資金の調達によって2の支払いが可能となり、資金繰りをつなぐことができます。
混同しやすい運転資金とは?
つなぎ資金と混同しやすいのが運転資金です。運転資金は、収入と支出のタイミングのズレを埋め合わせるための資金です。例えば、
- 1,000万円の売上の入金が2ヶ月後
- 1,000万円の仕入代金の支払いが1ヶ月後
- 手元の現金が500万円
という場合、1ヶ月後の支払いに500万円足りません。2ヶ月後の入金まで待ってもらえれば売上代金で支払うことができますが、支払いに遅れると信用を損ないます。健全な事業の運転には、1ヶ月後の支払いに備えて500万円を調達しておく必要があり、これを運転資金といいます。
回収サイトと支払サイトのギャップがゼロにならない限り運転資金は常に必要になるため、運転資金のことを特に経常運転資金と呼ぶこともあります。
経常性の有無を考えると、想定外の事態によって生じるつなぎ資金とは異なることが分かるでしょう。
増加運転資金とも違う
もうひとつ混同しやすいのが、増加運転資金です。普通、運転資金と表現する場合には経常運転資金を意味しますが、運転資金は複数に細分化でき、増加運転資金というものもあります。
常に必要となる経常運転資金に対し、増加運転資金は「売上の増加によって必要資金が増えた時の増加分」を指します。例えば、
- 経常的に1,000万円の運転資金を必要としていた
- その後、売上が拡大した。仕入れなどの経費が高まり、必要な運転資金は2,000万円に増加した
という場合、売上増加後の運転資金は従来の運転資金に比べて1,000万円増加しています。この増加分1,000万円を増加運転資金といいます。
増加運転資金は、売上拡大に資金繰りが追い付かないことによって発生します。一時的といえば一時的な性質であるため、つなぎ資金に似ています。
しかし、つなぎ資金は想定外・突発的な変化に対応するものです。意識的に売上を伸ばした結果として生じる増加運転資金とは、根本的に発生の原因が異なります。
経常運転資金や増加運転資金と比較すると、つなぎ資金の特徴が理解しやすいと思います。
つなぎ資金の調達方法
つなぎ資金の調達方法は、大きな考え方では通常の資金調達とそれほど変わりません。軸となるのは銀行融資、銀行から調達できなければノンバンクからの調達や資産の売却などを検討します。
通常の資金調達と異なるのは、つなぎ資金の発生事由によっては、公的な支援のもと融資を受けられる可能性があることです。
そのことも含めて、つなぎ資金の調達方法をみていきましょう。
銀行から調達する
つなぎ資金を調達する場合、経営内容が特に良い会社や、必要なつなぎ資金の金額が小さい会社、あるいはつなぎ資金の発生事由が深刻でない場合、銀行からの調達も十分に可能です。
まずはプロパー融資での借入れを模索し、それができなければ信用保証協会の保証付きで融資を受けることを考えます。信用保証協会の保証枠に余裕がなければ、日本政策金融公庫からの借入れを検討してください。
コロナ禍の昨今のように、急激な経済の悪化によってつなぎ資金が必要になった場合には、政府の支援が期待できます。実際、2020年4月に金融庁は民間金融機関に対し、つなぎ資金による支援を要請しています。
具体的には、民間金融機関が事業者に融資したつなぎ資金について、日本政策金融公庫が可能な限り借り換えに応じるとしています。つなぎ資金の貸し倒れリスクが高まった場合、民間金融機関から日本政策金融公庫に借り換えるならば、貸し倒れリスクも民間金融機関から日本政策金融公庫に移ります。これにより、民間金融機関は経営が危ない会社に対して、つなぎ資金を融資しやすくなるのです。
つなぎ資金を調達する際、政府の支援を受けられるならば、利用しない手はありません。
ノンバンクから調達する
銀行からの調達が不可能であれば、ノンバンクからの調達を検討しましょう。これは、銀行から融資を拒否された場合だけではなく、時間的に余裕がない場合も含まれます。
銀行は、融資実行までに数週間以上の期間を要します。政府が支援している状況では、さらに長い期間を要することも多いです。多くの会社で資金繰りショートの危険が高まり、つなぎ資金を必要としているため、銀行につなぎ融資の申し込みが殺到するからです。
いくら政府が支援しても、銀行の処理能力には限界があります。平常時の銀行融資より長い時間がかかるのも当然です。
つなぎ資金は突発的に発生する資金であり、できるだけスピーディに調達するのが好ましいです。このため、融資実行に時間がかかる銀行では間に合わないことも考えられます。
そこで、銀行よりスピーディに融資してくれるノンバンクが役立つというわけです。ノンバンクならば、これまでの利用状況、現在の財務状況、借入希望額などにもよりますが、最短即日で融資を受けられることもあります。
つなぎ資金調達に時間をかけられない場合には、ノンバンクを積極的に利用しましょう。ただし、ノンバンクの金利は高く、銀行からの評価にも悪影響です。したがって、できるだけ短期間で返済することが大切です。
手形割引・ファクタリングで調達する
ノンバンクと同じく効果的なのが、手形割引やファクタリングなどの売掛債権を資金化する方法です。
ほとんどの会社は掛取引をしているため、手元には常に受取手形や売掛金があるはずです。それらを資金化することで、まとまった資金を調達できます。
手形割引やファクタリングは借入れではなく、手形の振出人や売掛先の信用力だけが審査されます。このため、自社が銀行融資を受けられない問題を抱えていても、手形の振出人や売掛先に問題がなければ利用でき、柔軟に活用できるのがメリットです。
また、スピード感ではノンバンクを上回ります。特にファクタリングのスピードはあらゆる資金調達方法の中でも突出しており、優良業者の多くが即日で(場合によっては数時間で)対応しています。
銀行からのつなぎ資金調達が難しい場合には、手形割引・ファクタリングでの調達も検討してみてください。
まとめ
本稿では、つなぎ資金の性質や類似の資金との違い、調達方法について解説しました。
経常運転資金や増加運転資金とは異なり、つなぎ資金は想定外のタイミングで発生します。それだけに、スピーディな資金調達が必要になることも多いです。
基本的には銀行融資がベストですが、時間的な兼ね合いを考えた場合、ノンバンクやファクタリング・手形割引などによる資金調達も検討しましょう。
その時々の状況に合わせて、効果的な方法で調達するためには、専門的な知識が必要です。コンサルタントなどの専門家に相談することで、却って素早い調達が可能になることもあるため、コンサルティングも検討してみることをおすすめします。
資金調達のプロがお客様の状況をヒアリングした上で適切なアドバイスを致します。
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