資金調達

保証料の支払いが苦しければ分割払いも可能。その際の注意点

保証付融資では、信用保証協会に対して保証料を支払います。借入額が大きい場合には、保証料の負担はそれなりに大きいものとなります。そこで考えたいのが、保証料の分割払いです。
あまり話題にならないものの、保証料は分割払いが可能です。しかし、分割払いにはリスクも伴います。
本稿で、分割払いの仕組みや注意点について学んでいきましょう。

保証料の負担

銀行融資で資金を調達するとき、プロパー融資ではなく保証付融資によって借り入れるならば、調達コストは高くつきます。銀行に支払う金利のほか、信用保証協会に支払う保証料が発生するためです。
保証料は、以下の複数の要素から保証料率を決定し、保証期間や返済回数も考慮した上で算出されます。

  • 保証内容
  • 保証付融資での総融資額
  • 決算書の内容

 

どれくらいの負担が生じる?

 保証料によって、会社にはどのくらいの負担が生じるのでしょうか。具体的な数字で考えてみましょう。
 保証期間が10年、融資額が5,000万円の場合の平均保証料率は1.55%とされます。10年間にわたって毎月分割返済するならば、保証期間は120ヶ月(返済回数は120回)です。
 東京信用保証協会では、分割返済回数によって決定される分割係数を、25回以上の場合に0.55(均等分割係数)としています。したがって、保証料は、以下の計算式で求められます。

融資額×保証料率×保証期間(月数)÷12×分割係数

5,000万円×1.55%×120÷12×0.55=426万2,500円

となります。
 5,000万円を調達するために、その約1割に近い保証料が必要になるのです。保証料の負担は非常に大きいと考えるべきでしょう。

保証料は一括払いが基本

 保証料の支払いは、融資実行時に一括払いを基本とします。東京信用保証協会の案内にも、「信用保証料は原則として保証付融資の実行時にお支払いいただきます」と明記されています。
 保証料の支払方法をみても、この姿勢がはっきりしています。融資実行時に確実に回収できるように、融資額から保証料分を差し引いたうえで融資を実行するのです。
 上記の例でいえば、5,000万円を保証付融資で調達した結果、実際に振り込まれるのは4,573万7,500円です。

保証料の分割払いは可能

 ほとんどの経営者は、これを当たり前のことと捉えています。また、銀行や信用保証協会も当たり前に考えているでしょう。あたかも、支払方法は一括払いの一択になっているかのようです。
 しかし、分割払いは全く不可能というわけではありません。東京信用保証協会の説明にもある通り、一括払いはあくまでも「原則」であり、分割払いの仕組みも存在します。
 実際、分割払いを希望する際に提出する「信用保証料分割支払承認依頼書」という書類も存在します。また、信用保証協会のホームページには、分割払いに関するページも設けられています。
 ただし、分割支払いができるのは信用保証協会が承認した場合に限り、申し込めば必ず分割できるものではありません。

分割払いの具体例

 信用保証協会が分割払いを承認した場合、分割回数や支払いのタイミングはケースバイケースです。
 上記の例で考えてみましょう。分割払いを申し込んだ結果、1年目から5年目にかけて5分割を認められた場合、支払いは以下のように行われます(各回の徴収率は東京信用保証協会のものを適用)。

保証料 徴収率 支払額
第1回 4,262,500 35% 1,491,875
第2回 4,262,500 30% 1,278,750
第3回 4,262,500 20% 852,500
第4回 4,262,500 10% 426,250
第5回 4,262,500 5% 213,125

※第1回は融資実行時

 分割払いにより、融資実行時の支払額は約426万円から約150万円に減っています。借入時に入ってくる現金が300万円ほど多くなり、資金繰りに大きなメリットがあります。

分割払いを申し込むために

 ここまでの内容から、ぜひ分割払いにしたいと思った人も多いことと思います。分割払いの交渉と注意点は以下の通りです。

どのように交渉する?

 まず、分割払いの申し込み方法ですが、これは単純です。銀行に対して、分割払いにしてほしいと頼めばよいのです。
 銀行と信用保証協会は、原則的に一括払いを求めます。したがって、銀行から「保証料は一括と分割、どちらにしますか?」などと聞いてくることはありません。黙っていると、ほぼ間違いなく一括払いになってしまいます。
 このとき、銀行の担当者は嫌な顔をすることが多いです。その理由は、複数回にわたって徴収するため管理に手間がかかること、保証料の支払いが滞った場合に期限の利益が失われることなどです。
 それでも、分割払いの仕組みが存在している以上、拒否されることはありません。銀行としても、保証付融資を獲得するメリットは大きいため、分割払いの申し込みを断って他行に案件が流れることは避けたいはずです。
 臆することなく分割払いを申し込みましょう。

分割払いのリスク

 最後に、分割払いのリスクについて解説します。
 保証料の分割払いには大きなリスクが伴います。それは、保証料の支払いが滞った場合には期限の利益を喪失し、残債の一括弁済を求められることです。
 そもそも、保証料は保証期間に連動します。分割で支払うということは、保証期間も分割されることにほかなりません。このため、保証料を支払えなくなった場合には保証が切れるのです。
 これは、融資と信用保証協会の紐づけがなくなることを意味します。銀行は、保証があったからこそ融資を出していたのですから、保証がなくなれば融資できる理由がなくなります。
 また、保証料の分割払いさえできなかったことから、財務的に非常に危ない状態であると考えるのが妥当です。
 この事態に対処するには、一括弁済を求めるほかありません。そのためには期限の利益が失効している必要があるため、保証料が支払えない状況を以て期限の利益を喪失するのです。
 保証料は分割払いが可能ですが、このようなリスクがあることもしっかり認識しておきましょう。分割払いに確実に応じられるよう、資金繰り計画も綿密に立てておくことが大切です。

まとめ

 保証料の支払いは、融資実行時の一括払いを原則としています。このため、分割払いできることを知らない経営者も多いのですが、保証料は分割払い可能です。資金繰りのために分割払いしたほうが良いと考えるならば、銀行に分割払いを申し込みましょう。
 しかし、本稿で解説した通り、分割払いにはリスクもあります。分割払いの保証料を確実に支払うことが重要です。
 計画的な資金繰りが欠かせないため、資金繰りに不安のある会社では、資金繰り専門のコンサルタントから支援を受けることも視野にいれてください。

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