資金調達方法と聞いて、最初に思い浮かぶのは銀行融資等の「貸付」ではないでしょうか。
銀行融資やビジネスローン等、契約書を交わして貸付を行うサービスを証書貸付といいます。
証書貸付は利用者にある程度の返済能力がないと利用できません。
そこで、この記事では、
- 証書貸付の解説
- 証書貸付以外の貸付
- 証書貸付のメリットとデメリット
- 証書貸付の審査に通るためのポイント
を解説していきます。ぜひ最後までお読みください。
証書貸付とは
証書貸付とは「証書(事実を証明するための文書・契約書)を交わして貸付を行うこと」を指します。
銀行融資やノンバンクからのビジネスローンなど、契約書を取り交わす貸付方法ともいえます。
ここでいう証書とは、「金銭消費貸借契約書」のことです。
金融消費貸借契約書には、
- 契約日
- 借入金額、借入利率
- 遅延損害金
- 返済方法と返済期間
などの融資内容が記載されており、借入申込者の署名や実印を押印することで契約が成立します
証書貸付の特徴
証書貸付には以下の3点の特徴があります。
- 元金均等返済が多い
- 長期運転資金や設備資金などの資金調達に使われることが多い
- 比較的審査が厳しい
1,元金均等返済が多い
証書貸付の返済方法として多いのが「元金均等返済」という方法です。
元金均等返済とは「元金の返済額は一定かつ、利息金額が返済を重ねるごとに減っていく」という返済方法のことで具体的には以下のような返済方法になります。
6,000万円の借入を5年(60ヶ月)で返済する契約の場合、
1ヶ月の元金返済額=6,000万円/60ヶ月=100万円
1ヶ月の返済額=100万円+利息
という形になります。
利息は借入残高の減少とともに小さくなるので、徐々に毎月の返済額も減っていきます。
一般的に銀行などの金融機関の多くは元金均等返済を採用しています。
ですが「証書貸付」は契約書による融資なので、銀行や利用者の意向により返済方法を変更することも可能です。
2,長期運転資金や設備資金などの資金調達に使われることが多い
銀行融資は、通常数年~数十年かけて借入金額の返済を行っていきます。
銀行融資=証書貸付であり、証書貸付は長期的な資金調達に向いているといえるでしょう。
3,比較的審査が厳しい
証書貸付は長期の貸付になるため、銀行側の貸し倒れリスクも大きくなります。
返済期間中に利用会社の倒産等により融資金の回収ができなくなる可能性も十分考えられます。
銀行の審査は「長期間安定して返済できる会社なのかどうか」を厳しくチェックせざるを得ないのです。
長期間的な企業の安定性の判断を要するため、
- 事業年数
- 自己資本(どのくらいの資金があるのか、どういうお金の流れがあるのか)
- 過去の実績
などを厳重にチェックします。
貸付の種類
貸付、つまりお金を借りる先として真っ先に思い浮かぶのは、銀行や消費者金融等の証書貸付なのではないでしょうか。
そもそも金融機関の貸付にはどんなものがあるのでしょうか。
貸付には以下の4つの種類があります。
- 証書貸付
- 手形貸付
- 手形割引
- 当座貸越
1,証書貸付
証書貸付とは、借主から金銭消費貸借契約書を差し入れさせて行う貸付のことです。
銀行融資や住宅ローン、ビジネスローンがこれにあたり、最もポピュラーな貸付方法といえるでしょう。
貸付期間が長期間となる場合は、一般的に不動産などなんらかの担保や保証人を設定することが多く、審査も厳しいという特徴があります。
一言で「審査が厳しい」と言っても、
プロパー融資 > 信用保証協会の保証付き融資 > ノンバンクのビジネスローンの順で審査の厳しさも異なります。
プロパー融資
銀行が利用会社へ直接融資を行う方法。
銀行が直接融資するため、返済困難となった場合には銀行が貸し倒れリスクを負います。
金利は低いですが、その分審査は融資の中でも最も厳しいといえるでしょう。
信用保証協会の保証付き融資
信用保証協会へ保証料を支払うことで、銀行から融資を受ける方法。
プロパー融資では、利用者が万が一返済不能になってしまった場合、銀行が貸し倒れリスクを負わなければなりません。
しかし、保証付き融資では、利用者が返済不能になってしまった場合でも、残債の80%~100%を信用保証協会が銀行へ代わりに支払ってくれるのです。
その後、利用者は長期間かけて残債分を信用保証協会へ返済していく形になります。
プロパー融資よりも貸し倒れリスクが低いため、審査もプロパー融資より通りやすいのが特徴です。
ノンバンクのビジネスローン
銀行以外の金融機関のことをノンバンクと言い、消費者金融やカードローンがこれにあたります。ノンバンクのビジネスローンは、中小企業向けに作られた融資システムです。
銀行融資よりも金利は高い設定で、借入上限も1,000円前後と制限はありますが、融資の中では比較的審査に通りやすいというメリットがあります。
2,手形貸付
手形貸付とは、利用者が融資してもらう会社に対して約束手形を発行し、手形金額に相当する額を貸付けることを指します。
約束手形とは、商取引における代金決算方法のひとつで「将来の一定期日に代金を支払うことを約束した有価証券」となります。
受取人(融資する側)は、指定された期日になったら金融機関に手形を取り立てに出し、現金化・回収できるという仕組みです。手形貸付は、担保を設定せず、1年以内の短期貸付になることがほとんどです。
主に経常運転資金やつなぎ資金など、多くは企業の資金調達として使われます。
返済が滞ると「不渡り」とみなされ、企業の信用が著しく低下してしまうため、利用は支払期日まで確実に返済できる場合にとどめておくと良いでしょう。
3,手形割引
手形割引とは、約束手形を支払期日前に銀行や手形割引事業者で換金することを指します。
銀行や手形割引事業者に手数料を支払う必要はありますが、早期に換金できるという特徴があります。
約束手形は基本的に大企業しか発行できないため、手形自体の信用度が高く、審査も通りやすくなっています。
4,当座貸越
当座貸越は、普通預金口座の残高が不足した際に同一口座の定期預金を担保として不足額を自動的に借入できるサービスです。
当座貸越は借入可能な口座があり、なおかつ限度額まで借りていないのであれば、何度でも繰り返し利用することができるという特徴があります。
証書貸付のメリット
証書貸付のメリットは以下の4点です。
- 多額の資金調達ができる
- 返済期間を長く設定できる
- 比較的低金利で利用できる
- 会社の実績を作れる
1,多額の資金調達ができる
証書貸付の最大のメリットは「多額の資金調達ができる」ことです。
手形割引や当座貸越は、その性質上、所有している約束手形額や定期預金額より高額な資金調達は困難です。
証書貸付の場合は、利用する金融機構によりますが、他の貸付方法よりも多額の現金を一度に借入れられます。事業拡大や新規事業立ち上げなど、一度に多額な資金が必要となることもあります。
そのような場合に多額の資金を調達できるのはメリットといえるでしょう。
2,返済期間を長く設定できる
返済期間を長く設定できることも証書貸付のメリットです。銀行融資やビジネスローンなどは、基本的に数年~数十年かけて融資金を返済していきます。
手形貸付の場合は、手形で約束した支払日に一括で返済をしなければなりません。
将来的に入金予定があるのなら、手形貸付でも問題はないでしょう。
しかし、一括で返済となると運転資金の確保が困難になるため、先の事業に支障をきたす可能性も。
長期返済が可能ならば、資金繰りに余裕を持つことができるのでメリットといえるでしょう。
3,比較的低金利で利用ができる
証書貸付は、比較的低金利で利用できるというメリットもあります。
手形割引は1.0%~20.0%の手形割引手数料が必要になりますが、証書貸付は利用する融資形態により1.0%以下~18.0%前後が金利相場となっています。
審査は厳しいですが、審査に通過できれば低金利で資金調達ができるのです。
4,会社の実績を作れる
意外と知られていないのは、会社の実績を作れるということです。
証書貸付は、利用するのに厳しい審査を通過する必要があります。
特にプロパー融資の審査は厳格であり、大手企業でなければ通過することは難しいでしょう。
そのような厳しい審査を通過して融資を受けているということは、「返済能力がしっかりしている会社」「事業が安定している会社」という証明になるのです。
他の金融機関で融資を受けたい場合などに有利に働くことでしょう。
※ただし、比較的審査の緩いビジネスローンはその対象外となります。
証書貸付のデメリット
証書貸付のデメリットは以下の2点です。
- 定期的な返済義務が生じる
- 審査が厳しく、融資までに時間がかかる
1,定期的な返済義務が生じる
証書貸付は、定期的な返済義務が生じるというデメリットがあります。
手形貸付や手形割引であれば、返済は一括で済みます。
証書貸付の場合は契約内容により、数年~数十年の返済期間を要します。
言い換えれば返済期間中、売上が少ない時期があったとしても返済をしなくてはならないのです。
返済が負担にならないような返済計画を立てる必要があるといえるでしょう。
2,審査が厳しく、融資までに時間がかかる
証書貸付は、審査が厳しく融資までに時間がかかる点もデメリットです。
証書貸付は「利用者に返済能力があるのか」を厳重にチェックする必要があります。
そのため、融資まで1ヶ月~2ヶ月近くかかることも珍しくありません。
なるべく早く資金調達をしたい場合には不向きといえるでしょう。
※ビジネスローンは即日~1週間程度で融資可能な場合がほとんどです。
証書貸付の審査に通るためのポイント
証書貸付の審査に通るためのポイントは以下の5点です。
- 一定の自己資本がある
- 一定の事業歴がある
- 会社の利益を証明できる
- 融資の使用用途がはっきりしている
- 担保・保証人がいる
1,一定の自己資本がある
自己資本とは「返済する必要のない資金=会社本来の資産」のことです。
自己資本が多ければ、会社の経営が安定しており、返済能力に問題がないことが証明できます。
一定の自己資本があれば、それだけ審査に通りやすくなるといえるでしょう。
2,一定の業歴がある
業歴の長さも審査項目のひとつとして挙げられます。業歴が長いということは、今までの業績は悪くなく、会社としても安定していると判断しやすくなるのです。
融資側としては、長期に渡る返済期間中に会社が倒産し貸し倒れリスクを負うのを最も恐れています。業歴が長ければその心配も少なくなるため、審査に通りやすくなります。
3,会社の利益を証明できる
会社の利益を判断する際に重視されるのが「税引き後の当期利益」となります。これは最終利益とも呼ばれ、人件費や設備費、税金等のあらゆるコストを差し引いて、実際に会社の手元に残る利益を表しています。
最終利益が多ければ、融資側も未回収リスクが減るため審査に通りやすくなるのです。
4,融資の使用用途がはっきりしている
融資の使用用途がはっきりしているかどうかも審査をする上で重要となります。
会社の経営状況と使用目的が適切であるかどうかを見られるのです。
どういう用途でどのくらいの資金が必要なのか詳細を提示できれば審査に有利に働くでしょう。
5,担保・保証人がいる
担保や保証人を提供することも、審査に通りやすくポイントです。
融資側は貸し倒れリスクを最も恐れているため、貸し倒れとなった際に担保となるものや、代わりに支払ってくれる保証人がいるとそのリスクを低くできます。
まとめ
この記事では、証書貸付についてそのメリットとデメリット、他の貸付との比較、審査時のポイントを解説しました。
低金利で高額融資が可能、長期返済もできるというメリットがある証書貸付。
その反面、審査が厳しく、融資までにかかる時間も長いというデメリットもあります。
自社経営にとって、どの貸付方法が適しているのか検討することはとても重要です。
証書貸付は、以下の希望のある中堅~大手企業の資金調達に向いているといえるでしょう。
- 金利を低く抑えたい
- 返済計画を長期的に考えたい
- 一度に高額な貸付をしたい
資金調達のプロがお客様の状況をヒアリングした上で適切なアドバイスを致します。
- ・初めて資金調達を行いたい
- ・銀行借入を成功させたい
- ・国の資金調達制度を使いたい
- ・助成金、補助金の申請をしたい
- ・早急に資金が必要
- ・資金繰りの改善をしたい