資金調達

有利な条件で銀行融資を引き出す銀行格付けの基礎知識

銀行格付けとは?

今まで融資してくれていたのに・・・理由は債務者区分にあった!では、融資を大きく左右する要素「債務者区分」について詳しく解説しました。

6段階に分けられている債務者区分が「正常先」の会社は融資を受けることができ、それを下回れば基本的に融資を受けられない仕組みとなっています。

ある銀行で融資を断られた(その銀行では正常先とみなされなかった)会社は、他の銀行でも融資を受けられない可能性が高いです。というのも、債務者区分は金融庁の金融検査マニュアルを元にしており、全ての銀行がほぼ同じ基準で評価しているためです。

このため、A銀行では「要管理先」で融資を受けられなかったのにB銀行では「正常先」で融資を受けられた、といったことはあり得ません。

とはいえ債務者区分だけで十分な評価ができるわけではありません。銀行ごとに方針、主な顧客層、融資規模など様々な点で異なるためです。

例えば、融資規模が大きいメガバンクでは、資金需要の大きい大企業を主な顧客としています。一方、融資規模が小さく地域密着型の信用金庫や信用組合では、資金需要の小さい地元中小企業が主な顧客です。

このような違いがあるにも関わらず、金融検査マニュアルだけで画一的に評価するならば、様々な不都合が起きてしまいます。同じA社を評価する場合に、

 

・メガバンクと信用金庫が全く同じように評価し、全く同じ姿勢で融資を検討する

・融資シェアが最も大きい(メインバンク)と、融資シェアが最も小さい銀行で全く同じように評価し、全く同じ姿勢で融資を検討する

 

といった無理が生じてしまうのです。

したがって、債務者区分という大まかな区分を基本としつつも、銀行ごとに独自の基準を設けて評価し、融資を検討しなければなりません。

言い換えれば、債務者区分をさらに細分化する必要があるわけですが、これが「銀行格付け」です。

 

銀行格付けで正常先をさらに評価

銀行格付けは銀行ごとに独自の基準を使って格付けしています。

もちろん債務者区分が前提となる以上、銀行格付けの結果債務者区分まで変わってしまうことはありません。一般的に、銀行格付けは以下の10段階に分けられています。

 

1~6 正常先
7 要注意先
8 要管理先
9 破綻懸念先
10 実質破綻先
10 破綻先

 

この表を見ればわかる通り、細かく分けられているのは正常先だけです。基本的に融資できる債務者区分は正常先だけであり、要注意先以下はそもそも融資の対象にはならないため、銀行格付けを細かく分ける必要もないわけです。

つまり銀行格付けとは、債務者区分で正常先とされる融資先に対して、定量的要素・定性的要素の両面からさらなる評価を行い、融資条件や今後の取引方針などを決めていくものなのです。

 

銀行格付けで融資条件が変わる

具体例で考えてみましょう。

A社は、

 

・B信用金庫

・C銀行(地方銀行)

・D銀行(都市銀行)

 

の3行と取引していました。前期は黒字で繰越損失も債務超過もなく、もちろん延滞もしていません。財務・業績ともに安定しており、債務者区分は問題なく「正常先」となっています。

債務者区分は同じでも、銀行格付けが異なることは十分に考えられます。一般的な傾向として、融資規模の小さい金融機関ほど銀行格付けが緩く、融資規模の大きい金融機関ほど銀行格付けが厳しい傾向があります。A社が取引している金融機関でいえば、

 

B信用金庫<C銀行<D銀行

 

の順に銀行格付けが厳しくなるのが普通です。

このため、A社が全く同じ決算書を提出しているにもかかわらず、

 

正常先 1
2 B信用金庫
3 C銀行
4
5 D銀行
6

 

といった差が生じることがよくあります。

 

融資交渉の参考にもなる

銀行格付けの詳細は、銀行に聞いても教えてもらえません。しかし、銀行格付けに差があるからこそ、融資条件にも差が出てきます。

例えば、各行の融資条件が以下のようになったとしましょう。

 

融資可能額 返済期間 金利 担保
B信用金庫 5000万円 5年間 1.50% 無担保
C銀行 4000万円 5年間 1.80% 無担保
D銀行 3000万円 3年間 2.00% 有担保

 

この場合、融資条件の違いから、

 

・B信用金庫は銀行格付けは高いらしい

・C銀行も無担保で提案してくれているから、銀行格付けは良好だろう

・D銀行は都市銀行だから、評価もなかなかシビアだ。債務者区分が正常先でも銀行格付けは低いのかもしれない

 

といった予測を立てることができます。さらに、

 

・おそらく、B信用金庫の銀行格付けが最も高いだろう。C銀行の融資条件はB信用金庫に近く、銀行格付けもそれほど変わらないと思う。金利交渉をするなら、D銀行ではなくC銀行が良いだろう

 

などと戦略を立て、より有利な条件を引き出していくことも可能です。

 

銀行格付けを意識した経営を

債務者区分に加えて、銀行格付けの知識があるかどうかによって、資金調達への姿勢は大きく変わります。資金調達に悩む経営者は、ぜひとも知っておくべき知識です。

債務者区分が要注意先以下の会社は、融資をスムーズに受けられる正常先を目指すのが最優先です。この時点では、銀行格付けはあまり意識しなくてよいでしょう。

しかし、債務者区分が正常先の会社は、すでに融資をスムーズに受けられる状況にあります。正常先の維持を心がけるだけではなく、銀行格付けを上げることを意識し、融資条件が有利になるように取り組んでいくことが大切です。

債務者区分は、基準が明確であるだけに改善の方法もわかりやすいです。しかし、銀行格付けはすでに良い状態をさらに良くしていく必要があり、なかなかうまくいかないことも多いです。

大まかな考え方として、良いものをさらに良くするには経営効率化や従業員の処遇改善などがカギとなります。経営効率化の方法は様々ですが、生産性が向上すれば業績を伸ばすことにつながり、経費削減を推進すれば財務強化につながります。

経営効率化によって生まれた資金を社員教育や職場環境改善、給与増額などに投じることで、従業員の能力が高まり、意欲や満足度も高まり、これも生産性向上にプラスになります。また、職場定着率が向上し、業容拡大に伴う人材不足も起こりにくく、さらなる業績向上を目指しやすくなります。

さらに、経営効率化や処遇改善の多くは助成金の受給も見込めるため、コスト負担を助成金によってカバーしながら取り組むことができ、好循環を生み出すことも可能です。

銀行格付けを上げていく際には、このようなイメージで取り組んでいくのがポイントです。

 

まとめ

債務者区分だけではなく銀行格付けを知っておくと、銀行融資がどのように行われているか、また資金調達の際にはどのように意識すべきなのかがよくわかるでしょう。

まずは債務者区分が正常先になることを目指し、その後は銀行格付けのアップを目指していきましょう。この流れを着実に踏んでいけば、いずれ必ず資金調達がラクになります。

そのために、経営コンサルタントに協力を仰ぐのもおすすめです。当サイトを参考に、様々な可能性を模索してほしいと思います。

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