ファクタリング

ファクタリング仕訳・勘定科目についてわかりやすく解説

ファクタリングを活用する前に知っておきたいのが、ファクタリングの勘定科目と仕訳です。会社である以上、帳簿は正確につけていくべきですが、それ以上に勘定科目や仕訳の正しい知識を持っておくことが、ファクタリングの上手な活用にもつながります。
本稿では、ファクタリングの勘定科目と仕訳について徹底解説します。

※ファクタリングについて基礎から知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
『ファクタリングの仕組みとは?メリット・デメリットや利用の流れを解説

ファクタリングの勘定科目

まず、ファクタリングの勘定科目から解説します。

ポイント1:融資との違いを把握

多くの会社では、借入れによって資金調達していることでしょう。この場合、勘定科目は負債勘定である「借入」として処理し、返済に伴う利息の支払いは「支払利息」として処理します。

ファクタリングでは、これとは全く異なる処理をします。

そもそもファクタリングとは、自社が保有する売掛金をファクタリング会社(ファクター)に譲渡する取引です。売掛金は売掛債権の一種ですから、ファクタリングの取引は「金銭債権譲渡取引」に該当します。

当然、ファクタリングは借入れではないため負債勘定は使用せず、支払利息も発生しません。ファクタリングの勘定科目を考える際には、まずはこの点を押さえておくことが大切です。

ポイント2:ファクタリング手数料の考え方

ファクタリングにかかるコストの大部分は、ファクタリング手数料です。譲渡する売掛金の額面金額からファクタリング手数料を差し引き、割安で売却します。

他の金融商品と同様に、売却によって額面金額から目減りした部分は売却損(譲渡損)とみなします。1,000円で買った株式を900円で売った場合に生じる、差損100円と同じようなものです。

ファクタリングは金銭債権譲渡取引であり、ファクタリング手数料は金銭債権譲渡に伴って生じる損失です。このため、この売却損のことを「売上債権売却損(売上債権譲渡損)」と表現します。

したがって、ファクタリング手数料を処理する際の科目は、「売上債権売却損」を使用するのが最も一般的です。

ポイント3:営業外費用として処理する是非

もっとも、ファクタリング手数料は営業外費用としても処理できます。営業外費用の特徴は、

  • 一定期間ごとに経常的に発生する
  • 本業以外で発生する
  • 売上に直接関係しない

です。

銀行融資を受けた際に生じる支払利息が良い例です。借入れに伴う支払利息は経常的に発生します。これは、調達コストに該当する費用であり、営業活動ではなく資金調達活動によって生じています。そして、支払利息は売上を左右するものではありません。このような費用を営業外費用といいます。

ファクタリング手数料も同様です。ファクタリング手数料自体はファクタリング利用時に限り発生するものですが、事業全体で常に生じる雑多な損失を「雑損失」として処理することができます。

したがって、ファクタリング手数料は営業外費用と考えて、「雑損失」として処理しても問題ありません。

ただし、ファクタリングを頻繁に利用する会社であれば、雑損失という中身の見えにくい科目が大きくなるため、税務署から追求される恐れがあります。

きちんと説明できれば問題ありませんが、疑いの目を持たれることは避けたいものです。

ポイント4:割引料としての処理も可

営業外費用として考えるのに問題があれば、最初から売上債権売却損として処理すればよいのですが、会社によってはそれほど簡単な問題ではありません。

なぜならば、銀行の印象が悪化する恐れがあるためです。

多くの会社にとって、売上債権を売却する機会といえばファクタリングくらいのものです。このため、売上債権売却損として処理すると、それによってファクタリングの利用がバレてしまいます。

ファクタリング自体には何ら問題なく、うまく活用すれば銀行の好印象にもなります。しかし、

  • 資金繰りがずさんであるため、計画的な資金調達ができず、急場しのぎのファクタリングを繰り返している
  • ファクタリング会社の選び方が悪く、ファクタリング手数料が資金繰りを圧迫している

といった会社では、銀行の評価が悪化する可能性が高いため、売上債権売却損として処理するのは避けたいところです。かといって、雑損失として処理して税務署に疑いの目を向けられるのも好ましくありません。

そこで便利なのが、「割引料」として処理することです。割引料とは、手形割引に伴う手数料を処理する科目です。ファクタリング手数料を「売掛金の割引に伴う手数料」とみなして「割引料」として処理することは、会計処理として認められています。

手形割引は銀行取引の一種でもあり、悪印象にはなりません。普段から手形割引を利用している会社であれば、手形割引の割引料とファクタリング手数料をまとめて計上するのも一つの手です。

ROAで考える

ファクタリング手数料は売上債権売却損、雑損失、割引料など、色々な勘定科目で処理できます。ここまでの解説により、割引料としての処理が無難に思えるかもしれませんが、手形取引のない会社が割引料として処理するのは不自然です。

ファクタリング手数料の勘定科目でカギとなるのは、ファクタリングをうまく活用できているかどうかです。ファクタリングをうまく活用でき、経営的にプラスになっているならば、売上債権売却損として処理しても問題ありません。悪印象を持たれることはなく、好印象さえ期待できます。

しかし、ファクタリングをうまく活用できていない会社は、銀行からの悪印象を避けるために、雑損失または割引料としての処理も検討すべきでしょう。

ファクタリングをうまく活用できているかどうかを判断するには、ROA(総資本利益率)が役立ちます。ROAとは、会社が経営資源をいかに活用し、収益につなげているかを示す指標です。当期純利益を総資本で割ることによって算出します。

  1. 借入れによって調達した場合のROA
  2. ファクタリングによって調達した場合のROA

を比較し、1の方が高ければファクタリングを活用できておらず、2の方が高ければファクタリングを活用できていると考えることができます。

比較の具体例

具体的に比較してみましょう。
条件は以下の通りです。

【共通の条件】

  • 総資本:1億円
  • 総売上(売掛金の合計):5,000万円
  • 原価率:70%
  • 当期純利益:1,500万円
  • 資金調達額:1,000万円

【比較の条件】

  • ROA①:1,000万円を銀行融資で調達する
  • ROA②:1,000万円をファクタリングで調達する(ファクタリングの手数料率5%)
  • ROA③:1,000万円をファクタリングで調達する(ファクタリングの手数料率20%)

以上の条件で比較します。

なお、全ての場合において、「ROA=当期純利益÷総資本×100(%)」として算出します。

ROA①:借入れで調達する場合

1,000万円を銀行融資によって調達する場合、当期純利益は1,500万円のままですが、総資本には借入金1,000万円が加算されて1億1,000万円となります。したがって、

ROA=1,500万円÷1億1,000万円×100=13.6%

となります。

ROA②:ファクタリング手数料率5%で調達する場合

1,000万円をファクタリングによって調達するとどうでしょうか。ファクタリングの手数料率は5%です。

手数料率5%の条件でファクタリングして1,000万円を調達するには、約1,053万円分の売掛金をファクタリングする必要があります。このため、ファクタリング手数料53万円を差し引いた1,447万円が当期純利益となります。一方、ROA①のケースとは異なり、借入れによる総資本の増加はありません。したがって、

ROA=1,447万円÷1億円×100=14.5%

となります。

1,000万円を借りた場合に比べて、ROAが約1%高くなりました。ファクタリングで調達したほうが借入れよりも効率が良いことがわかります。

この判断によってあえてファクタリングしているならば、ファクタリングをうまく活用しているといえるでしょう。

この場合、ファクタリング手数料を売上債権売却損として処理しても、何ら問題ありません。銀行に質問されれば、ファクタリングの活用によって順調に資金繰りできていることをアピールでき、好印象も期待できます。

ROA③:ファクタリング手数料率20%で調達する場合

では、1,000万円をファクタリング手数料率20%の条件で調達したらどうでしょうか。
手数料率20%の条件でファクタリングし、1,000万円を調達するには1,250万円の売掛金が必要です。ファクタリング手数料は250万円ですから、当期純利益は1,250万円に目減りします。借入れによる総資本の増加はありませんが、ROAは以下のようになります。

ROA=1,250万円÷1億円×100=12.5%

銀行から借りた場合に比べて、ROAは1%近くも低くなっています。銀行融資ではなく、ファクタリングによって資金を調達したのは失敗であり、ファクタリングを活用できていない状態です。

この場合に売上債権売却損として処理すれば、銀行は悪印象を持つでしょう。したがって、売上債権売却損ではなく、雑損失や割引料として処理するのが賢明です。

ファクタリングの仕訳

ここからは、実際にファクタリングを利用した場合の仕訳についてみていきましょう。

ファクタリングを利用しない場合の仕訳

ファクタリングを利用しない場合、売掛金の仕訳は以下のように行います。

1.自社から売掛先へ100万円分の商品を納入し、請求書を発行した。100万円の売掛金が発生した。

借方 貸方
科目 金額 科目 金額
売掛金 1,000,000 売上 1,000,000

2.支払い期日、売掛先から自社へ100万円の代金が振り込まれた。

借方 貸方
科目 金額 科目 金額
普通預金 1,000,000 売掛金 1,000,000

ファクタリングを利用すると、仕訳の工程がやや複雑になります。これを理解するには、売掛金の譲渡、売却代金の受け取り、売掛先の支払いの流れとタイミングを意識するのがポイントです。

即日ファクタリングの場合の仕訳

即日ファクタリングとは、ファクタリングを申し込んだ日のうちに売掛金の譲渡から売却代金の受け取りまで完結するものです。
即日ファクタリングができるのは、二社間ファクタリングだけです。二社間ファクタリングは売掛先が関与せず、自社とファクタリング会社の二社間で取引するため、手続きがスムーズなのです。

二社間ファクタリングの流れ

二社間ファクタリングの流れは、以下の通りです。

  1. 自社から売掛先へ商品を納入し、請求書を発行する。売掛金が発生する
  2. 売掛金の支払い期日前に、ファクタリング会社にファクタリングを申し込む
  3. 必要な書類を提供し、ファクタリング会社の審査を受ける
  4. 審査の結果により、ファクタリング会社はファクタリング手数料を設定する
  5. ファクタリング手数料などの条件に不満がなければ、自社とファクタリング会社の二社間でファクタリング契約を結ぶ
  6. 売掛金を譲渡し、売却代金を即日で受け取る
  7. 売掛金の支払い期日になると、売掛先から自社へ売上が支払われる
  8. 自社からファクタリング会社へ、売上をそのまま振り込む

二社間ファクタリングの仕訳

ファクタリングの仕訳を、上記の流れに沿ってみていきましょう。

1.自社から売掛先へ100万円分の商品を納入し、請求書を発行した。100万円の売掛金が発生した。

借方 貸方
科目 金額 科目 金額
売掛金 1,000,000 売上 1,000,000

2.ファクタリング審査を受けたところ、ファクタリング手数料は10%であった。
ファクタリング契約を結んで売掛金を譲渡し、売却代金90万円を即日で受け取った。
売掛金額面100万円の10%にあたる10万円のファクタリング手数料は、売上債権売却損として処理する。

借方 貸方
科目 金額 科目 金額
普通預金 900,000 売掛金 1,000,000
売上債権売却損 100,000

3.支払い期日になると、売掛先から自社へ売上100万円が支払われる。

借方 貸方
科目 金額 科目 金額
普通預金 1,000,000 預り金 1,000,000

4.自社からファクタリング会社へ、売上100万円をそのまま振り込む。

借方 貸方
科目 金額 科目 金額
預り金 1,000,000 普通預金 1,000,000

即日ファクタリングの仕訳はこれで完了です。

即日ファクタリングではない場合の仕訳

即日ファクタリングではない場合、つまり売掛金の譲渡から売却代金の受け取りまで日数が空く場合には、仕訳の流れも変わってきます。
三社間ファクタリングであれば、即日ファクタリングはできません。自社・売掛先・ファクタリング会社の三社間で手続きする必要があり、時間がかかるからです。
もちろん二社間ファクタリングでも、申し込みのタイミングやファクタリング会社の対応によっては、即日ファクタリングができないことがあります。その場合には、こちらの流れで仕訳を進めます。

三社間ファクタリングの流れ

三社間ファクタリングの流れは、以下の通りです。

  1. 自社から売掛先へ商品を納入し、請求書を発行する。売掛金が発生する
  2. 売掛金の支払い期日前に、ファクタリング会社にファクタリングを申し込む
  3. 売掛先に債権譲渡を通知し、承諾を受ける
  4. ファクタリング会社から売掛先へ必要な書類を求め、ファクタリング会社の審査が行われる
  5. 審査の結果により、ファクタリング会社がファクタリング手数料を設定する
  6. ファクタリング手数料などの条件に不満がなければ、自社・売掛先・ファクタリング会社の三社間でファクタリング契約を結ぶ
  7. 自社からファクタリング会社へ売掛金を譲渡する
  8. 後日、売却代金を受け取る
  9. 売掛金の支払い期日になると、売掛先からファクタリング会社へ売上が支払われる

三社間ファクタリングの仕訳

ファクタリングの仕訳を、上記の流れに沿って見ていきましょう。

1.自社から売掛先へ100万円分の商品を納入し、請求書を発行した。100万円の売掛金が発生した。

借方 貸方
科目 金額 科目 金額
売掛金 1,000,000 売上 1,000,000

 

2.ファクタリング審査を受けたところ、ファクタリング手数料は5%であった。
ファクタリング契約を結んで売掛金を譲渡した。

借方 貸方
科目 金額 科目 金額
未収入金 1,000,000 売掛金 1,000,000

 

3.後日、売掛金の売却代金95万円を受け取った。
売掛金額面100万円の5%にあたる5万円のファクタリング手数料は、売上債権売却損として処理する。

借方 貸方
科目 金額 科目 金額
普通預金 950,000 未収入金 1,000,000
売上債権売却損 50,000

即日ファクタリングではなく、なおかつ三社間ファクタリングである場合には、仕訳はこれで完了です。売掛金の支払いは、売掛先からファクタリング会社に行われるため、自社の仕訳には影響しません。
ただし、二社間ファクタリングで即日ファクタリングできない場合には、これに続いて以下のように仕訳します。

 

4.支払い期日になると、売掛先から自社へ売上100万円が支払われる。

借方 貸方
科目 金額 科目 金額
普通預金 1,000,000 預り金 1,000,000

 

5.自社からファクタリング会社へ、売上100万円をそのまま振り込む。

借方 貸方
科目 金額 科目 金額
預り金 1,000,000 普通預金 1,000,000

 

まとめ

ファクタリングの勘定科目や仕訳は、難しいものではありません。しかし、銀行や税務署の印象を考慮すると、自社の経営や資金繰りへの影響を踏まえて、最適な勘定科目で処理することが欠かせません。
実際には、ファクタリングの影響をROAだけで測れない場合もあるため、専門家のアドバイスを参考にしながら、勘定科目や仕訳を考えるのがベストです。
資金調達に強いコンサルタントや税理士などと連携を強め、ファクタリングの正しい活用を心がけてください。

お問い合わせ

資金調達のプロがお客様の状況をヒアリングした上で適切なアドバイスを致します。

  • ・初めて資金調達を行いたい
  • ・銀行借入を成功させたい
  • ・国の資金調達制度を使いたい
  • ・助成金、補助金の申請をしたい
  • ・早急に資金が必要
  • ・資金繰りの改善をしたい
無料資金調達のご相談はこちら

資金調達コンサルティングについての詳細、メリットなど選び方の紹介はこちら

RELATED POST