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創業資金はどうする?資金調達のプロが3つの方法を徹底解説

同じ資金調達でも、事業が軌道に乗っている会社の資金調達と、事業が軌道に乗っていない会社の資金調達では、難易度が大きく異なります。とりわけ、創業資金の調達は非常に難易度が高いです。
創業資金の調達にお悩みの方は、資金調達のプロがどのように調達するかを本稿で学んでください。

創業資金とは?

創業資金の調達は、一般の資金調達に比べて難しいものです。一般の資金調達でさえ苦労するのですから、これから起業を考えている人はしっかりと知識をつけておくことが大切です。
創業資金とは、創業期に要する資金のことです。資金が必要となるタイミングや資金の性質を大別すると、

  1. 起業時の準備資金(登録免許税、開業に必要な資格や許可の取得資金、最低限必要な設備を購入する資金、創業期のコンサルティング費用)
  2. 起業後のつなぎ資金(賃料や仕入代金、光熱費や通信費、創業後のコンサルティング費用など、営業活動に必要な資金)
  3. 起業後の赤字補填資金(起業後は事業の安定に時間がかかり、赤字になるのが普通であるため、その補填資金が必要)
  4. 起業後の自分自身の生活資金(起業後に事業が安定し、自分への給料をねん出できるようになるまでの期間、自分自身の生活に必要な資金)

創業資金というと、1の「創業時に最低限必要となる資金」だけをイメージする人がいるのですが、そうではありません。創業資金とは「創業時」ではなく「創業期」、つまり事業が軌道に乗り、創業期を脱するまでの期間に必要な資金を意味するのです。

創業資金調達はなぜ難しい?

なぜ創業期の資金調達は難しいのでしょうか。主な理由は、

の二点です。

創業期は信用がない

まず、創業期は信用がありません。これは、業歴が短いためです。
業歴が短ければ、創業から現在までの取引実績も乏しいのが普通です。営業を始めたばかりで取引先は少なく、銀行との取引実績もほとんどありません。

特に、銀行との取引実績がないのが問題です。銀行は、取引実績によって信用を考えます。銀行と会社の信頼関係は「銀行が融資し、会社が返済する」という関係の積み重ねによって築かれます。銀行は、「この会社は、これまでもしっかり返済してくれたし、事業内容にも問題ない。今後もしっかり返済してくれるだろう」という信用があって、初めて融資するのです。
これから起業する会社、あるいは創業後間もない会社は、銀行にとって海のものとも山のものともわかりません。融資してくれと頼んだところで、ハイリスクだと判断して融資を拒否するのが当然です。

創業期は業績・財務が脆弱

また、業績・財務のぜい弱さも問題です。
資金調達方法は銀行融資だけではありません。他の記事でもまとめている通り、様々な調達方法があります。
しかし実際には、創業期は融資以外の方法も利用しにくいです。
例えば、銀行融資以外で役立つ資金調達方法に「資産の売却」があります。価値の高い資産を売却すればまとまった資金を調達でき、日常的に発生する資産を売却すれば安定的に資金を調達できます。
これから起業する(創業前の)会社は、まとまった資金を調達するための資産が手元にありません。また、事業を始めていないのですから、日常的に資産が発生することもありません。

創業後も、業務に最低限必要な資産しか保有しておらず、やはり売却は困難です。リースバックという方法もありますが、リースバックによって調達するならば起業時にリース契約を結んでいるのが普通ですから、現実的ではありません。
そして、創業期は取引先が限られるため売上が少なく、安定しません。したがって、手形割引やファクタリングといった売掛債権の売却も資金調達には役立ちにくいです。
これらの方法は、あくまでも事業が軌道に乗った後、事業活動の中で必要性の乏しくなった資産を売却したり、安定的に得られる売掛金を売却したりするものです。
業績・財務が不安定でぜい弱であることも、創業期の資金調達を困難なものとしています。

創業資金の最頻値は?

以上のように、創業資金の調達は容易ではありません。
日本政策金融公庫の調査によると、創業資金の最頻値は600~800万円、次いで多いのが400~600万円となっています。事業内容にもよるでしょうが、基本的にはこれくらいを目安にしておきたいものです。
では、この創業資金をどのように調達すべきなのでしょうか。代表的な3つの調達方法について、資金調達のプロがお教えしましょう。
以下の方法は、優先度の高いものから順番に解説しています。これから創業資金の調達に取り掛かる人は、ここで掲載している流れに沿って資金調達を検討してください。

資金調達のプロは自分から調達する

真っ先に考えるべき調達先は自分自身です。これまで働いて貯めたお金を創業資金に充てるならば、創業が上手くいかずに倒産した場合にも、この部分については誰にも迷惑をかけることがありません。
実際、多くの起業家は自分の貯蓄などを創業資金に充てます。起業家予備軍の80%は会社員とされますが、彼らは会社員時代から起業を考え、給与を貯めて準備していることが多いです。

周囲の支援に影響する

自分でいくら出すかによって、周囲の姿勢も変わります。詳しくは後述しますが、

を比較した場合、支援の受けやすさが圧倒的に変わるのです。これも、自分から調達すべき大きな理由です。

自分だけでは無理がある

ただし、自分だけで創業資金を準備するのはおすすめしません。もちろん、確実に資金を調達できるという意味では最優先すべきですが、自分だけで600~800万円という資金を準備するのは無理があります。
起業を志す人の多くは20~30代の若い人々です。年齢的に考えて、給与による貯蓄から創業資金を100%調達するのは困難です。乏しい自己資金を頼りにすれば、資金不足により創業に失敗する可能性が高いでしょう。
また、十分な資金を貯めることに時間を費やしていると、その間に社会が変化し、せっかくのアイデアが陳腐化するケースが大半です。

資金調達のプロは自分以外からも調達する

自己資金だけでは不十分となると、自分以外から調達する必要があります。

身内から調達する

自分以外の調達先で優先すべきは家族や親戚など身内の人々です。
家族に迷惑をかけたくないと思い、身内からの調達を渋る人も少なくありません。しかし、身内だからこそ協力してもらえる可能性が高く、真剣に意見を出してくれることも期待できます。万が一創業に失敗した場合、その後も関係を維持しやすいことも身内だからこそのメリットです。
もちろん、身内が相手であっても出資あるいは融資してもらう以上は、事業内容やリスクをしっかりと説明することが欠かせません。
特に、リスクの説明が大切です。リスクをきちんと説明し、同意の上で出資や融資をしてもらうならば、創業に失敗しても帰る場所を確保できます。

身内から調達したジェフ・ベゾス

ネット通販大手のAmazonの創業者ジェフ・ベゾスも、創業資金を両親から調達しています。ジェフ・ベゾスが自分で用意したのは1万ドル、これに加えて両親から10万ドルを出資してもらい創業しました。
このとき、ジェフ・ベゾスは両親に対して、「出資金が戻らない可能性は70%ある」と説明しています。

友人・知人から調達する

身内の次に相談すべきは、友人や知人です。身内の人数は限られていますが、友人や以前の勤務先の関係者などを資金調達の対象とすることで、資金を集めやすくなります。
デメリットは、身内ほど積極的な支援が期待できないこと、事業に失敗した場合に関係の修復が困難になる恐れがあることなどです。
したがって、この場合にも身内に依頼する場合と同様に、リスクの説明を徹底することが重要です。

創業後の調達先として残しておくのもあり

友人や知人からの調達は、創業時の必要資金を調達するだけではなく、創業後の資金調達先と考えてもかまいません。あえて創業時には友人・知人に相談せず、創業後に少人数私募債を発行する際に引き受けを依頼し、創業期の資金調達を図るのです。

資金調達のプロは金融機関から調達する

自己資金だけでは足りず、身内からもまとまった資金を調達できない人は多いはずです。ジェフ・ベゾスのように、両親が1,000万円も出資してくれるようなケースはまれでしょう。
そこで、金融機関からの借り入れが必要となります。
近年、民間金融機関でも創業融資への取り組みが活発になってきており、創業資金調達のハードルは下がりつつあるといわれます。しかしながら、資金調達のプロからみると、まだまだ難しいといわざるを得ません。
上記の通り、創業期の会社は信用がほとんどないため、民間金融機関は創業融資に消極的です。これから創業する人が銀行に足を運んで融資を依頼しても、門前払いされるのが関の山でしょう。

調達候補は2つ

そこで、資金調達のプロは、

からの調達を考えます。
制度融資とは、地方自治体と信用保証協会が支援・保証することにより、民間金融機関の融資を促す仕組みです。
日本政策金融公庫は、政府が100%出資する公的金融機関であり、民間金融機関が対応できない資金需要を補完することを目的としています。
制度融資、日本政策金融公庫のいずれも、創業資金調達のためのプランを設けています。創業期の資金調達には、これらを活用した金融機関からの資金調達がおすすめです。

自己資金の考え方

ここでも、自己資金をいくら出すかが重要になります。例えば、日本政策金融公庫の「新創業融資」では、融資限度額を自己資金の9倍までとしています。自己資金を10万円しか準備しない人は、90万円の融資しか受けられないのです。
したがって、日本政策金融公庫から資金を調達する場合には、目標調達額から逆算して考えることが重要です。600万円の調達を目指すならば、

600万円×0.1=60万円

の資金を自分の貯金や身内から調達し、この9倍にあたる540万円を調達すべきことが分かります。

足りない部分をカバーする

もっとも、資金調達のプロであれば「60万円調達すればいい」とは考えません。自己資金の9倍というのは、あくまでも融資可能な上限値です。上限いっぱいまでの融資を引き出せるケースは珍しく、事業計画書が非常に優れているなどの場合に限られます。
また、金融機関から調達した創業資金は借金ですから、返済の必要があります。創業期の苦しい資金繰りの中で、返済負担はできるだけ軽くしたいものです。
したがって、自己資金はできるだけ多く準備した上で、足りない部分を金融機関から調達するのがプロの発想です。

まとめ

本稿では、創業資金の調達方法について、資金調達のプロの観点から解説しました。
本稿でお教えしたのは、自分の貯金から調達する、身内や友人・知人から調達する、金融機関から調達するなど、どれもよく知られた方法です。しかし、それぞれの方法を深く理解し、それぞれの方法を関連付けて考えるかどうかによって、創業資金調達の成功率や難易度が大きく変わります。
創業資金を調達する際には、ぜひ資金調達のプロの目線で考えてください。必要に応じて、コンサルタントに協力を仰ぐことも検討してみましょう。