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ファクタリングの契約書のチェック項目、注意点を解説

ファクタリング契約のチェック項目

※ファクタリングについて基礎から知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
『ファクタリングの仕組みとは?メリット・デメリットや利用の流れを解説

ファクタリング利用時には、必ずファクタリング契約を結びます。二社間ファクタリングならば自社とファクタリング会社の二社間で契約を結び、三社間ファクタリングならば自社・売掛先・ファクタリング会社の三社間で契約を結びます。

ファクタリングをフル活用するには、正しい業者選びが欠かせません。ファクタリングによる調達額は会社ごとに異なりますが、場合によっては数百万円、数千万円の売掛金をファクタリングすることもあるのです。業者の良し悪しによって調達できる資金が数十万円、数百万円単位で変わることもあります。

もっとも、優良ファクタリング会社になると、条件面で大きな差が出にくくなります。問題は、条件面で劣るファクタリング会社や、条件が悪い悪質業者を利用することです。特に、悪質業者を利用してしまうと、資金繰りが大きく悪化する危険もあります。

したがって、ファクタリングを利用する際には、ファクタリング契約でのチェックを念入りに行い、悪質業者の利用を避けることが重要です。もちろん、悪質業者でなくとも、自社に不利な条件になっていないかをチェックすることが大切です。
まずは、ファクタリング契約でチェックすべき項目をみていきましょう。特に注意すべき点については、詳しく後述します。

1.債権譲渡取引であること

ファクタリング契約では、複数の契約書を交わします。その中心となるのが、債権譲渡契約書です。

ファクタリングは、売掛金という債権を譲渡・売却する取引ですから、債権譲渡契約を結ぶ必要があります。

契約書の名目が間違いなく債権譲渡契約であること、この取引が債権譲渡であると明記する条項があることをチェックしましょう。

2.譲渡する売掛金の特定

債権譲渡契約の際には、譲渡する債権を特定します。譲渡する売掛金の特定は、債権者、債務者、債権内容によって行います。例えば、

といった情報があれば、売掛金の特定が可能です。
自社がファクタリングしたいと思っている売掛金と、ファクタリング契約の売掛金が一致することをチェックしてください。

3.債権譲渡通知の有無

二社間ファクタリングならば、売掛先に対する債権譲渡通知はありません。しかし、業者によっては二社間ファクタリングでも通知することがあります。

例えば、ファクタリング後の売掛金の回収が遅れた場合にペナルティとして売掛先に通知する、といったケースが見られます。このため、二社間ファクタリングでも債権譲渡通知の有無はしっかり確認しておくことが大切です(詳しくは後述します)。

三社間ファクタリングでは、債権譲渡通知が必須です。三社間ファクタリングを利用する会社では、債権譲渡通知のタイミングを把握しておきましょう。

4.債権譲渡登記の有無

ファクタリングは債権譲渡取引ですから、ファクタリングに伴って債権譲渡登記を行うのが普通です。ただし、債権譲渡登記は必須ではないため、ファクタリング会社によっては相談に応じて登記を留保してくれる場合もあります。

債権譲渡を登記すると法務局に登記内容が記載され、誰でも閲覧可能となります。実際には、売掛先が調べる可能性は低いです。しかし、わずかながら売掛先に知られる可能性が出てきます。

したがって、債権譲渡登記の有無もチェックしておきましょう。
債権譲渡登記が必須となっていれば、登記手続きを依頼する司法書士への報酬や、登録免許税の支払いについても確認してください。

5.償還請求権がないこと

償還請求権とは、売掛金が回収できなかった場合に、元の債権者(ファクタリングを依頼した自社)に売掛金の買い戻しを求める権利のことです。

償還請求権付きの契約であれば、法的には「売掛金を担保にした貸し付け」に該当します。貸金業であるにもかかわらずファクタリングサービスを謳っているのですから、裏があると考えるのが妥当です。実際、償還請求権付きのファクタリングは、偽装ファクタリングの常套手段でもあります。

ファクタリング契約の際には、償還請求権がないことをチェックしてください。

6.ファクタリング手数料

ファクタリング契約に至るまでに、ファクタリング審査が行われ、ファクタリング手数料を提示されているはずです。ファクタリング契約の際には、

を、再度チェックしてください。
なお、ファクタリング手数料の相場は、二社間ファクタリングならば10~20%、三社間ファクタリングならば1~5%程度です。

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7.担保や保証人の設定がないこと

ファクタリングは売掛金の売却であり、融資とは根本的に異なります。借入れではないのですから、弁済のための担保や保証人も不要です。担保や保証人を求められた場合には、偽装ファクタリングと断定して契約を見送ります。

ファクタリング契約では、担保や保証人の設定がないことをしっかりチェックしてください。

8.報告義務の取り決め

ファクタリング契約には「報告義務」に関する取り決めがあります。これは、売掛先の状況について自社からファクタリング会社に報告する義務です。特に、売掛先の経営悪化はファクタリング会社の回収に影響するため、報告義務が厳しく求められます。

報告義務を怠った場合には、損害賠償を求められることも多いです。どのような場合に報告義務があるのか、義務に違反するとどのような責任が生じるか、細かくチェックしておきましょう。

9.損害賠償や違約金の取り決め

報告義務違反だけではなく、何らかの場合に損害賠償や違約金が生じる可能性があります。例えば、

などです。
悪質業者では、損害賠償や違約金の取り決めがあまりにも細かい(またはあまりにも曖昧)、賠償の金額があまりにも大きいなどのケースがみられます。自社にとって不利な取り決めではないことをチェックしましょう。

10.ファクタリング契約の解除について

契約に違反した場合、ファクタリング契約は解除されます。どのような違反が契約解除に該当するか、契約解除の際にはどのような手続きを行うかなどをチェックしておくことが大切です。

一般的には、自社の契約違反によって契約が解除に至った場合、ファクタリングで受け取った資金を全額返還し、譲渡した売掛金も返還されます。

11.ファクタリングの契約期間など

通常、ファクタリングは単発で行います。繰り返しファクタリングすることを前提としていません。このため、ファクタリングの契約期間は、売掛金の譲渡から売却代金の受け取り、売掛先からの回収といった一連の流れが完了するまでの期間に限られます。

しかし、悪質業者では長期の契約期間を設け、繰り返しファクタリングさせるケースもあります。単発の契約になっているか、契約期間もチェックしてください。

ファクタリング契約書の注意点

上記の内容を踏まえて、ファクタリング契約で特に注意すべき点を掘り下げていきましょう。

ファクタリング手数料などの費用に注意

ファクタリングのコストは、大部分がファクタリング手数料です。しかし、業者によって設定が異なるため注意が必要です。

優良ファクタリング会社では、ファクタリング手数料以外を一切請求しない(諸経費もファクタリング手数料に含まれている)ケースが増えています。このような業者であれば、契約の注意点は「自社の認識しているファクタリング手数料に相違がないこと」だけです。

一方、ファクタリング手数料と諸経費を別々に計算する業者もあります。この場合、事務手数料、対面取引のための出張費など、ファクタリング手数料以外に色々な費用がかかります。したがって、ファクタリング手数料以外の費用の詳細に注意しなければなりません。

特に、消費税には注意してください。ファクタリングは非課税取引であるため、消費税はかかりません。しかし悪質業者は、ファクタリング手数料にも消費税を加算することが多いです。

支払い期日に注意(二社間ファクタリングの場合)

三社間ファクタリングでは、支払い期日になるとファクタリング会社が売掛先から直接回収するため自社は関与しません。注意すべきは二社間ファクタリングです。
二社間ファクタリングは売掛先に通知せず取引します。当然、売掛先は売掛金が譲渡されたことを知らないため、支払い期日には自社が売掛先へ回収する必要があります。

したがって、ファクタリング契約には回収業務委託契約も含まれます。回収業務委託契約によって、回収後の支払いの流れや支払い期日が決められるため、それに沿って回収します。
支払い期日に遅れた場合、損害賠償を求められるケースが多いです。その危険を避けるには、支払い期日をしっかり確認すると同時に、売掛先が支払い困難に陥った場合の対応なども注意すべきです。

優良ファクタリング会社であれば、売掛先の支払いが遅れている場合には、それに連動してファクタリング会社への支払い期日も延長する契約になっているはずです。

債権譲渡通知の特約に注意

二社間ファクタリングであれば、債権譲渡通知は不要です。中小企業の多くは、債権譲渡通知による売掛先の信用悪化を避けるため、二社間ファクタリングを利用しています。何らかの理由によって債権譲渡通知が行われると、割高な手数料を支払って二社間ファクタリングを利用する意味がなくなってしまいます。

しかし、ファクタリング契約によっては、債権譲渡通知の特約が設けられていることも少なくありません。例えば、回収した売掛金を支払い期日までにファクタリング会社に送金しなかった場合に、通知されることがあります。

自社が回収した売掛金を送金しなければ、ファクタリング会社は利益を得られません。自社の使い込みによって送金が遅れると、ファクタリング会社は損失を被るため、それを避ける必要があるのです。

対策は色々ありますが、その一つが債権譲渡通知の特約です。この方法では、ファクタリング契約時に債権譲渡通知書を作成しておき、支払い期日に遅れると売掛先宛に内容証明郵便で発送します。
債権譲渡通知書には、

  1. 売掛先が自社に支払う予定の売掛金を、ファクタリング会社に譲渡したこと
  2. 売掛先は自社ではなく、ファクタリング会社に対して債務を負うこと
  3. 売掛先は、売掛金をファクタリング会社に直接支払うこと

が記載されています。
自社の使い込みなどによって送金が遅れ、債権譲渡通知書が送付された場合にはどうなるでしょうか。売掛先は、すでに代金を支払っているにもかかわらず、一方的に「あの売掛金は譲渡したから、譲渡先の会社(ファクタリング会社)に支払ってくれ」と言われるようなものです。売掛先とのトラブルは避けられないでしょう。

そのような間違いが起きないためにも、債権譲渡通知の特約のチェックが欠かせません。自社が正しく取引している限り通知されないことを確認することが大切です。

悪質業者に該当する内容に注意

最後に、最も気を付けなければならない内容をまとめます。以下の場合、悪質業者の可能性が極めて高いため、ファクタリング契約は避けてください。

償還請求権

既に書いた通り、償還請求権付きの契約は貸付けに該当します。そもそもファクタリングでさえないため、偽装ファクタリングの悪質業者と考えて避けてください。
注意したいのは、償還請求権なしの契約であるものの、実質的には償還請求権付きと変わらない契約があることです。

これを見抜くには、償還請求権の有無ではなく、損害賠償責任を確認するのがポイントです。損害賠償の内容にも色々ありますが、回収に伴う賠償責任として「売買代金全額の請求」が含まれていないか注意してください。

これは、売掛金が回収できなかった場合に、償還請求権の実行により売掛金の買い戻しを求めるのではなく、損害賠償責任として売買代金全額の返還を求める条件です。これでは、実質的には償還請求権付きの契約と同じになってしまいます。

このような契約を迫る業者は避けてください。また、誤って契約してしまった場合にも、売買代金の返還に応じる必要はありません。公序良俗違反により、契約は無効になります。

保証人の設定

ファクタリングに担保設定は不要であり、担保を求める業者は悪質業者と考えて構いません。
保証人も同様です。悪質業者では、売掛金を回収できなかった場合に備えて保証人を求めることがあります。しかし、そもそも償還請求権がないのですから、保証人も不要です。

注意すべきは、回収業務委託契約における保証人の設定です。悪質業者は、債権譲渡契約では担保・保証人を不要としつつ、回収業務委託契約に保証人を設定する場合があります。
これは、売掛先の経営悪化などによって回収できなくなった場合、回収金額を連帯保証人に請求する契約です。

まともなファクタリング会社ならば、このような条件を設定しません。悪質業者の手口ですから、十分に注意してください。

緊急連絡先

最後に、緊急連絡先です。
悪質業者は、ファクタリング契約の際に緊急連絡先を求めることがあります。あまり注意されないのですが、緊急連絡先を求める業者は危険です。日本ファクタリング業協会も、偽装ファクタリングの特徴のひとつに「緊急連絡先を求めること」を挙げています。

ファクタリング契約で、緊急連絡先を求められることはありません。手続き上のやり取りのために、ファクタリング会社から自社に連絡することがありますが、そのためには会社と経営者個人の連絡先があれば十分です。
しかし、悪質業者が求める緊急連絡先では、

などの名前・続柄・住所・自宅電話番号・携帯電話番号を求めます。
このような関係者とのやり取りは、ファクタリングでは一切不要です。不要な連絡先をあえて求めるのは、回収手段として利用するためです。

償還請求権なし、回収業務にも保証人設定なし、という条件でも油断できません。緊急連絡先に電話することで圧力をかけ、売掛先への回収を迫るのです。売掛先の経営悪化などで回収できない場合、自社ではどうすることもできません。家族や知人に迷惑をかけないためには、自社の手元資金から代金を支払うほかなくなります。

緊急連絡先を求める際、業者は「念のために・・・」といった感じで軽く求めるでしょう。しかし、そのような業者の利用は避けてください。

契約書の控えを必ずもらう

最後に、契約書の控えを必ずもらってください。
本稿で紹介したチェック項目と注意点を照らし合わせ、問題がなかったとしても、どこかに落とし穴があるかもしれません。

また、手続きのミスによる損害賠償や違約金の発生を避けるためにも、契約条件をいつでも確認できるようにしておくべきです。

後になって悪質業者であると分かれば、弁護士に相談すべき場合もあります。このとき、契約書が手元にあればスムーズに相談できます。弁護士が「この契約は無効です」と判断すれば、悪質業者に厳しい対応もとれるでしょう。
したがって、契約書の控えは必ずもらうように注意してください。

まとめ

本稿では、ファクタリング契約のチェック項目と注意点を解説しました。
近年、手軽さを売りにするファクタリング会社が増えています。手軽に利用でき、資金繰りに役立つ優良ファクタリング会社も多いです。

しかし、ファクタリング契約には多くの注意点があるのも事実です。手軽に利用することを考えすぎると、ファクタリング契約がおろそかになり、悪質業者のリスクも高まります。
ぜひ、本稿の知識を活用し、自社に少しでも有利なファクタリング契約を結んでください。