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融資に保証人は絶対必要?保証人制度の基礎知識を徹底解説

中小企業であれば、融資の際に連帯保証人を求められることが少なくありません。このとき、保証人制度を正確に理解せずに応じると、近しい人に大きなリスクを負わせる可能性があります。

保証人の存在によって融資がスムーズになるのも事実ですから、保証人制度は必要に応じて正しく利用していきたいものです。本稿では、そのための基礎知識を徹底解説します。

保証人制度の基礎知識

銀行から融資を受ける時、不動産や売掛債権、定期預金などに抵当権を設定することがあります。これを物的担保といいます。

一般的に「担保」といえば、不動産をはじめとする物的担保のイメージが強いです。しかし、担保には人的担保もあります。人的担保とは、平たくいえば保証人のことです。

物的担保の目的は、万が一返済ができなくなった時に備え、貸し倒れリスクを軽減することです。抵当権を設定した担保資産を処分し、回収することで貸倒損失を避けることができます。

人的担保・保証人も基本的な考え方は同じです。すなわち保証人とは、

「債務者が返済できなくなった時、債務者に代わって返済する人」

であり、貸し倒れリスクの軽減を目的としています。

保証契約と保証委託契約

保証人とは、「債務者が払えなくなったら、代わりに私が支払います」という契約を銀行と結ぶ人のことです。この契約を「保証契約」といいます。

保証人がいることによって、銀行は貸し倒れリスクを軽減できます。融資先の会社が倒産すれば、その会社から貸付金を回収することはできませんが、それに代わって保証人が肩代わりしてくれるのです。保証人の支払い能力にもよりますが、無担保・無保証に比べればはるかに安心できます。

保証人と金融機関の間で結ぶ保証契約のほかに、債務者と第三者の間で結ぶ「保証委託契約」があります。

資金を調達したいものの、経営内容が悪く、経営者本人に信用が乏しく、担保もないといった理由から、経営者が第三者に「保証人になってくれないか」と依頼して保証人になってもらうことがあります。このとき、経営者と第三者の間で成立する契約が「保証委託契約」です。

経営者(債務者)から依頼されて保証を請け負った第三者(保証人)は、銀行と保証契約を結びます。その後、経営者が返済不能に陥ると、銀行は保証契約に基づいて保証人に借金返済を請求できます。

正しい知識を身につけよう

銀行融資と保証人制度を考える時、「保証契約」や「保証委託契約」といった用語が出てくるため、混乱してしまう人もいるでしょう。しかし、保証人は融資において重要な存在であり、責任も重いため、正しく理解しておくことが大切です。

特に、第三者に保証人を依頼して保証委託契約を結ぶ場合、どうしても近しい人でなければ依頼できません。親や兄弟、親友などが対象となります。保証人制度は、債務者の人間関係に依存する部分が大きいといえます。

親しい関係であるだけに、債務者から「絶対に迷惑はかけないから力を貸してほしい」などと頼まれると、一肌脱いでやろうと意気込んだり、あるいは軽い気持ちで請け負ったりするケースが少なくありません。いずれにしても、保証人を依頼すること、保証人を請け負うことの認識が不十分なまま、保証委託契約が成立してしまいます。

その後、保証人と金融機関の間で保証契約が結ばれると、どのような関係の人が、どのような気持ちで保証人になったかに関係なく、保証人はリスクを負うこととなります。安易に保証人になり、友達の借金を背負わされて人生が狂った不幸な話がよくありますが、多くはリスクを安易に考えたことが原因です。

ちなみに、自己破産する人の4分の1は、他人の借金を肩代わりしたことが原因とされています。保証人にはこのようなリスクがあることを十分に認識すべきです。

連帯保証人とは?

一口に保証人といっても、保証人には「単純保証人」と「連帯保証人」の二種類があります。これも、保証人制度を知る上で欠かせない知識です。

単純保証人と連帯保証人

単純保証人と連帯保証人の大きな違いは、弁済を求められた時の権利にあります。

融資を受けた会社の経営が悪化し、資金繰りが厳しくなると、返済が遅れがちになります。このとき、銀行はまず本来の債務者に督促します。

本来の債務者に督促する前に保証人に請求した場合、単純保証人は「まず債務者に督促してください」と主張する権利があります。しかし連帯保証人は、債務者に督促する前でも、請求に応じなければなりません。

また、銀行が保証人に返済を請求しても、本来の債務者に何らかの資産がある場合、単純保証人は「まずは債務者の資産を差し押さえて、その後に残った部分について請求してください」と主張する権利があります。

これに対し、連帯保証人はこの主張ができません。債務者が財産を持っており、支払い能力が残っている場合でも、銀行からの請求に応じなければなりません。

さらに、債務の分担でも大きな違いがあります。保証人が複数いる場合、単純保証人は保証債務を保証人の人数で割り、均等に分担します。それぞれの分担を上回る弁済はしなくてよい仕組みです。

一方、連帯保証人は保証債務について、一人ひとりが全額の弁済義務を負います。銀行は、回収しやすい連帯保証人から全額回収を図ることができ、一人から回収することも可能です。請求された連帯保証人は全額返済した後、他の連帯保証人に分担額を請求する流れとなります。

このように、単純保証人と連帯保証人では、弁済の流れや保証人一人ひとりの負担に大きな違いがあるのです。銀行目線で考えると、単純保証人は回収に手間がかかり、連帯保証人は回収がスムーズに進みます。

銀行融資に伴う保証人といえば連帯保証人、というイメージがあると思います、これも、銀行が回収しやすさを考えて連帯保証人を要求することが多いためです。

連帯保証人の責任の重さ

単純保証人との比較によって、連帯保証人の責任の重さが分かると思いますが、もう少し具体的に考えてみましょう。

債務者が返済に遅れて信用を失い、銀行が保証人からの回収に踏み切った場合、連帯保証人はそれを避けることができません。債務者に返済能力が残っていても、連帯保証人は請求に応じなければならず、差し押さえの危険もあります。

債権回収を図る時、銀行は本来の債務者の資産と連帯保証人の資産のどちらからでも回収できます。債務者に資産があっても、権利関係が複雑であったり、処分に手間がかかる資産であったりするならば、 銀行は連帯保証人の財産を優先的に差し押さえる可能性があるのです。

このほか、複数の連帯保証人で弁済する場合、特に支払い能力の高い保証人だけが請求されることがあります。銀行としては、支払い能力の低い保証人も含めて全員に請求するよりも、支払い能力の高い保証人に請求したほうが手っ取り早いからです。

この時、銀行に対して「ほかの連帯保証人にも請求してください」とお願いすることはできるでしょうが、権利として拒否することはできません。原則的には弁済に応じる必要があるのです。

弁済後、他の連帯保証人に分担額を請求しても、スムーズに支払ってもらえるとは限りません。回収のプロである銀行が請求するのではなく、回収の経験が乏しい個人が請求するのです。他の連帯保証人が支払いを渋ったために、泣き寝入りするケースも珍しくありません。

銀行融資には保証人が必要

保証人制度について、保証契約の仕組みや連帯保証人の責任の重さを知ると、近しい人に連帯保証人を依頼したくないと思う人も多いはずです。

金融庁の方針では、経営に関係のない第三者を連帯保証人にすることを禁止しています。しかし、これは「原則禁止」という方針であって、完全に禁止されているわけではありません。

したがって現在でも、銀行は一定の場合に連帯保証人を求めることができます。特に、経営が不安定な中小企業や個人事業者であれば、経営基盤の弱さを理由に連帯保証人を求めることが多いです。連帯保証人をつけなければ融資できないケースは未だに多く、第三者保証人は今後もしばらく重要な存在になりそうです。

保証人が見つからない場合

中には、近しい人がおらず、第三者保証人を依頼できない人もいます。この場合、国や地方自治体の保証制度を利用するのがおすすめです。

例えば、信用保証協会という公的機関があります。中小企業の経営者ならば、ほとんどの人が信用保証協会の保証付融資を受けた経験があると思います。信用保証協会は全ての都道府県に存在するため、多くの会社で利用可能です。信用保証協会を利用すれば、信用保証協会が保証人になるため家族や知人に第三者保証人を依頼する必要がありません。

また、信用保証協会と地方自治体が協力して資金調達を支援する「制度融資」も使いやすい制度です。制度融資を使えば信用保証協会が保証人になるほか、地方自治体から保証料や利息の補助を受けられることもあり、資金繰りへのメリットが期待できます。

何らかの理由で信用保証協会が使えない会社には、日本政策金融公庫の無担保無保証制度がおすすめです。

様々な可能性を探り、保証人の問題をクリアしてください。

まとめ

融資には保証人が必要であるものの、連帯保証人は多くの問題を抱えています。しかし、連帯保証人をつけることによって、自社の信用を高めることができ、融資してもらうきっかけになるのも事実です。

もちろん、担保や保証をつけることなく、プロパー融資を受けるに越したことはありません。そのためには、日常的な経営全般の改善が重要です。コンサルタントの支援なども積極的に活用しつつ、経営改善を進めていきましょう。