リースバックとは?
資金調達は、資産の売却によっても可能です。
もっとも、多くの資産は事業に必要であるからこそ保有しています。不要な資産は積極的に売却してオフバランス化を図るべきですが、そうでなければむやみに売却すべきではありません。銀行などから融資を受けられるうちは、資産売却はあまり考えなくても良いでしょう。
しかし、銀行融資を受けられなくなった場合には、資産売却も検討すべきです。特に、リスケジュール後の立て直し資金は、ノンバンクからの借入れや資産売却によって調達するのがおすすめです。
とはいえ、売りたくても売れない資産もあるはずです。事業に欠かせない資産を売ってしまえば事業の継続に支障をきたします。たとえ資金を調達できても、それでは意味がありません。
そのような場合にはリースバックがおすすめです。
リースバックとは、リース会社に資産を買い取ってもらい、そのままリースしてもらう資金調達方法です。この方法であれば資産売却によって資金を調達でき、なおかつ売却した資産を事業に使い続けることができます。
リースバックできる資産の例
リースバックは、様々な有形固定資産が対象となります。よく使われるのは不動産、機械、車両などです。
特に、車両を多く保有している会社がリースバックに向いています。運送会社ならばトラック、タクシー会社ならばタクシーをリースバックすることでまとまった資金を調達し、売却した車両はそのまま事業に使い続けることができます。
リースバックのスキーム
リースバックの基本的なスキームは、以下の通りです。
1.自社の資産をリース会社に売却する。売却した資産の所有権は、自社からリース会社へ移転する。
2.リース会社から自社に売却代金が支払われる。
3.自社とリース会社はリース契約を結び、売却した資産をリースする。
4.自社からリース会社へリース料を支払う。
リースバックの資金の流れは融資とそれほど変わらないため、あまり抵抗なく利用できると思います。
リースバックのメリット
上記の内容を踏まえて、リースバックのメリットを整理していきましょう。
売却した資産を手元に残せる
リースバックの最大のメリットは、資産売却によって資金調達しながらも、売却した資産を手元に残せることです。資産の所有権は自社からリース会社に移りますが、それによって事業の継続に支障をきたすことはありません。
審査がなく資金調達が容易
リースバックは資産売却の一種であり、融資とは異なります。売却する資産の査定が行われるだけで、銀行融資のような審査は不要です。売却する資産自体に問題がなければ、容易に資金調達が可能です。
もちろん、資金使途を問われることもありません。銀行融資の場合、融資した資金が事業にしっかりと投入され、利益を生み出し、返済原資になることが重要であるため資金使途を重視します。しかし、リースバックは融資ではないため資金使途も自由です。
スピーディに資金調達できる
スピーディに資金調達できることもメリットです。
銀行融資では、融資実行までに1ヶ月程度を要するのが普通です。銀行とのやり取りに問題があったり、その他の理由で審査が難航したりした場合には2ヶ月近くを要することもあります。
一方、リースバックは売却資産を査定し、見積もりとリース契約に合意すればよく、審査が難航して資金調達に時間がかかるといったことがありません。リース会社によって対応に差がありますが、早ければ数日、遅くとも2~3週間程度で資金調達できます。
同じ資産売却でも、売掛金を売却するファクタリングなどに比べて時間がかかりますが、資金調達方法の中では比較的スピーディといえるでしょう。
また、自社が独自に買い手を探す場合、理想的な買い手が見つからず、なかなか売却できない可能性があります。リースバックは、あらかじめ買い手がリース会社と決まっているため、売却までの流れもスムーズです。
独自に売却することと比べても、リースバックはスピーディに資金調達できるといえます。
資産の有効活用につながる
リースバックが、資産の有効活用に繋がることもあります。
これは、具体例で考えたほうが分かりやすいでしょう。
例えば、時価5,000万円の自社工場を担保に、3,500万円の融資を受けていたとします(銀行の不動産担保融資では、掛け目70%で評価するのが一般的)。工場にはそれ以上の担保余力がないため、新たに融資を受けることは困難となります。
また、事業に欠かせない工場であるため、売却によって資金調達することもできません。
そこで、リースバックが役立ちます。不動産のリースバックに強い会社であれば、銀行よりも高い掛け目で評価し、買い取ってくれることがあります。
もし、時価の90%で買い取ってもらうことができれば、自社工場をリース会社に4,500万円で売却して銀行に3,500万円を返済し、差し引き1,000万円が手元に残ります。売却後、工場はリースによって使い続けることができます。
このように、不動産を担保に銀行融資を受けるよりも、リースバックしたほうが多くの資金を調達できるならば、あえてリースバックを使うのもアリです。
リースバックのデメリット
ただし、リースバックにもいくつかのデメリットがあります。メリットとデメリットを慎重に比較することが大切です。
売却価格が低い
まず、リースバックでは売却価格が低くなるものと考えてください。
大きな原因は、買い手がリース会社だけであることです。自社が独自に買い手を探す場合、満足のいく価格を提示してくれる買い手が現れるのを待つこともでき、高値で売れる可能性が高まります。しかし、リースバックではリース会社に売るほかなく、乱暴な言い方をすればリース会社の言い値で売ることとなります。
もちろん、リース会社同士の競合もあるため、極端な価格で買い叩かれることは考えにくいです。複数のリース会社から見積もりをもらい、最もよい条件で買い取ってくれるリース会社を選ぶことも可能です。
しかし、リースバックの構造上、通常の売却に比べて高値は望めないものと考えておくのが無難です。
実際に、リースバックの売却額は市場価格の70~90%になることがほとんどです。
リース料が負担になる
売却した資産をリースするにあたって、リース料の支払いが生じます。資産の所有権が自社にあったときには発生していなかった費用が、リースバックしたことで新たに発生するため、資金繰りへの影響をしっかりと計算しておくことが大切です。
しかし一方で、リースバックにはコスト削減効果もあります。売却した資産の所有権がリース会社に移転するため、資産の管理コストもすべてリース会社の負担となるのです。例えば、不動産をリースバックした場合、不動産の維持管理費や固定資産税などの負担がなくなります。
したがって、リースバックによる資金繰りへの影響を正確に計るには、リース料による負担の増加と、コスト削減による負担の軽減をトータルで考えることを意識してください。
まとめ
本稿では、リースバックについて解説しました。基本的な仕組みやメリット・デメリットを知ることで、リースバックの魅力や、自社で活用する可能性についても考えられると思います。
本稿でも触れた通り、銀行融資を受けられるならばリースバックは必要ないことが多いです。ただし例外的に、不動産担保融資よりも不動産のリースバックのほうが有利になるケースもあります。
この判断は簡単ではないため、リースバックを検討する際にはコンサルタントなど専門家に相談するのがおすすめです。資金調達のプロからサポートを受けることにより、リースバックを利用するにせよ、しないにせよ、最も良い形で資金調達ができるはずです。